第43話 話しやすい雰囲気を作るべし

「まずは、議題1の”倒し方のステップをどう実現するかの意見出し”ですね。

 ”ステップ①ゾームの機動力を削ぐ”ですが、実践ではサレナさんが技を使ってゾームの足元をぬかるませていました。

 ゾームの機動力を削ぐための一般的な方法って、他には何がありますか?」


ジュドーがまず意見を言った。


「特技で言えば、サレナの使ったトラップ系の他に、戦士系の特技で地面に剣を突き刺してモンスターの足元で小爆発を起こすような技はあるな。

 ゾームを転ばせることはできるかもしれないぞ。

 ただ、誰もが使える技ってわけじゃないが…」


ジュドーは率直に意見を言ってくれる。こういう人間は会議を活発化するためにはとてもありがたい。

ヒロはそう思った。


「なるほど。

 マーテルさん、ジュドーさんの言う技は魔道具で再現できるものですか?」


ヒロはマーテルに話を振った。


「出来なくはないですが、トラップ系のほうが簡単ですねぇ。

 なにより、トラップ系の魔道具は需要がありますが、戦士の使う特技を模した魔道具は需要が少ないのです。

 魔道具は補助に使ったり、込められた魔法の力で遠隔的に攻撃できることが利点ですからね。

 直接、武器で攻撃する技を再現するのは、あまり現実的ではないですから」


このような感じで、徐々に議論が進んでいく。

みなの発言も多くなってきた。

レインも議論に参加する。


「じゃあ、比較的魔導士の中でも覚えやすいスピードダウンの魔法とかが、ゾーム足止めにはいいんじゃないですか?」


マーテルがレインを顔をかしげて見ながら返す。


「ゾームは魔法のバリアがかかっています。スピードダウンの魔法は効きませんよ。

 素人は黙っていてください」


レインが、みるみる委縮する。しょんぼりと言う感じだ。

ヒロは、すぐさま介入した。


「マーテルさん。そう言わずに。

 マーテルさんの専門知識は偉大です。

 一方で、レインさんのように素人だからこそ、出てくる意見もあるでしょう。

 レインさんも思う存分発言してもらいたいんです」


ヒロはそう言ってレインに優しく微笑んだ。

レインの緊張がゆるむ。

マーテルはしばらく逡巡した後、分かりました、と答えた。

その後、メグがポツリと言う。


「マーテルの言う通り、スピードダウンはバリアに阻まれる。

 けど、地面にツタをはって足にからめるアースバインドなら、地面への魔法なのでゾームに魔防バリアがあっても関係なく使える」


ジュドーが乗っかる。


「確かにな。

 魔法でもゾームへ直接かける魔法でなければ、使えるよな」


素人の意見でも、こんなふうに議論は活発化する材料になる。

誰も話さない、と言う状況はチームとしては機能しづらい状態なので、ヒロは誰もが話しやすい雰囲気づくりに注力している。

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