第52話 未来っ子

 ツバサは自分自身で空間を創り出し、そして、それで遊んだ。


空間の壁にぶつかったり、空間の壁を突き破ったり、はしごを出して、空間と空間を行き来したり、空間と空間をつないで、物を投げたり、ジャンプしたりして、とてつもなく奇天烈な遊戯を楽しんだ。


「おお、何かこれ、めっちゃ楽しい」


ツバサはノリノリだった。


「うぉぉぉ、漫画みてぇだ!」


タイガを筆頭とするヤジウマ達はよりいっそう興奮した。


「時間軸に変化が生じています。あっ、新たな時間軸が発生しました」


夢魔(ムーマ)の構成員達は驚きのあまり、コンピューターが放つ電磁波を遮断するメガネをすかさず外した。


夢魔(ムーマ)の構成員達は目をこすりながら、モニターをジッと見た。


夢魔(ムーマ)はよりいっそう激しく興奮した。


それは生きてきた中で一度も味わった事のない興奮だった。


夢魔(ムーマ)の心の中でとてつもなく激しい興奮が吹き荒れ、そして、言葉では言い表せないほど濁った嫉妬がうごめいていた。


夢魔(ムーマ)は生きてきた中で味わった耐え難い屈辱を再び味わう事になった。


夢魔(ムーマ)は自分自身の感情を制御できず、自分自身の感情に対して、動揺してしまった、自分自身の感情に翻弄されてしまった、そのことがとても恥ずかしかった。


「これが、学びか!?これが学びというものか」


夢魔(ムーマ)は生命に秘められている力を実感した。


こうして、実験は終わった。



「では、約束通り、現実の世界に帰そう。1時間したら現実の世界に帰す。この時をせいぜい楽しめ」


「ただの野郎系女子だと思ってたのになんかすげぇな」


「うちって今のことにもあまり関心がないし、かといってそんなに昔風でもない。だけど未来にはすごく興味があるから未来っ子かなって」


「まあ、俺も未来っ子かもなぁ」


ツバサは立体映像に触れる、ロボットが雑用を行ったり、機械仕掛けの壁からアームが出て、運搬作業を行ったり、機械仕掛けのパネルに触れるだけで何でもできる、分子の運動を制御することで風呂場で湯気が立たないようにするといったものすごく画期的な技術を友達の家で目の当たりにしたことを話した。


「なんか最近、テクノロジーがめちゃくちゃすごいね」


「これから先、どうなってくのかな。なんかものすごく楽しみな感じもするけど、でもそういう技術が悪用されたらかなりやばそうだし」


「俺らで良い未来を創っていこうぜ」


「うん」


「そうだね」



 みんなで思い出話をしたりして盛り上がった。


特にタイガ、タケシ、ツバサの3人は最高に盛り上がった。


3人は走り回って、ゲラゲラと笑い合った。


「ごめん。ちょっと向こうに行ってくる。すぐ戻ってくるよ」


「おう、分かった」


ヒロは気になって、3人の後を追いかけようとした。


そんなヒロをショウは無言で止めた。


ヒロは察した。


「ごめん、静かに見守るよ」


幼稚園時代の思い出を和気あいあいと語り合った。


めちゃくちゃ盛り上がった。


砂遊びしてた時にネチャネチャしたものに触れ、それはなんだろうと不思議に思いつつ、それで遊び、飽きたので砂から手を離すと、どこからか異臭がした、異臭をたどっていくと、砂遊びをした手から臭ってきたことに気が付いた、そして、それは排泄物であることに気付き、大騒ぎした思い出、家の庭で裸になって、ビニールプールで遊んでいると、スイカ食べるー?先に着替えた人から食べてねーと声がしたら、急いでタオルで体をふいた、すると、リトルツバサはすかさず、パンツだけはいて、もーらい!と言って、先にスイカを食べ、母親はそれを呆れながら見ていたという愉快な思い出をタイガはとても興味津々に聞いていた。


