第四話 シロ

 目の前でパタパタする、明らかに若い女の脚、そこの奥に揺れる純白の誘い。

 目を背けられないレベルで、眼前に展開するパンツパンツパンツの壁だ。


 負けるな、俺!

 ようやく我に返った俺は、その白い足先に手を添えて、なるべく紳士に声を掛けた。


「大丈夫か。今、助ける」


 俺の手が足裏に触れた瞬間、『ヒッ!』って縮んだし、その動きでプルプルって、ふとももとその奥の布に包まれた……いや、そうじゃない、そう言う時じゃないッ!

 今は先を急いでいる。

 ティフォも心配だ!


 誘惑に負けないよう、むしろ逆ギレの構えでいってやる!


「あ、どなたかそこにいらっしゃるのですね? すみません……よろしくお願いします……」


 ふざけるな! ふざけるなよ! なんだこの胸に来る可愛い声は!

 アーシェ婆にあやまれ!


「引き抜くぞ……」


「は、はい……ひと思いに……しちゃって下さい……」


 ふざけるな! ふざけるなよ! なんだその観念し切った、しおらしい声は!

 アーシェ婆にあやまれ!


 そんな、俺の身勝手な怒りを込めて、その白い脚を引き抜く。

 プリーツの多い白いスカート、ヘソが見えるまでめくれた白い上着、出て来たのは僧侶服のフードを被った若い女の子の姿だった。


 その……おっきいです。

 いや、違くて、胸には大事そうに、聖職者の杖をしっかりと、挟むように抱きしめている。


「わ……」


 感動も一塩、その直後、引き出された女の子の後頭部が光の渦のふちに当たった。



─── ゴスッ!!



「あうッ!」


 え? なにこの鈍い音、この光の縁は、硬い岩かなんかで出来てんの⁉


 慌てながらも反射的に、落下を始めた彼女の頭部の下に、残った腕を回した。

 全く意図せず、人生初のお姫様抱っこってヤツだ。

 ……いや、お姫様抱っこの初めては、たしかガセ爺の酔いつぶれた時に開通してたわ。

 くそっ、あのわはは魔人め!


 光の渦から全部抜けて、初めてその女性の顔を至近距離でつぶさに見た。


 整ったシンメトリーな眼、深い二重、長いまつ毛、どこまでも白くてきめ細やかな肌、綺麗に通った鼻筋。

 顔の下半分は、薄いヴェールで覆われているが、間違いない。


─── これ、ヤバイくらい美人だ!


 思わず心の中で叫んでしまったくらいだ。


「うわ、これ、ヤバイくらい美人だ!」


「う、うーん……」


 出てたよ俺の声! んで相手、寝てたよ……!

 って、さっきの後頭部強打で気絶してたのかな、スゴイ鈍い音してたし。

 思わず見惚れていたその時、彼女のまぶたが戸惑うように上がり、エメラルドグリーンの瞳がすっと開いた。


「─── ヒッ!」


 俺の姿を確認して突如、ものっすごく、彼女の背中が硬くなる。

 しょうがないよね……禍々しい髑髏どくろだし、僧侶服着てるこの子からすりゃあ、有り得ない格好だわさ。


「だ、大丈夫か?」


 引いたら負けだと、振り絞って声を出した。


「え? あ、あー、ごめんなさい! 大丈夫です!」


 なにこれ、美人って戸惑っても美人なの?

 ぼーっと見ていたら、彼女はバツが悪そうに作り笑顔を浮かべて言った。


「ここ……どこですか?」


 さあって答えたかったけど、緊張して声が出ない。

 ただ見つめていると、彼女はめくれ上がったスカートに気がついたのか慌てて押さえ、涙目で口を開いた。


「…………見ました?」


 俺はダメなヤツだ、こんな時、なんて答えれば正解なのかすら分からない!

 でもね、俺もさ、自分で言うのはなんだけど、それなりに修羅場(生死的な)は、潜ってきたんだよ。

 だから、胸を張って答えたよね。


「え? な……なにが?」


「チッ…………。そう言うなら、そう言うことにしておきます」


 今、舌打ちしたよね? 何がいけなかったの? 女って怖え……。

 心臓に悪いから聞かなかった事にして、そっと、出来るだけ、優しく地面に下ろした。


「ハァ。ここ、どこですか?」


 俺もよく知らないもん。

 取りあえず、肩をすくめて両手を広げて、彼女を見れば、深い溜息をひとつ返された。

 女の人の溜息こわい。

 今の彼女は『人間って、これだけ見事な作り笑いってできるのかぁ』って感心する程に、とって付けたような表情だ。


 ふと思い出して、慌てて懐から地図を取り出し、この村の位置を指した。

 声に出して話したかったけど、喉が詰まったように硬くなって、声が出そうにないし、上手く話せる自信もない。

 里を出てから、第一女の子なんだよ!


