第63話 複雑な制御

課題解決のため、臨時で会議を開いた。

マーテル、メグ、ランペルツォン、ヒロの4人での会議である。


ヒロが切り出した。


「サンダーボルトの照準を魔道具で合わせることが、なかなか難しいと

 マーテルさんから伺いました。

 何か打開案はないかと思い、皆さんを集めました」


マーテルが続いて口を開いた。


「私も魔道具作りはこれまでいろいろとやってきました。

 が、サンダーボルトを再現する場合、標的へ魔道具を向けるとか、投げつける、なんてのが一般的です。

 今回は、ゾームに刺さった矛へ魔法を放つという動作にする必要があるのですが…

 これがタイミング、発射位置が難しいのです」


ランペルツォンが尋ねた。


「具体的に、どう難しいのか、教えてもらえるか?」


「分かりやすく言えば…

 矛が射出されて、ゾームに刺されば間髪入れずにサンダーボルトで雷撃を与えなければいけません。

 アースバインドの足止めは、そこまで長持ちするものではないですから。

 タイミングを早く、かつゾームの人間部分に刺さった矛という、離れた標的へのサンダーボルト発動。

 となると、かなり魔道具の制御が複雑になるのです」


「複雑になると、マーテルでは作れないということなのか?」


「失礼ですね!

 …と言いたいところですが、実際はそうです。

 この兵器は複数の魔法を連続で放つものになります。

 魔法を連続で、タイミングを合わせて放つような魔道具は、利用シーンが限定されすぎて需要がないのです。

 ようするに、こんなに複雑な制御の魔道具、普通は誰も欲しがりません。

 だから、私にもノウハウがないのですよ。

 ただ、メグさんの力を借りれば作ることはできるかと思いますが。

 魔力の流れに熟知したメグさんなら、複雑な制御もどうすればよいか分かるでしょう?」


一同はメグの方を見た。


「…できる。

 魔道具の魔力波動に対して”ロックオン”の魔法をかけ、サンダーボルトの方向を固定させる。

 矛を”サーチ”の魔法で対象として選んでおけば、実現はできる」


マーテルははっとしたような顔で言葉を返す。


「おお、そんな方法がありましたか!

 ですが、なんとも複雑な制御ですねぇ。

 が、メグさんはその魔法制御プログラムが組めて、魔道具に封入できるということですか」


「たぶん、できる」


ここで、ランペルツォンも口を挟んだ。


「確かに、非常に複雑そうだが、上位魔法が使える魔導士なら作れなくはないな。

 これまでそんな複雑な制御プログラムを持った魔道具は見たことはないが…。

 だが、これでゾームが討伐できるのなら、良い案だろう」


「ちょっと、待ってください」


ヒロが一同を制した。


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