四神戦記・天

灰音

前・ことわり

プロローグ


 天界…そこは地上よりも遥か上空に位置し、その姿は地上から望めぬ様に別空間に巨大な空間を有し、層となって存在していた。

 一番上の層には天神が住み、名を天羅てんらといった。天羅が統治する天の層には、位の高い神官、巫女等、神職に従事する者が住み、その下の層には風神・風雲ふううんが統治する風の層があり、そこに住む者の背には、等しく白い翼が当たり前の如く生えていた。

 更にその下の層には、炎神えんじんの層が広がり、陽火ようひという四神唯一の女神が統治していた。炎神の層に住む者の背には、白い翼ではなく輝く太陽のような炎の翼が生えていた。力の大きさにより、炎の翼の大きさも比例し、大・中・小様々で、一番大きな翼は炎神になる者のみが有していた。

 炎神の層の下には、龍神の層があった。そこは緑と自然に覆われた天界一豊かな層で、統治する龍神・緑水りょくすいによって清められていた。龍の層は水の層とも呼ばれ、そこに住む人々は、空気中に含まれる僅かな水分を集めて、お手玉のようにしたり、また、足場を作って高い木に飛び移ったりと、水を操ることができた。

 天界最下層、地階から這い上がってくる恐れのある邪鬼を追い払ったりと、重要な役割を果たす最下層には、天界で最も力が強く、荒々しい雷神・雷光らいこうが統治する雷の層が位置していた。雷の層は、気性が激しい、己の力を鍛え磨く者が多く、それぞれに使役する雲を持ち、それに乗って競争したり、戦ったりと、優劣を決めるのが何よりも好きな者の集まりだった。それにより、自然と争いごとが舞い込む恐れのある最下層に置かれた。

 風神・炎神・龍神・雷神をまとめて四神と呼び、その四神のまとめ役に天神がいた。

 天界は守護され、平和で流れるような日々を送っていた。

 ある出来事が、あるまではー。

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