「うん? 失礼ですが、えらく古い地図ですね……。って、ああ良かった、バッチリ当たってましたぁ〜♪」


 急に明るくなった彼女の顔に、とんでもない安心感と、疲労感が襲う。

 この女性ヤバイ、横顔超ヤバイ、もう俺の語彙ごい力もヤバイ……超キレイだ……!


「ここは最東端の村、ペコですね?」


 落ち着いたのかな、静かな声で尋ねてきた。  

 うん、地図にはその名前なかったけど、そうだろう、美人が言うんだからそうだろう。

 俺はうなずいた。


「よかった、大当たりです!」


 それは良かったよ、お姉さん。

 自分の事のように嬉しいよ、じゃあそう言う事で、俺はティフォの元へ……


「 ─── そんな場所にいる、有り得ない格好の


 ん? ああ、有り得ない格好だよね、俺って確かに。

 いばらにガイコツに真っ黒けだしね。

 あ、もしかして、今までの彼女の硬さは、俺の格好のせい?



─── シュラアァ……



 彼女は、抱いていた聖職者の杖の持ち手部分を握ると、杖の中から細身の刀身を引き抜いた。

 「わぁ渋い、仕込み杖って奴だね!」そんな感動も吹き飛ばす圧力が押し寄せて鳥肌が立つ。

 さっきまでの柔らかさが、全くの嘘のように、研ぎ澄まされた殺気が俺を貫いた。


 彼女は仕込み杖を構え、自然に体を流して、完璧な間合いと体制を作り出して尋ねる。


「あなた、何者です? 血の匂いが濃すぎますよ? それにその禍々しく膨大な魔力……。

あなた、只者ではありませんね?」


─── 相当できるな、この人


 構えを取る足の運びですぐに分かった。

 さっきのゴロツキ連中とは、全く別次元の住人だな。


 これは、もしかしてダグ爺と並ぶ遣い手……?


 それに俺の魔力は、体に刻まれた紋様もんようと、この甲冑でほぼ完璧に隠蔽いんぺいしている。

 『禍々しく膨大な魔力』とか見抜いてきたって事は、恐らく魔術にも精通してる。


「答えてはくれないのですね? 悪い人ではなさそうなのに。残念ですがこの付近の死の臭いと、あなたに着いた血の臭いが一致し過ぎているのです。

……もう一度おたずねします、あなたは何者ですか?」


 戦いたくはないが、話している時間も惜しい。

 今、俺がしている事を説明するにも、俺とティフォの特異的な部分が絡み過ぎている。

 仕方がない、折を見て逃げ出すか。


 俺は彼女に向かい抜刀すると、両腕を広げて答えた。


─── キィィ……ィ……ン……


 妖刀が強敵の気配を感じたのか、刀身を震わせて鳴いている。

 俺の魔力を吸い上げ、膨大なエネルギーに変換して、俺の中へと循環させはじめた。

 妖刀に冷やされた空気が、白い冷気を漂わせ、刀身に結露を生じさせた。


「刃で話そうか。……強き者よ」


 あれ? これって俺、立ち位置が悪者じゃね?

 正直、やっぱりまだ緊張していて、自分で何を口走っているのかあやふやだ。

 初めて見る美人、初めて見るダグ爺レベルと思われる武人だぞ? 仕方ないよね?



─── チュイン……キュンッ!



 辛うじて受けられた。

 一撃に見えた彼女の刹那の剣閃は、ほぼ同時に四回、俺の曲刀のしのぎを掠めた。

 そのどれもが、この鎧ですら不安を感じる程の、鋭い斬撃だった。


 正面から受けたら、恐らく鎧もだろう。

 受けた時の音も、およそ剣戟けんげきの音とは思えない、初めて耳にする音……。

 しかも、実際に斬りつけてきた回数と、音の数が合わない。


─── 彼女の速度は、音の速さを軽く凌駕している


「……これを防ぎますか。ますます、この辺境に、あなたのような方がいる意味を見失います。

私の名はソフィア、S級冒険者。この地へ、辺境伯の御息女姉妹を救いに参りました」


 このタイミングで名乗るのかよ。

 ソフィアと名乗った女から、この村ごと全てを圧殺するかのような、密度の高い剣気が迫る。

 その圧力に隠れて、それと同等か、それ以上の魔力の高まりを感じた。


─── この女、剣だけでも本気を出したダグ爺レベル


 だが、本分はおそらく剣より魔術だな。

 こちらも隙は一切みせていない。

 それなのに、これだけの剣気を見せながら、その裏では巧妙に魔力の圧縮を隠している!


