第4話初日
入学式では校長の
初めて見る英雄を前に新入生は感動を隠せない様子だった。
その後、生徒会長である
「皆さんを担任する事になった
休憩に入り自由に行動する生徒達の中、守は隣に座っているキャロルに話しかける。
「おい、まだ謝る気になんねぇのか」
「・・・」
「何時まで無視すんだよ、つーか何でお前と同じクラスなんだよ」
「・・・」
キャロルはまるで空気とでも言わんばかりに無視を続ける。
「もういいって・・・守君」
「お前が良くても俺の気が済まねぇんだよ」
「姫様に近づくなと言っているだろう」
キャロルの横に立っている剣が、守をけん制する。
ガタッ
キャロルは立ち上がり歩き出す。
「いきますよ剣」
「はっ」
剣もキャロルに追従する。
「おい何処へ行くんだよ!」
「守君・・・・次の授業はグラウンドで階級振り分け試験だから・・・私たちも行かないと」
「え? ああそうだったっけ」
「もうっ」
守は千里と一緒に教室を出る。
グラウンドに整列した1年を前に一人の女性の先生が歩み出る。
「優香姉」
守はぼそりと呟く。
「守君、黒田先生と知り合いなの?」
隣に立っていた千里が話しかける。
「ああ、優香姉は俺の姉ちゃんなんだ。」
「え!? それじゃあ守君は・・・あの京都大災厄の英雄黒田さんのお孫さんなの!?」
千里は驚いたのか、少し声が大きくなる。
「まぁ・・・一応」
守は少し浮かない顔をしている。
「では皆さん、始めまして黒田 優香と言います。今日の振り分け試験を担当致しますのでよろしくお願い致します」
そう言って優香は頭を下げた。
生徒は英雄黒田の孫の登場に少しざわめく。
「黒田先生って綺麗よね~」
「それであの黒田の孫だなんてずるいよね」
生徒同士ぼそぼそ話す。
「でも、世間じゃ『黒田の出来損ない』って言われてるんだろ?」
「あー・・・世界技術交換大会の時、期待されたけどボロ負けしてたもんなぁ」
「あの容姿でちやほやされてるけど、たいした事無いって話だぜ」
それを聞いた守は、咄嗟に相手の胸倉を掴んだ。
「おいお前! 優香姉の悪口を言うんじゃねぇ! 優香姉の事何も知らねぇお前らが好き勝手言ってんじゃねぇよ!」
「な・・・なんだよお前」
「ちょっと守君やめなよ・・・」
千里が止めに入るが止めに入る。
周りがざわめき守に注目が集まる。
「あんのバカ・・・」
遠くで見ていたキャロルが頭を抱えている。
「毎日毎日夜遅くまでーーー」
そこまで言いかけた瞬間、守を囲むように透明なガラスのような壁が出現する。
「優香姉! 邪魔すんなよ!」
「そこ、騒がないで下さい。あと黒田先生と呼んで下さいね」
にっこり微笑む優香。
「おい、見たかよ・・・あれがかつて日本の盾と言われた 黒田 光の得意としたシールドだろ」
ギャーギャー騒ぐ守を無視して優香は説明に入る。
「毎年恒例の振り分け試験の内容は4つです」
単純な力や魔力を測る【威力測定】
スピードの速さを測る【速度測定】
戦略能力を【知力測定】
防御能力を測る【耐久測定】
「この4つを総合評価し1年生等級の特A級~E級ランク分けをし、それに応じてチーム編成を行います。特に1年生ランクの特A級は軍曹階級になり同じ一年生でも上官扱いになります。ではみなさんにはコアレプリカを配布しますね」
そう言うと周りにいた先生達が箱に入れられた丸いコアを配り始める。
レプリカコアとはドラゴンのコアを分析し、人為的に作り出した増幅装置である。
現在の技術では、本物のクラス1コアの半分程度の性能しか再現する事が出来ないが、本物のコアが犯罪抑止のため防衛省が管理しているのに対し、レプリカコアは一般に開放されており許可を受けた企業が活用している。日本はこの技術において世界トップの品質を誇っている。
と言えば聞こえはいいが、ドラゴンの殺す事では無く捕獲し保護する事に重きを置いている日本は、他国に比べコアの保持数は圧倒的に劣ってしまっており、コアの量産による総合力とクラス5コアや素材を保持している事で、かろうじて他国との均衡を保っている状態である。
