第12話 ヒーローは存在する
よくラノベやアニメで見かける、ナンパされてる女性を颯爽と助けるイケメンさんや、ピンチに陥ったヒロインを颯爽と助けるヒーロー。
女の子なら誰しもが1度は憧れたであろうシュチュエーションは、大人になるにつれ儚い幻想なのだと思い知る。
大抵の男は、女性がナンパされていても見て見ぬふりをする。面倒事に関わりたくないから。
大抵の男は、ピンチのときも女性のことを助けてはくれない。自分の命を最優先に守るから。
誰も助けてくれないなら自分で守るしかない。
自分が強くなって自分を助けるしかない。
ヒーローなんていないのだから。
今日までは。
☆ ☆ ☆
たまたま寝坊したから、たまたま近道を通ろうとしたから、たまたまそこで靴紐が解けたから。
多くの偶然が重なって起こった最悪のできごと。
ボク、黒島 瑞希はブサイク5人組に囲まれて絶体絶命のピンチに追い込まれている。
怖いという感情で頭がいっぱいになってしまう。
普段通りのボクならこんなやつら1対5でもボコボコにできるはずなのだ。
なのに体が動かない。目線が、声が、仕草が、全てが生理的に受け付けない。
悔しくて、怖くて、悲しくて、情けなくて、ボクはいつの間にか泣いていた。
エリアにも何度か潜ったこともある。モンスターを倒したこともある。今もアイテムボックスの中にある武器やアイテムを使えばすぐに戦うこともできる。
なのに体が動かない。
強くなったのは外面だけで、心は弱いままなのか。
絶望が心を覆い尽くすのを感じる。なにもかも諦めて目を閉じようとした。
「おい。なにをしている。」
「ッッッ!」
言葉に込められた怒りの感情にビクッとしてしまった。反射的に声がしたほうに顔を向ける。
そこにいたのは1人の男。赤の他人、会ったこともないはずなのにボクは何故かこう思ってしまった。
“ヒーローが助けにきてくれた”と
「ギャハハ!ヒーローごっこかよ!」
5人組の誰かがそう言っているのが耳に入った。
違う、ごっこなんかじゃない。
この感じは、きてくれただけでもう大丈夫だ、と無条件で安心してしまえるこの感じは…
まるで本物のヒーローのような…………
男が近づいてくる。
男と目が合った。
黒目黒髪のイケメンさんだ。ボクは男嫌いなのに何故か彼に嫌悪感が湧かない。
そしてかなりの高身長。ボクもそれなりに高いが彼のほうがずっと高いように見える。
そんな彼がボクのことを凝視している。しかも何故かひどく驚いたような顔をして。
どうしたのだろう。もしかして1度会ったことがあるのだろうか。
そんなことを考えていると、いきなり
フッと彼の表情が一瞬で無へと切り替わる。
そして……
ゾワッッッ!!!
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ぶっちゃけ言うと、この作品の裏テーマは〈ヒーロー〉です
読んでくれた人に感謝!
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