「どうした? 魔術を使え」


 思わず声に出ていた。

 ソフィアはその言葉に、一瞬目を見開いて驚きを見せたあと、背筋が凍りつくような笑みを浮かべた。


「見掛け倒しではないようですね。初見で見通されたのは初めてです。あなた程の遣い手は、おそらくこのマールダーでも数える程度でしょう。

……せめて、お名前をお聞かせ下さいませんか?」


 名前? いや、父さんの手紙の事もあるし、名乗っていいものか……?

 わー、今更気がついたよ! アルフォンス・ゴールマインって、名乗っていいの?


 あ、いや、父さんは実父じゃないんだから、俺の本当の苗字はゴールマインではないはず。

 『アルフォンス』は結構ある名前らしいし、名乗ってもまあ、いいのかなぁ……。


「この局面で、お応えいただけないと言う事は、こちらの疑う通りでよいのでしょうか?

……あなた、ナダリア辺境伯の御息女誘拐に関わるのリーダー、パダムとみて間違いありませんね?

黒い鎧、高い剣技、面妖な魔術の遣い手、そのどちらの技量も随一……そうだと伺っています。この辺境にそれ程の遣い手はいないはず、つまりあなた以外にあり得ない」



 ─── は?



 ああ、今ティフォがドツき回してるであろう、あの盗賊団の団長って、パダムって言うのか。

 つまり、俺は今、そのパダムだとこのおねーさんに思われていると。

 違うんだけどさ。


 でも、この人の本気、ちょっと見てみたいんだよなぁ。

 違うと言っても、信用しないだろうし。


「だとしたら、どうする?」


「その首、いただきに参上しました」


 何故か残念そうな顔をして、ソフィアは剣の構えを変えた。

 鷹揚おうような構えに見えて、全く無駄のない構え。

 少なくともダグ爺と同等、いや、それ以上の剣士である事は確定した。


「そうか……。全力で来い!」


─── チュン! チュイン、キュン、ピュウン……!


 一合目に聞いた、ソフィアの甲高かんだかい斬撃音が、絶え間なくさえずる。

 その清涼感のある音とは裏腹に、女性が振る細身の剣とは到底思えない重さが、受け流す俺の剣筋のパターンを限定させた。

 俺の動きを制御して、誘い込んでる。

 この重さは膂力りょりょくだけじゃない、こっちのバランスとか、俺のさばく曲刀のラインを効果的に崩しに来てる剣技の高さだろう。


 縦横無尽の剣戟けんげきで、回り込むように展開しつつ、俺の動作を先回りしている。

 だが、その瞬間、猛烈な殺気が突き抜け、ソフィアの一際鋭い一撃が襲いかかった。

 

 軽く手足を刎ね飛ばすであろうその一撃を、闘気で強化した籠手こてで流し、正面ではなく俺のへと剣を振り抜いた。


─── ガキィ……ンッ‼︎


 重苦しい音と、痛烈な手応えが突き抜けた。

 おっかねえ、前後ほぼ同時に斬りつけて来やがった!

