第20話 部外者を信頼しない男

ジュドー、レイン、ヒロの三人は、プロジェクトの達成条件についてさらに話し合った。

ジュドーやレインの経験を元に、次の目的と達成条件を暫定案として決めた。


・プロジェクトの目的

  ゾームの襲撃に対して、王都の人間を守る


・プロジェクトの達成条件

  ゾームからの襲撃があった際に、二ヶ月間で死亡者お呼び重傷者を3人以下に抑える兵器を作る

   三度の満月連続で3人以下となれば、プロジェクトは完了とする


ヒロは紙に書きだした。


「なかなか、いいと思うぞ」


ジュドーが言った。


「ランペルツォンさん、どう思われますか?」


ヒロは、ランペルツォンに話を振った。


「とくにコメントはない。

 あえて言うならば、兵器開発は、そんなに簡単じゃない。お前たちでできるとは思えない」


「我々…ギルド主体では難しいというご意見ですね。

 王国兵団なら、ノウハウがあるんですか?」


「もちろんだ。だからこそ、私はこの案件は王国兵団で担当すべきと考えている。

 兵が隣国のせいで大きく動かせないとは言え、グレンダール総指揮官もギルドでこの重要な対策を本気でこなせるとお考えとは思えない…」


ランペルツォンがぼやいた。

なるほど。ヒロは思った。


ランペルツォンからすれば、ヒロは完全にポッと出の部外者だ。


よく、元の世界でもプロジェクトに外から来たコンサルを入れることに抵抗する組織がある。

部外者に何がわかるのか、本当にプロジェクト推進ができるのか、という意見は良くわかる。


だが、実績のある部外者ならば、プロフェッショナルとして、雇い入れることもよくある話だ。


ヒロの冒険者ギルドでのコンサルティングが、グレンダールにとって物事をうまく進めてくれそうな実績に見えたのだろう。

だから、ジュドーの紹介ではあるがヒロに任せた。


だが、ランペルツォンはそう思っていないらしい。


「ランペルツォンさん。

 プロジェクトは、目的達成のために必要な、いろいろな専門知識を持つ人が集まる方が、成果が出ます。

 私はプロジェクトを進める知識を持っており、兵団ひいてはランペルツォンさんは、兵器開発の知識を持っています。

 ギルドにはモンスター討伐の知識があります。

 力を合わせれば、凄いことができるように思いませんか?」


「私にはその、プロジェクトというものの有用性が分からない」


「なるほど…。

 もう少し、この会議にお付き合いいただければ分かってもらえるかもしれません」


ヒロはそう答えた。

ジュドーが会話に割って入る。


「ランペルツォンよ。

 あんたの仕事ぶりは俺も知ってるさ。

 賢いあんたが、ヒロの知識の重要さが分からないはずがない。

 薄々感づいてるんだろ?ヒロが必要だって」


ランペルツォンは、下を向いて言った。


「それでも、私は外から急に現れた人間を信頼することはできない」


ランペルツォンはとかく部外者を信頼していないようだ。

過去に何かあったのだろうか。ヒロは思った。

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