第16話 紳士(変態)と天使

「…あの……」


「……はっ!はい!」


放棄した思考を必死にかき集める。


「……名前を聞いても…?」


しまった、俺としたことが見惚れていて自己紹介をすっかり忘れていた。

よし、ここは真の紳士、略して真士の見せどころだ。完璧な自己紹介をして印象をよくしようじゃないか!


「お、おりぇの名前はは彩原 修斗。16歳でし」



(心が)死んだ………


噛み噛みの噛みまくりじゃねぇか!大切な第一印象がズタボロでし……。もうお婿に行けない…しくしく



「ふふっ、面白い人ですね修斗さんは」


まさかの好印象!?いや違う、この子はおそらく俺のことを気遣ってこんなことを言ってくれているのだろう。


天使かな?


心のケアまでしてくれるなんて、この子は天使なのかな?俺はいつの間にか天国にきちゃったのかな?


俺は瑞希たんに会えるのならば一向に構わんっ!



「…あっ、16歳ならボクより1個上ですね…。先輩って呼んでもいいでしょうか……?」


…………



ゴフッ!(致死量の吐血)


夢にまで見たシュチュエーションがキタァァァ!もう死んでもいい……。そろそろ天使がお迎えにきそうだ。天使の羽と天使の輪っかをつけた瑞希たん……。


スゥヴァァルァシイィィィィ!



「………あの…」


「……え?…ああ、もちろんいいよ。好きなように呼んでくれ」


というか断る理由がない。むしろ土下座して呼んでくれるなら喜んで土下座する。


「……ではこれからよろしくお願いしますね、先輩」


ふふっと微笑む推しに先輩と呼ばれる……。


ゴフッ(致死量の吐血)



「よ、よろしく。瑞希さん」



どもりながらも必死に取り繕う。

そうだ、俺は真の紳士、略して真士なのだ。真士たるもの動揺の1つや2つ隠し通すことなど造作もないはず。相手のペースに呑まれるなど言語道断ならぬ紳士道断だ。




「……………」


「ど、どうしたの?」


クッ!動揺を隠しきれず噛んでしまった!

気をつけようと思った矢先に失敗してしまうとは……!ここからは気を引き締めていかねば。



「……先輩はボクの先輩なので、瑞希さんじゃなくて瑞希って呼んでください…。」



いや無理ゲーじゃん



ゴフッ(致死量の吐血)、バタン



________________________________________


瑞希たんの無自覚の微笑み!


主人公に10,000のダメージ!


主人公は1で耐えている!


主人公は動揺を隠しながら真士フィールドを展開!


瑞希たんの無自覚のお願い!


主人公に100,000,000のダメージ!


残念!主人公は死んでしまった!




読んでくれた人に感謝!

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