 殺気を読めなかったら、前からの一撃を止めた直後に、背中から両断されていただろう。

 背後からの一撃も、とうてい女性が……いや、並の剣士では出せる重さなんかじゃない。


 その衝撃をいなし切るより先に、今度は俺の死角の斜め上方から、鋭い魔力の圧縮が襲いかかる。



─── カカカカカカカカ……



 無感情に一定間隔で響き渡る金属音。

 視界の先には、掌を突き出したソフィアの姿。


 全く魔力の変換も、術式も見えなかったと言うのに、これは何だ⁉︎

 不可視の微細な刃が、膨大な量で格子状に俺の身体を斬りつける。


 常時張られている俺の防御結界が、瞬時に呆気なく吹き飛ぶ。

 魔術で強化した鎧の肌を、網の目のように刻みつける、細かくて断続的な音が一定のリズムで響いていた。

 これを剣でいなすのは不可能、すぐさま魔術で鎧の強度を上げて耐える。


 彼女の技の効果範囲にある地面、建物の壁面が、俺のシルエットを残して網の目状に刻みつけられた。

 切り刻まれた地面の土が細かい土煙りをあげ、落ちていた石は飛び跳ねる事無く、さいの目に裁断されるのが見える。

 無感情に恐ろしい速度で繰り返される斬撃に、鎧強化へと回す魔力が猛烈な速度で吸い取られ、薄れる意識の中必死に歯を食いしばって耐え抜く。


─── そうしてようやく、凄絶な斬撃の暴風が止まった


 耐え抜いて安心したのも束の間、その斬撃の痕跡に冷たい汗が流れる。

 ガセ爺の悪ふざけのような超強化魔鋼鎧にまで、薄く細い網目のような傷が彫り込まれていた。


 しかし、驚いたのはこちらだけではないようだ。


「…………ッ⁉︎」


 ソフィアの顔に驚愕の色が浮かんでいる。

 今ので決まると思っていたのだろう、確かに並みの剣士であったら、ほぼ同時に前後を襲う剣だけでも即死だったはずだろう。

 その超絶な剣技すら、ただの目くらましに使い、息を吐くように殺傷力の高い今の魔術を放った。

 彼女がこれで仕留められなかった者はなかった、そう自分で信じていたとしても、思い上がりでも何でもない絶技だ。


 だが、こちらにはアーシェ婆譲りの魔術の知識と、ダグ爺譲りの闘うカンがある。

 もっと言えば、ガセ爺の武器の知識、セラ婆の学問から物理的な知識、シモンからは人の心理と、ハンサムの心構えをもらってる!

 戦闘技術をはじめ、全ては専門性とそれを囲む総合力だ!


 ……しかし、驚愕しているのは、俺も同じ事。

 正直、受ける事しか出来なかった。


 ソフィアの総合力も高い、アドバンテージが無いに等しい……つまり、彼女はとんでもなく強い!

 鎧の傷はすでに自動修復されたが、細い糸のような斬撃でこれだ、収束した点で攻められたらどうなるか分からない。


 不味い、これ勝てないかもしれないな。

 恐らく、彼女にはまだまだ引き出しがある。

 すでにソフィアからは動揺が消え、また静かに構えをとった。


 でも、諦める段階じゃない。

 俺の引き出しも、フルに活用するとしますか!


「では、こちらも本気を出させ……」


─── ヒュボッ!


「うおッ⁉︎」


 突如、上空から何かが落ちてきた。

 俺とソフィアの間の地面が、もうもうと土煙を上げている。


 彼女の表情を見る限り、これは全く意図していない、第三者の仕業のようだ。

 流石のソフィアもこの唐突な出来事に、殺気が抜けていた。


「これは……?」


 土埃がおさまった地面には、文字が刻まれていた。



─── 『だんちょーとらえた、エリゼ無事、オニイチャ求ム』



 ティフォからのメッセージだ!

 俺が行くより先に解決したらしい。


 あれ? 団長って強いんじゃないの?

 いや、いくら強くてもティフォには敵わないだろうけども。

 ホント、うちのは何でもできるスゴイ子だ!


 呆然とその文字を読んでいるソフィアは、正に今、隙だらけだった。

 逃げるなら、絶好のチャンス!


