愛のカタチ。
あかね
究極の愛
色とりどりの花、生き生きとした緑、それからみずみずしい香り。僕の自慢の店。
この店―LETTERs―は僕にとってある意味“命”を感じさせる場所だ。
植物は何も言わない。それでも人々は彼らに魅了される。彼らの力を借りれば感謝も、憎しみも、愛だって伝えることが出来る。
――憎しみを伝えようと花を買っていく人なんてほとんど居ないけれど。
僕はそんな花が、植物が好きだ。
まるで手紙みたいだろう?
カランカラン、ベルが鳴る。
「いらっしゃい」
「こ、こんにちは」
1週間に1度、僕の店にやってくる女の子。
「今日のおすすめはガーベラだよ」
名前は分からない。年齢も。分かっているのは毎週花を買っていくことと、近所の高校に通っているだろうことくらいだ。
「ガーベラ……」
「ガーベラには希望っていう花言葉があるんだ」
僕はガーベラが好きでね、と話を続ける。
僕の話に優しく微笑む彼女は、僕の希望だ。
lLETTERsは人が絶えず来るような店ではない。
数える程度しかお客様が来ないのだって日常茶飯事だ。特に学生など滅多に来ない。
最初は珍しいなと思っただけだった。
でもいつしか。植物を見ながら微笑む彼女の姿を見る度に心が弾み出した。口角が自然と上がるのだ。
僕は彼女に会うのが楽しみになっていた。
「じゃあ今日はガーベラにします」
「ありがとう。いつも通り1輪かな?」
「はい」
部屋に飾るんです。そう、嬉しそうに言う。
「色はどうする?」
ピンクに黄色、白に赤。
「んー、店長さんの好きな色がいいです」
ちょっとした悪戯心が顔を出す。
「それは光栄だ。ところで花言葉って色によって変わるのは知ってる?」
丁寧に包みながら彼女に問う。
「バラとか有名ですよね」
「そうそう。ガーベラも色によって違うんだよ」
これはたぶん、ちょっとした好奇心。
「次にくるまでの宿題ね」
差し出したのは黄色いガーベラ。花言葉はなんでしょう。
「宿題ー!?」
思わず笑みが溢れる。
「そんなに気負わないで。クイズみたいなものだよ」
「ぜ、善処します」
「うん、楽しみにしてるね」
また会える、そのことがとても嬉しい。
入ってきた時と同じようにベルを鳴らして去っていく彼女の背を見ながら呟く。
「黄色いガーベラの花言葉は……」
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