第32話 黄色い決意

必要として貰えるのが、嬉しかった。

強くなればなるほど、褒めて貰えた。

そうすれば仲間が出来て、私はひとりぼっちじゃない。



けれど布団に潜ってしまったら、

誰も私に見向きもしなくて……

こんな事なら、剣の腕なんて磨かなければ良かったのかな?

私、次は絶対に刀なんて使わないわ。

とびきり可愛く自分を磨いて、ずっと傍にいて貰うの。



でも、貴方なら……

もう誰も見ていない私の事を、

泣きながら見届けてくれた貴方なら。

どんな私でも、

受け止めてくれるんじゃないかって。

そんな夢みたいな事を考えて……


液晶の空に浮かび上がり、私を看取ってくれた貴方。

天に映っているんだから、きっと女神様なんだろうな。


私が行くのは、地獄なのかもしれないけれど。

必死に祈れば、貴方の元へいけますか……?






私とユメ様は、いつも教室で二人ぼっちだった。

私はそんな時間が大好きだ。

ユメ様もそう思ってくれているのが、

画面越しに伝わってくる。


ユメ様は本当に可愛い。

ユメ様は私の事を可愛いと言うけれど、

私は貴方がまばたきをするだけで可愛いと思ってしまう。


なのに私は、ユメ様に何もしてあげられなくて……

ユメ様が髪を半乾きのままで眠るなら、

私が代わりに乾かしてあげたい。

適当に爪を切ってしまうなら、

私がユメ様にネイルを施したい。

お化粧だって、私が全部してあげる。



せっかく私たち、両思いなのに。

どうして何も出来ないんだろう……



もしもユメ様に触れたら、何をしよう?

髪型も、お洋服も、アクセサリーも……

ユメ様の全てを私が彩りたいな。

そしたら2人で、街へ出かけるの。

同じものを食べて、同じものを見て……

沢山の可愛いを、ユメ様と分け合いたい。



今だって、ずっと一緒にいるけれど。

画面越しじゃ貴方に触れない。


ユメ様と、手を繋いで歩いてみたいな。

そしたらきっと、世界がキラキラと輝くの!



可愛いユメ様。

どうしても貴方に触れたい……

その為なら私は、天だって貫いてみせる。



私は頭上に広がる液晶の空を睨みつけて、

この壁を叩き割る為に腕力を鍛える事にした。

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