「……ここまでだ。また会おう」


 俺は飛翔魔術を発動して、音よりも速く、ティフォの元へと飛び出した。




 ※ ※ ※




「あ! オニイチャ、こっちこっち!」


 クレーターができまくってる地面の向こうで、ティフォが手を振っている。

 かなりの数の樹が巻き込まれたのだろう、辺りには、削りたての木クズみたいな匂いが漂っていた。

 うーん、何があったんだろうね、これは相当オイタしちゃったのかなは。


「おつかれ、ティフォ。遅れてごめんな。大丈夫か? ケガとかないか?」


「んーん。ごたいまんぞく、びんびん」


 なんか、ティフォは俺が心配すると、妙に嬉しそうな顔をする。

 やっぱり、育った環境のせいなのかな。


「オニイチャこそ、だいじょぶ? なんかあった?」


「いや、すまん。村人達を回復したり、蘇生して、後は変な女がね……」


「変なのって、その?」


「へ? …………ヒィッ!」


 俺のすぐ隣には、僧服のフードを目深に被ったソフィアが、いつの間にやら立っていた。


「い、いつの間に! どこから涌いて来た!?」


「ついてきただけですよ? 人をバケモノみたいに言わないでください」


 ソフィアも飛翔魔術を使える? それもあの速度について来ただって⁉︎

 ちょっと魔術には自信があったんだけどなぁ、里から降りてすぐにこんな人と会うなんて、実は俺大した事ないんだなぁ……。


「ま、まあとにかく! そこに転がってるのが団長で、そこにいるのがエリゼ……さん、でいいんだな?」


「おーらい」


 簀巻すまきにされた団長は、やせ細った総白髪の弱々しい姿だった。

 これ、元からじゃないな、魔力が極端に微弱だし、ティフォに吸われたか。

 脇には彼の物だろう、キクラゲみたいになった黒い鎧らしき残骸と、呪術の印が刻まれたサーベルが落ちている。

 うん、強盗団団長のパダム本人だな。


 それとは別に、長い金髪を後ろで三つ編みにした、そばかすのある少女が、怯えきった様子で座り込んでいる。

 だいぶ泥で汚れてはいるものの、質のいい服なのは間違いない。


 と、ソフィアが少し低いトーンで口を開いた。


「あ、あの……。先程のメッセージと、今の状態から察するに……。あなた達二人は、この誘拐の関係者ではなく、むしろ助けに回っていたと言う事で間違いないでしょうか?」


「ああ」


「ッ! さ、先程は! そ、その、わたくしの勘違いで……大変失礼な事を! も、もも、申し訳ありませんでした‼︎」


 顔を真っ赤にして震えながら、ソフィアが深く頭を下げた。

 まあ、しょうがないよね、こっちも説明出来なかったんだし。

 こんなに必死に謝ってくれてるんだから、怒る理由がない。


「気にするな。こちらの説明不足もあった」


「そ、それでも……」


 俺は手の平をソフィアに向けて、謝罪を制して首を振った。

 お互い悪意無かったんだし、怒る事じゃないからね。


「ご、ご厚情……感謝いたします……。

と、ところで、お二人はギルド関係の方なのでしょうか?」


 ギルド? ああ、シモンくんが言ってたな。

 冒険者を集めて、何でも屋から、要人の警護までこなす団体が世界中にあるって。


「いや、俺たちはギルドとは関係ない。ただの通りすがりだ」


「うん、ただの旅人、ウィリーに頼まれただけ」


 ティフォが口裏を合わせて、当たり障りのない事実を述べた。


「ウィリー? ああ、エリゼ様の護衛の方ですね? その彼に直接依頼をされたというわけですか」


 と、ソフィアが言い掛けた時、座り込んでいたエリゼが立ち上がり、ティフォにすがり付いた。


「ウィリーは、ウィリーは無事なのですか⁉︎ お願い! ウィリーに会わせてッ!」


 ティフォが俺を見る。

 表情は普段のジト目だが、かなり困っているのが俺には判った。

 この感じ、彼女にとってウィリーは相当に大事な存在だったのだろう……。


 俺とティフォの空気を読んで、何かを悟ったのか、エリゼがへたり込み、肩を震わせている。


「ウィリー……どうして……?」


 何をどう、声を掛ければいいのか、分からない。

 いや、この場合はそっとしておく方が良いのかも知れないな。

 流石は貴族の令嬢か、声と肩を震わせて、目元を紅く染めていても、涙を堪えているようだった。


「教えて……下さい。ウィリーはどんな最期を……?」


「……ついて来い」


 俺はエリゼを促して、山道を村の方へ歩き出した。

 本当は疲れて怯えて、ショックを受けてるであろう彼女を歩かせたくはなかったけどな。

 転位魔術とか飛翔魔術とかは、外界じゃ一般的じゃないって言うし、おんぶしようかと聞いたら即お断りされたしね。


 貴族の娘としての毅然きぜんとした態度なのか、それとも自分の足で歩く事で、気持ちを保ちたかったのか。

 彼女はうつむいたまま、黙々と歩いてついて来た。


─── 山道と村の入口の辺りに、ウィリーは横たわっている


 ソフィアもついて来たが、俺たち四人は一言も喋る事なく、ただ無言で山道を下りた。

 ちなみに団長は簀巻きのまま、ミノムシみたいにティフォに引き摺られて運ばれている。

 ……ほんと、ティフォに何されたんだろうかって、聞く雰囲気でもないから我慢するしかなかった。




 ※ ※ ※




「ウ……ウィリー……。ウィリィ─── ッ!」


