第21話 体制表をつくるべし

「で、ヒロ。

 この後はどうするんだ?目的を決めた後は、チームを作るって言ってたか?」


ジュドーがヒロに向き直って聞いた。


「ええ。体制表、というものを作ります。

 簡単に言えば、このプロジェクトの達成条件を満たすために必要なメンバーを書いた表です」


体制表がないと、誰がどうプロジェクトを進めるのかが曖昧になってしまう。

結果として、自分のすべきことが分からず、プロジェクトは進まない。


そういう点では、体制表も目的も良く分からない女神ファシュファルが丸投げした”この世界を豊かにする”というプロジェクトはプロジェクトの体をなしていないのである。

もしファシュファルのようや上司がいたら、それはダメな上司だ。


「参画メンバーか?

 ヒロに、俺に、ランペルツォン、あとはギルド長とか?」


「関係しそうなメンバーとしては、そうなのでしょう。

 が、体制表を作るにはまず、プロジェクトの進め方の概要を考え、その上で必要スキルを考えないといけません」


「進め方の概要?スキルって技のことか?」


「技というか、知識や技能と言ったほうが良いですね。

 簡単に言うと

 ①どんなプロジェクトの進め方をするか

 ②その進め方にはどんなスキルがいるのか

 を確認するんです。

 何も考えずにメンバーを決めると、知識や技能が足りなくてプロジェクトが失敗することもあります。」


ヒロは言いながら思い出した。

昔、適当にプロジェクトメンバーを決めたら、あるプログラム言語の分野に詳しい人間がおらず、急遽人を探して右往左往したことがある。

もちろん、スケジュールは遅れるし、コストも当初より余分にかかることになった。

英語や、交渉力やなど、テクニカルでないスキルについても同じようにスキル不足が途中で露呈して苦労したことがある。


よって、はじめの段階でどんなスキルが必要かを明確にすることを、ヒロはプロジェクト発足の原則としている。


ヒロは続けて話した。


「まずは、①どんなプロジェクトの進め方をするか、から明確にしましょう。

 ”ゾームからの襲撃があった際に、二ヶ月で死亡者および重傷者を5人以下に抑える兵器を作る”

 これを達成するために必要なことを、大まかにフェーズに分けて書き出しましょう。

 ジュドーさん、どうすればこんな兵器が作れるか、分かります?」


「いやぁ、さっぱりだ。

 兵器なんて作ったことがないからなぁ。

 基本は自分の体が兵器そのものだな」


「…となると、ランペルツォンさん、お力を借りたいのですが」


ヒロは、再びランペルツォンの方を向いた。


「王国兵団は兵器を開発した経験があると、先ほどおっしゃいました。

 兵器開発の流れを、教えて欲しいのです。

 それを教えていただければ、プロジェクトで複数の専門知識の人間が協力する有用性を知っていただくことができます」


ヒロは、真剣なまなざしでランペルツォンを見た。

ランペルツォンは、しばらくヒロを睨みつけた後に、口を開いた。


「…良かろう。

 もし、そので私の気持ちが変わらなかったら、グレンダール総指揮官にチームの変更を上奏するぞ」


「はい。それでかまいません」

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