ツバサは家族3人でキャンプに行った時の夜、草むらに放尿した、恥ずかしいようなほほえましいような思い出も話した。


ツバサは回想に入った。


夜、リトルツバサはおしっこで起きた。


ところが周りにはトイレがなかった。


リトルツバサはトイレ以外の場所で用を足すことができなかった。


リトルツバサは野原で用を足すしかないと思った。


しかし、リトルツバサはそのような行為は下劣で野蛮で人間にはとてもできないと考えていた。


このままでは大惨事を迎えてしまう。


テントに戻るという選択肢も頭に思い浮かんだ。


でも、このままテントに戻り、寝てしまうと人生で味わったことのない恥辱、屈辱を目の当たりにしてしまうとリトルツバサは考え、決心した。


リトルツバサはお腹に力を入れた。


すると、自分自身を縛り付けていたものが徐々に緩んでいった。


リトルツバサはとてつもない恥ずかしさを覚えたが、それと同時に体全体でとてつもない解放感を感じた。


リトルツバサは何とも言えない心地よさを実感した。


体から徐々に縛り付けていたものが緩み、自分自身を苦しめていたものが徐々に体から出ていく解放感や爽快感、気持ちよさ、心地よさに自分自身の身をゆだねた。


ツバサは回想から戻った。


3人で大笑いした。


「俺もキャンプ場で立小便したぜ」


「おぉ、奇遇じゃん」



 突然、タケシが真剣な表情になった。


「ツバサ、大事な話がある」


「どうしたの?」


「向こうで話そう」


「おい、タケシ。大事な話って何だよ?」


「実はさ、ツバサに告ろうと思って」


タケシはツバサには聞こえないように言った。


すると、タイガの表情が急に変わった。


「ごめん、俺とツバサはもう付き合ってるんだ」


タイガはとても申し訳なさそうに言った。


タケシはがっかりした。


「どうしたの?」


タイガは全てを話した。


「本当にごめん」


ツバサもとても申し訳なさそうに言った。


「おめでとう!良かったじゃん」


タケシはとても明るい笑顔で言った。


「あ、ありがとう。た、タケシは良いやつなのに、ま、マジでごめん」


「確かに振られちゃったのはとても残念だったけど、でも、2人のことを全力で心から応援する!」


タケシは力強く言った。


2人は思いっきり、タケシを抱きしめた。


3人の心は嬉しさに満ち溢れていた。



「でも、次もまた会えるから大丈夫だよ。気を落とさないで」


「次っていったら?」


タケシは不思議そうに聞いた。


「なんか、めっちゃ気になる」


タイガも興味津々だった。


「生命はもともと、化学反応でできてるでしょ?」


「うん」


「だから、原子、分子、水や空気も人間には分からないだけで何かを訴えていると思うんだ。それに電子が原子核の周りを周っているのは何かに似ていると思わない?」


タケシは一瞬、きょとんとした。


「何かって、あっ、もしかして、地球が太陽の周りを周ってる的な」


「そう!その通り」


ツバサは張り切っていた。


そんな、ツバサにタイガとタケシは引き込まれていった。


「なんか、めっちゃすげぇな!」


「この宇宙も無数の生命が集まってできた1つの生命だと思う。だから、うちらは死ぬことなく、この広い宇宙の中で姿、形を変えて生き続ける。だから、次も絶対に会える」


「次も会おうね。次、会ったら、もっと強くなろうね。約束だよ」


ツバサは一瞬、きょとんとした。


ツバサはえっ、何の事?と思った。


そして、ツバサはとある出来事を思い出した。


「強くなる?えっ、もしかして、あの約束を覚えてたの?」


ツバサはとてつもなく嬉しそうな顔をした。


「あぁ、もちろん」


「超嬉しい。今、めっちゃ気分が良いから空中浮遊しよう!」


「空中浮遊ってどうやるの?」


「簡単!心を軽くすればいいんだ」


「空中浮遊!?面白れぇ、俺にも教えてくれよ」


タケシとタイガは心を落ち着かせて、空中浮遊しようとしたが、上手くいかなかった。


「え~、これどうやったらできんだよ?」


すると、ツバサは2人の手を握った。


「大丈夫!できる!」


3人は徐々に宙に浮いていった。


「わぁっ、ほんとに浮いてる」


「すげぇ」


「やったね」


ツバサは手を離した。


2人は一瞬、とてつもなく動揺したが、最高の気分になった。


「わぁっ、ほんとに自分の力で浮いてるんだ」


「あぁ、なんか夢みたいだな」


3人の周りには電脳ファンタジーが広がっていた。


ヒロとタカヒロはそんな3人を見て、ポカンとしていた。


「すげぇ」


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