 エリゼが叫び、ウィリーの首に縋り付いた。

 流石に堪え切れなくなった涙は、せきを切ったように溢れ、物言わぬウィリーの頰を濡らす。


 俺たちの帰還に気がついた村人達は、俺たちの周辺に横たわる遺体を道の脇へと並べ、他にも遺体がないか周囲を調べ始めていた。

 こういう自然の多い場所は、霊体の魔物も多い。

 放置された遺体が、アンデッド化すると厄介だと村人達は分かっているのだろう。

 ウィリーとそれに縋るエリゼを残して、手早く処置を進めている。


「……うぅっ、お願い……ウィリー、目を開けてぇ! ずっと守るって、一緒だって、言ったじゃない!」


 余程信頼していたのか、それとも護衛以上の関係だったのか……いや、無粋な詮索だ。

 エリゼの悲痛な声が、胸に突き刺さる中、俺はただそこに立っているしか出来なかった。




 ※ 




 エリゼとウィリーの対面からしばらく経って、一度村に戻った俺達はエリゼを休ませて、村人達と今後の話をした。

 その中で、ようやく古い地図に載っていなかった、この周辺の地理や情勢も知る事が出来た。


─── マールダー最南東に位置する地方、タッセル領ナルディラ


 通称『辺境』と呼ばれる中でもほぼ最東端に近い村ペコ、それが俺達の今いる地名だった。


 タッセル領とは、マールダーの南東に位置する乾燥地帯の国で、かつてはこの辺一帯を束ねた強国。

 だが、世界の経済や軍事力のパワーバランスの変化から、近年段階的に領土を縮小している国だそうだ。

 ここ辺境は、そのタッセルの領土の端っこにあり、経済的な脆弱さから独立も遅れている地域。

 首長はタッセルの有力貴族が、公爵として治めている。


 ……この誘拐事件の首謀者、ハンス・アーウィン公爵がそれだ。

 そして、ペコの村を含む森林地帯ナダリアを治めているのが、通称『辺境伯』フラン・ペトロ・ナダリア伯爵、拐われたモニカの父親だ。


 実際の所、土地の詳細は村人が詳しかったのはもちろんだが、地図となるとソフィアの持っている物の方が正確だった。

 辺境は他との交易が少なく、ペコの村のような末端の人々は、地図が必要な事がほとんどないために貴重品だったらしい。

 

「おいっ! こっちだ! いたぞ!」


 周囲の捜索をしていた村人達に、動きがあった。

 その声を聞き、一人の女性が思い詰めた顔で、そちらへと駆け出していった。


「いやああぁぁッ! ティム! ティム! お母さんよ……? お願い、目を開けてッ! 返事をしてッ‼︎」


 最初の襲撃に逃げ遅れ、巻き込まれたのだろうか、背中に一太刀浴びせられた幼い少年の亡骸を、その母親であろう女性が抱きかかえていた。


 背中の傷はウィリーとは違い、普通の刃物で切られたものだった。

 母親の慟哭どうこくに、戸惑うように飛ぶ一つの幼い魂が、薄っすらと見えた。



─── これなら、間に合うか?



「その子をこちらに……」


 俺が母親の近くに立つと、怯えた顔をして、子供の亡骸をかばうように抱きしめた。


「心配いらない。今なら助けられるかも知れない」


 そう言うと、困惑したような顔をして、何度か子供の顔と俺を見比べ、うなずいた。

 もう事切れているのを、彼女も分かっているのだろう、夢に浮かされるような面持ちだ。


 俺は少年の遺体を寝かせ、手を添えると、魔術へと意識を傾けた。


「─── 【蘇生アネィブ】」


 青白い光と黒い魔法陣があらわれ、すぐに少年の表情に邪悪な気配がさす。


「─── 【属性反転グルスドラー】」


 旅立つ前の一年間の修行で得た、蘇生グール化問題の解決策だ。

 負に傾き切って蘇生した魂の属性を、文字通り正の魂へと反転させる。


 属性反転は、本来は敵の弱点を自分に有利な属性へと反転させる、なんとも卑怯な魔術だが、俺の禍々しくなってしまった魔術だとこうなる。

 正直、なんでそうなるのかは、未だに分からん。


 後は村で起きた事と同じ、聖人の如き光属性の人間へと、人格と共に変換されて蘇る。


「あ、ああ……ああ……! ティ、ティム⁉︎」


「……ただいま。お母さん」


 神々しく輝く微笑みを浮かべた息子を、母親はその背中を掻き寄せるように抱きしめ、嗚咽おえつを漏らした。

 何度も何度も息子の名前を呼ぶ母親に、ティムは柔らかな声で、何度でも応えていた。


─── ガシッ


 俺の肩に手が掛けられた。

 その震える手を振り返ると、そこには目元を真っ赤にした、エリゼの姿があった。


「今すぐ、同じ事を、ウィリーにしなさいッ‼︎」


 ……まあ、そうなるか。


「早く! 早くあの人の所に行って! 彼を生き返らせなさいッ‼︎」


「それは不可能だ」


「な……! 何ですってッ⁉︎ どうしてその様な心無い意地悪を言うのですかッ!」


「呪術だ。彼の傷は呪術でつけられ、魂の器がもう壊れている。

……出来るなら、最初からそうしていた」


 俺だって助けたいよ、大事な第一村人だったんだ……。


「嘘ッ! どうしてその平民の子が助けられて、貴族の彼を助けられないと言うのッ⁉︎」

 

「人の定めた身分など、関係な……」


「彼が、彼が貴族だからですか? 彼の事をうらやんで、ねたんでそう言ってるに決まっていますッ! 今すぐ彼を助けなさいッ! 平民の命より、貴族の命は大きく重いのです!」


 ティフォがエリゼをにらみ、近づこうとするのを、手で抑えた。


「彼が最期に残した言葉は、あなたの名前だった。あなたを助けるよう、俺に頼んだ。

それと同じように、ここの村人達を心配して、助ける事を望んでいた」


「…………何がいいたい……の……?」


「偉そうな事を言うつもりはない。ただ、彼はあなたを大切に思っているように、ここにいる平民達も大切に想っていた。

彼が愛したあなたは、彼が望んだあなたは、きっとそうじゃない」


 エリゼは自らの服の胸元を掴み、顔を伏せた。


「あなたは今……動揺していただけだ。何処かで聞いた強い言葉を、理不尽に向かって、ぶつけただけだろう?」


「………………」


「すまない、俺には彼を助けてやる事が出来ないんだ、本当に。でも、彼が望んだものは叶えてやりたい。彼の考えをしのんでみれば、学ぶ事も多いはずだ。それがあなたを助ける事になるのなら、彼も本望だろう」


「………………」


 エリゼは何も言わなかった。

 俺はティフォの肩に手をあてて、ふたりで村へと向かって歩き出した。


「だいじょぶ? オニイチャ、辛そうだよ?」


 ティフォは俺を見上げて、心配してくれた。

 でも、ティフォの方が顔色が悪い気がする。


「大丈夫だ。お前こそ、辛そうだぞ?」


「ん……」


 ティフォは立ち止まって、何かを考えているようだった。


「ごめんなティフォ。嫌な所を見せたな」


「どして? どしてオニイチャが、あやまるの?」


 ティフォの両肩に手を乗せて、顔を見る。


「俺はまだ外界をほとんど知らないけど、きっと嫌なものを見る事も多いと思う。

……ティフォにこの世界を好きになってくれとは言わないよ。でも、俺の勝手だけど……嫌いにならないで欲しいんだ」


 ティフォは驚いた顔をして、肩に乗せてる俺の手に、手を重ねた。


「ティフォね、エリゼ見てたら、前の世界のこと……ちょっと思い出したの」


 そう言って目を閉じるとうつむいた。


「人はこっちが強いってわかると、怖がったり、何でもできるって、勝手にねがったりする」


「………………」


「だから、強いあたしは、いつも一人だった。世界は、つまらなかった、さびしかった」


 すっとティフォが顔を上げ、快心の笑みで言う。


「でも、今はオニイチャがいるから、世界が好き。それに、今のオニイチャの言葉で、あたしはもっと、この世界、好きになってもいいって、そうおもったよ?」


「ティフォ……。ありがとな」


「ん。こっちこそ」


 なんか照れ臭くなって、ティフォと握手すると、その手をブンブン振った。


「あはは! オニイチャはげしー!」



「はぁ〜♪ いいですね、兄妹愛!」



 うっとりした声で、僧服の美女がうなずいてそう言った。


「ま、まだ居たのか⁉︎」


「はぅ……辛辣しんらつですね。

ええと、こちらはギルドからの依頼で動いていたんです。エリゼ様の護衛と、盗賊団の討伐後は、拐われた次女モニカ様を救い出し、犯人を拘束するために。

ご迷惑をお掛けした上、お尋ねするのは気が引けますが……モニカ様の事について、何かお分かりになりますか? おふたりの方が、先に動かれてましたので……」


 ああ、そう言う事か。

 一応、エリゼを助けたから、ウィリーからの願いは叶えたけど、完全じゃないんだよな。


「目的は同じ……か。ティフォ、何か掴めてるのか?」


「んー? ああ、モニカ? それならりょーしゅの別荘にいるよ。こっからすぐ」


 流石はティフォだ、盗賊団団長パダムから、すでに記憶を奪っていたのだろう。

 ここまで分かっていれば簡単だ。


「領主⁉︎ 犯人はハンス・アーウィン公爵ですかッ⁉︎」


「ん、そうだけど。おねーちゃん、誰?」


 ティフォのジト目がいぶかしげだ。

 そう言えば、紹介する暇も無かったな。


「ハッ! わたくしとした事が……ッ! 

初めまして、ソフィアと申します。一応、南洋国家バグナス領の冒険者ギルドに所属してます。以後、よろしくお願いします」


「あたしはティフォ、オニイチャの


 二人が挨拶すると、なんか俺もやらなきゃいけない空気になった。


「あー、俺はアルフォンスだ。アルフォンス・ゴールマイン。わけあって旅をしてる」


 ソフィアは一瞬、微かな反応を見せたが、すぐに微笑みを戻した。


「ふふ、やっと……お名前を聞けました。それにしてもさんですか、うーん……」


「俺の名が、どうかしたのか?」


「あ、いいえ! すみません、ちょっと知り合いと同じ名でしたので……」


「ん、そういえば、オニイチャとソフィア、なんかあったの? ティフォがだんちょーやっつけてるとき」


 殺されかけたんだよって言ったら、ティフォはどうするんだろうか?

 何となくソフィアを見ると、ソフィアもなんかソワソワしていた。


「えっとですね、一度は困ったわたくしを助けていただいて……うーん、言いづらいのですけど、アルフォンス様を誘拐犯と勘違いしまして……。まあ、シロだったんですけど……」



─── くあぁッ、シロ……白……シロ!



 あ、あかん、思い出してしまった!

 やっと忘れてたのに、あの衝撃的なパンチラが、脳裏に復活してぐわんぐわんする。


 アレ? 鼻の下になんか伝って……わ、コレ鼻血か⁉︎


 垂れそうになる鼻血を、反射的に手で抑えようとした時、自分がフルフェイスのガイコツ兜を被ってる事をすっかり忘れていた。


─── ガィンッ‼︎


「あ…………」


 たまにあるよね、おでこにニキビあるのに机に突っ伏してぶつけるとか、食べ物噛もうとして舌噛んじゃった時とか、思いの外痛えの。

 人の咄嗟とっさの力と言うのは、存外に強いもので、自らの裏拳で兜を強打してしまった。

 その勢いで、髑髏どくろ兜は空中に高く放り出されていた。


─── ヒュルヒュルヒュル……


 『わぁ、結構飛んだなぁ』とか上を見上げていたら、視線を感じた。

 ソフィアがジッと俺を凝視して、心なしか震えている。


 何だろうと不信に思ってる横で、放り上げられた俺の兜が、ガポンとティフォの頭にハマった。



「えッ! う、嘘ッ‼︎

─── あ、……⁉︎⁇」



 は? と、思う間も無く、ソフィアは俺にタックルをかましてきた。


 なんだぁテメェ、タックルかますたぁ、第二回戦勃発かオラァ!

 地面に俺の足跡を残しつつ、数met(1met=1m)押し込まれた俺は、タックルを崩すべく、ソフィアの背中に手を掛けた。

 そこから腕を取るか、首を取るか、格闘術のセオリーが頭をよぎる。


 が、その血生臭い俺の考えは、すぐに掻き消された ─── 。



「ああああーッ‼︎ アルくん、アルくん、アルくーんッ‼︎

会いたかったです! 会いたかったです!」



 ……ええと、何これ。

 ものっすごい勢いで、ソフィアが俺の腹の辺りに頬擦りしている。

 いや、そこ鎧だし、なんか刺々しい部分だけど大丈夫か?


「ふおおおーッ! アルくん、アルくん、アルくんだぁぁッ! ううー、こんなに大きく硬くなってー! ……ふおおおーッ‼︎」


 いや、体は大きくはあるけど、硬いのは鎧だからだよ? 大体、その言い方アブねぇからね⁉

 ああ、言わんこっちゃない、鎧の装飾に引っかかって、顔のヴェールが破れてるじゃないか。


 しかし、えっらい馴れ馴れしいなぁおい。

 助けを求めてティフォを見ると、俺の兜がガッポリハマり、メガネメガネみたいにウロウロしていた。


「いや、ちょっと、落ち着い……」


「ああ〜ッ♡ オニイチャの香り……///」


「ティフォッ! 何いってる⁉︎ 兜のにおいとか、すっげぇ恥ずかしいからやめてッ⁉︎

─── いや、その前にソフィアさん? ちょっと落ち着いてってばッ!」


「落ち着いてなんか、いられませんよ! だって、アルくんですよ⁉︎

うおっ、ふぅおおおおおおッ‼︎ アルくんアルくんアルくん……ッ‼︎」


 もうね、全く話が通じない。

 凄い勢いで顔を上げたソフィアの頭から、僧服のフードが外れて、白金の長い髪がサラサラと流れた。

 ほら、鎧に擦り付けるから、やっぱり鼻先とかちょっと擦りむいてんじゃん。

 しかし、初めてちゃんと顔が見れたけど、想像以上に美人だぞ!


 プラチナブロンドにエメラルドグリーンの瞳、白くてきめ細やかな肌…………

 んん⁉︎ ソフィア……? ソフィア!?



─── 『おおきくなったらね、およめさんにしてほしいな!』



「へ⁉︎ ソフィアって、ソフィアかッ⁉︎」


「はいッ! アルくんのソフィアちゃんですよッ‼︎ くひぃ〜ッ♡」


 一旦離れて、涙と笑顔でとろっとろになった顔を見せられた後、肉食獣のような構えから、再度タックルを喰らった。

 ソフィアは教科書通りの、美しいタックルまでの流れの中、終始満面の笑みだった。


 なんか色々、気を取られていたために、今度はがっつり吹き飛ばされた。

 景色がブレた世界の中で、俺の感覚はスローモーションだった。



─── 再会しちゃったよ、初恋の人



 嬉しいけどさ、はええよ……人里に降りた途端かよ……。

 超強化魔鋼製の鎧が、ミシミシと悲鳴を上げる勢いで、ソフィアの再会の喜びはぶつけられ続けた。

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