第15話 テレパシー
「う、ううん・・・・・・」俺は体に少し痛みを感じながら、ゆっくりと目を開いた。目の前には大きな二つの物体が飛び込んでくる。さらにその上には直美の顔があった。
「あ、コウタロウ君、気がついたんだ」直美は嬉しそうに言った。どうやら俺は直美の膝枕で眠っていたようだ。
「あ、ご、御免! 俺」飛び上がるように俺は起き上がった。
「体に異常はなさそう?」詩織さんが少し心配そうに声をかけてくれた。
「はい、特に・・・・・・」自分の体に触れて女の体のままであることを再確認した。
「コウお姉ちゃん! 今晩もいっしょだね!」愛美ちゃんは能天気にはしゃぎながら、コウの体に飛びついた。
「い、愛美ちゃん、ちょっと?!」直美のほうを見ると、少し怒っているように見えた。
「愛美、離れなさい!」直美は俺と愛美ちゃんの体を引き離した。
「わー、直美お姉ちゃんはまた焼きもち焼いて! さっきまでずっとコウお姉ちゃんとくっついていたくせに!」愛美はプクーっと頬を膨らませた。
「とりあえず、家に帰りましょう」詩織さんはドタバタ劇を終了させるように呟く。俺達はその迫力に言葉無く頷いた。
「あれ、総持寺さん、勅使河原は一緒じゃないの?」聞きなれた声、北島が後方から歩いてきた。
「あ、幸太郎君は・・・・・・先に帰ったかな」直美は誤魔化すように言いながら俺の顔を見た。 俺は女の姿のままであった。
「あ、そ、その人は?!」北島は手に持っていた鞄を落とした。どうやら女の俺の姿を見て驚いたようだ。まさか、気づかれたのではと俺は驚いた。
「この人は私のお友達で・・・・・・・」直美の言葉を最後まで聞かずに北島は言葉を発した。
「ぼ、僕は北島と申します、結婚を前提にお付き合いしてください! ぐえっ!」俺は勢いよく北島の腹を蹴った。そのまま、家の塀に激突した。
「こ、この変態が!」俺は両手で胸の辺りを覆った。心なしか動作が女性っぽくなっているような気がした。
「あらそうかしら、至って正常だと思うけど。いいじゃない男の子に告白されて」詩織さんは少し笑いながら呟いた。
『勅使河原君』頭の中に声が響く。
『その声は・・・・・・・神戸か?』俺はテレパシーで返答する。
『他の皆に気づかれないように聞いて、今晩一時過ぎに大島神社の境内まで来てもらえるかしら・・・・・・少し話しがしたいの・・・・・・・』
『一体、なんの話だ?』
『それは・・・・・・・今晩、話すわ』そこで、テレパシーは途絶えた。
「どうかしたの?」直美が不思議そうな顔をして聞いてきた。
「いや、別に・・・・・・・考え事をしていただけだ」誤魔化すように両手で頭を抱えて口笛を吹いた。 その様子を詩織さんは静かな目で見つめていた。
塀にもたれたまま北島はグッタリしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます