第62話 設計上の課題

しばらくプロジェクトが進んだ折、1つの大きな課題が見つかった。

魔法制御プログラム、に関するものである。


魔道具を使った兵器は、とても複雑な作りだ。

この世界には魔力が存在し、魔導士はその力を行使して魔法を使う。

魔力を特定の物理的な入れ物にためておくことで、魔道具として使うことができる。


イメージは、元の世界の電力と似たようなものだ。

物理的にためたものはバッテリーになり、バッテリーの力でパソコンを動かしたり扇風機を回したり。


電力の代わりに魔法の力を魔道具に貯め、魔導士の魔法を再現するわけだ。

ただ、魔法というのは発動が複雑で、特定属性のエレメントを絶妙なバランスで配合、制御する必要があるらしい。


その微妙なコントロールに慣れがいるため、魔導士は魔法を訓練する。

難しい魔法はそのコントロールが難しい。

魔法に長けたものは、魔力の量もさることながら、魔力の微妙なコントロールが必要なのだ。

メグは、そのどちらも持っている。

だから、とても魔法を覚えるのも早いし、魔法も多く使える。

それが、いわゆる優秀な魔導士なのである。


その微妙なコントロールを魔道具で再現するためには、魔導士と道具使い、療法の知識が必要となる。

属性エレメント配分は魔導士しか分からない。エレメント配分を魔道具で再現することは、道具使いによる調整が必要となる。


設計フェーズにおけるもっとも大きな仕事は、この魔道具の設計である。


今回構築する兵器には具体的には次の機能がいる。

・機動力を削ぐ”アースバインド”を再現する機能

・鉄の矛を射出する機能

・矛をゾームに正確に当てるための”ロックオン”という魔法を再現する機能(これは弓矢を打つ際の補助魔法としてよく使われるものらしい)

・矛に”サンダーボルト”を再現して放つ機能


矛の射出以外は、魔道具の力を使う必要がある。


いずれも下位の魔法であり、比較的再現が簡単な魔法であることはマーテルに確認済みだ。

だが、難しいのは発動のタイミングや、発動位置なのである。

魔導士は目で見て魔法を発動する場所を自ら調整することが可能だ。

だが、魔道具には目もなければ、脳もない。

なんらかの形で、どこに魔法を発動するのかを決める必要がある。


ゾームに刺さった矛。

その標的へのサンダーボルト。

これをどう制御するのか、マーテルには思いつかなかった。

それが課題である。

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