「では、みなさん特A級を目指して頑張ってくださいね。では試験を開始します。まずは威力測定を行います。私がシールドを10枚出しますのでそれに向かって全力で得意とする技を放ってください。割れた枚数によって威力を算出します。・・・ではまず 大久保 キャロルさんお願いします」
そういって優香は10枚の透明な壁を出した。
呼ばれたキャロルは腰から2丁の拳銃を取り出し前に出る。
「では、測定を開始します。」
キャロルはレプリカコアを口に咥え2丁拳銃を前に構えそして・・・放つーーー
周りには爆音が響き、優香のシールドを9枚破壊し10枚目に亀裂が入る。
一瞬静かになった後1年生には歓声が沸き起こる。
「やっぱすげぇな全国5位!」
「悔しいが天才ってやつだな!」
賛辞の言葉をよそに本人は納得いかなそうな顔をしている。
「すっげぇ・・・なんだよあれ」
守は目を見開いて驚いている。
「大久保キャロルさんランクA。次、本田 太(ほんだ ふとし)君
「ドッスコーーーイ!」
気合を入れた張り手は轟音を響かせ、衝撃は10枚目を軽く破壊しグラウンドに大きな穴を開けた。
「本田 太君 特A」
再び1年に歓声が起きる。
「ッチ」
それを見たキャロルは悔しがるように小さく舌打ちをした。
「ここの生徒ってこんな化け物ばっかりなのか?」
守は横に立っている千里に質問する。
「うーん・・・あの人たちは特別凄い人だけど・・・。大体平均で5枚位は割れると思うよ?」
「千里も出来るのか?」
「割れるとは思うけど・・・私は・・・あはは・・・」
そう言って千里はばつの悪そうに笑った。
「次、
「うおおおお!」
ガンッ
「痛ってええええ!」
盾は1枚も割れず手を痛めたらしい。
「相良 大地君 E級」
周りに笑いが起きる
「ああいうのも・・・いるんだな」
守は少しほっとした。
「では次 円城寺 千里さん」
「はっはいっ!」
千里はあわてて前に出る。
「頑張って来いよ! 千里!」
守は手を振って送り出す。
千里は盾に向かって両手を前に出し集中する。どんどん上昇する魔力・・・
それを見たキャロルは驚きを隠せない。
「圧倒的潜在魔力量・・・まさかあんな奴が!? でも全くコントロール出来てない! あれじゃ危ない、暴発するわ!」
千里が爆発するより先に優香の盾が球状に千里を包み込む。爆発は盾内部にのみに納まり、事なきを得るが、盾に激しい亀裂が入っていた。
「大丈夫か千里!?」
駆け寄る守。盾が解除されススで真っ黒な千里が倒れこむ。
「守君・・・? えへへ 私魔力制御が下手でいつもこうなっちゃうの。心配かけてごめんね」
「円城寺 千里さんクラスE級。説明したように自分の技の反動などでダメージが出た場合は失敗とみなします」
(あの子を包み込んださっきの盾・・・もしものために試験の盾15枚分の硬さで張ったんだけど、まさかヒビが入るなんて思わなかったわ)
優香は驚きを抑えつつ試験を続ける。
「次ーーー」
続々と試験は進み試験は終了した。
ー校長室ー
「神代校長先生、これが今回の1年生の成績です」
優香は神代にデータを投影し見せる。
「個人特Aクラスは5名。中等部からの入学者のペア測定での特Aは3ペアです。」
「ふむ・・・どの子も才能に溢れておるのう、ほっほっほ。今の所、個人は
「大久保 キャロルの名前が入ってないようですが・・・? 彼女は相当に優秀だと思うのですが」
「あの子はちと問題があってのう・・・」
「問題ですか?」
「あの子は強さに貪欲すぎるのじゃ、貪欲は時に強欲になりうる。ワシはそれを危惧しておるのじゃ」
「そうですか・・・」
「ワシの杞憂であれば良いがの・・・ほっほっほ」
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