第25話 不要な人間をプロジェクトにいれるべからず

「これで、体制表は出来上がりです。

 これをもとに、初めのフェーズのスケジュールと体制表を作るんです。

 今回は、各メンバーとプロジェクトオーナーの合意が取れてから"フェーズ①ゾームの調査"のスケジュールと細かな体制を作ります。

 一挙にやると大変ですし、今日はここまでにしましょう」


「体制表にギルド長がいないが…いいのか?

 なんか、ヒロにアドバイスする人、とかそんな役割で入れなくていいのかよ?」


「ギルド長はいなくとも、このプロジェクトの目的は達成できます。

 ギルド長は役割として、何に責任を持つのかが明確ではないですし…」


ヒロはきっぱりと言った。

かつて、ヒロが元の世界で働いていたころ、プロジェクトにアドバイザーとかオブザーバーという立場でプロジェクトに参画した人々がいる。

もちろん、機能する場合もあるが、多くは役に立たなかった。


というのは、責任がない立場で、プロジェクトを批評するようなことしか言わなかったためだ。

もっとこうしたほうがいいと思うけど?

それじゃダメなんじゃない?

往々にして、実情を無視した正論を述べるだけだったり、評論家のようなことを言うだけで、メンバーのやる気をさげるだけだった。


そのため、ヒロは何の役割に責任を持つか分からない、曖昧な立場の人間はプロジェクトには不要と考えている。


「まぁ、ジューマンさんは人柄はいいが、あんなだしな」


ジュドーも、なんとなく理解したようだ。


こうして、体制表が出来上がった。


体制表を見つつ、ランペルツォンが聞いた。


「…スケジュールはどうなる?

 私は、次の満月までにこの兵器が完成できるとは、思わないのだが」


ヒロも、それは兵器開発を知らないながらも感じていた。

よほど簡単なプロジェクト出ない限り、二ヶ月弱という短期間で完遂できることなど少ない。


「ですよね…。

 実際、どのぐらい掛かりそうですか?

 ランペルツォンさんのこれまでの経験としては」


「そうだな…ゾームの調査に一ヶ月、設計に二ヶ月、構築に二ヶ月。

 そうして、ようやく実践投入と言ったところか…」


「となると、実践投入は早くとも五ヶ月後。

 つまりは六ヶ月後の満月の襲撃ですか…。

 次の満月と、その次の満月にゾームが襲ってきたとしたら、暫定対策をとっておかねばなりませんね…」


ヒロは答えた。

なんらかの問題を解決するプロジェクトである場合、目的を達成するまでに暫定対策を打つことはよくある話だ。

このプロジェクトでも、同じことが必要となる。


「ゾームの調査後に、暫定対策を決めましょう。

 ゾームのことが分からなければ、対策はとれませんし…。

 ただ、魔物への汎用的な対策があるなら、とっておきましょう。

 ランペルツォンさん、それは王国兵団でお願いできますか?」


「分かった。対応しよう」


こうして、プロジェクト目的、目的の達成条件、体制表、スケジュールの案が出来上がった。

詳細なスケジュールはまだだが、最低限プロジェクト発足に必要なものは揃った。


次は、この案を実現するための、各メンバーへの打診やギルド、商工会などの組織との交渉だ。

グレンダールの後ろ盾があれば心強いだめ、まずは明日、プロジェクト目的、達成条件、体制表を、プロジェクトオーナーであるグレンダールに提示し、承認をもらうことにした。


そこまで決まった段階で、打ち合わせは解散となった。

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