Masquerade

みずたまり

新しい日常、にて 1

 荷物が届いたのは、木曜日の夜。俺が家に帰る時を見計らうように、段ボールが玄関に置かれていた。差出人は、黒石太一。中学生の頃に一緒に遊んでいたクラスメイトだ。別々の高校に進学したこともあって、今では会うことが少なくなった。

 カバンを玄関に置いて、段ボール箱を抱えて家の中へ。マスクを外し、洗面所で手洗いうがいのルーチンをこなしたところで、おかえりという母の声がした。ただいまと生返事をして、顔も合わせず自室に引き篭もった。

 最近、黒石からの連絡は何もない。首をひねりながら開封すると、封筒と、透明なビニールに包まれた黒い服が一着入っていた。

「なんだこれ……コスプレ衣装か?」

 一見するとスーツのようだったが、ボタンや装飾がキラキラと輝き、日常使いのものではなさそうだ。何かのパーティで着るようなものなのかもしれない。

 一旦服を置き、封筒を開ける。指を入れるとそこには手紙が一枚。

『特別な会に呼ばれてるんだけど、白川が行けなくなっちゃったから、代わりに青山が来てくれん? そのドレスはやるからさ。多分サイズは合うはずだけど、合わなくても持ってきてくれよな。場所はチケットに書いてあるから、よろしく!!』

 書いてある内容にしては綺麗な字で書かれている手紙を何度か読み返して、俺はため息をついた。

 昔から黒石のヤツはそうだった。こちらの事情を鑑みることなく、勢いで遊びに誘っては人を振り回す。

 よくよく封筒の中を見ると、確かにチケットが入っていた。そこに書かれていたのは、地図と日時――なんと明日の19時から――と二次元バーコードだけ。

 「ドレスかぁ」

 そしてイベント名は『仮面舞踏会』と。多分、コスプレパーティーみたいなものが開かれるんだろう。最近、部活で忙しくてアニメを見られてないから知らないだけで、この衣装も誰かのものなのかもしれない。

 会場は駅近の大きなビルの地下。帰宅途中に下車をすれば寄れるようだ。幸い、明日の夜は何も予定がない。昔のよしみで行くことにしよう。

 そうやっていつも俺は断りもしないから、いいように黒石に誘われるのかもしれないけれど。

「にしても突然過ぎんだよなぁ」

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