第30話 ユメの続き
前回は放送事故のような終了をしてしまいすみません。神です。
現在ユメコは、世界の狭間におります。
「世界の狭間ってどこよ!
いいからツカサのところに帰して!!」
それは無理だよ。
君がページを破り捨ててしまったんじゃないか。
「え、破ったらまずかったの……?!」
そういう事は破る前に確認して欲しかったな。
「早く言ってよ!!
あーぁ、またツカサを探しにいかないといけないのか」
本当に神経が図太いね、ユメコは……
ヒミコみたいに、泣いたりしないの?
「なんで?
だって私は、書いたから。
”彼は決して負けない勇者として、彼女の傍らにあり続けた”って。
だから絶対、また会えるでしょ」
そんなに信用してもいいの?
君はその言葉を、
”書かされた”と思った事はないのかい?
「どういう意味よ……」
突然夢小説を書くなんて、
自分でも意味が分からないと思わない?
大した時間も過ごしていない相手を、
どうして片割れと見定めた?
それって、運命だとは思わないかい??
「……運命ってもっと、ロマンチックに使うものでしょ。
あんたが言うと、しらけるわ」
それは失礼。
私は可能性の話をしただけだよ。
「そんなの別にどっちでもいいわよ!
むしろ私の罪が軽くなって助かるわ。
あの夢小説に関しては、
あんたも共犯って事になるだけだし」
自分の気持ちに関しては、疑わないのかい?
「今更そんな事する位なら、ここまで辿り着いてないのよ!
ツカサが背負っているものを、私も一緒に背負うだけ。
どんな運命だって、乗り越えてみせる!!!」
じゃあ、もう一つの可能性の話をしよう……
もしもこの運命がなければ、
違う未来があったかもしれないね?
「……何が言いたいのよ」
本来あるべき選択肢の話だよ。
今こそ君にプレゼントしようか。
君は誰との未来を望む?
ここに最後の1ページがある。
好きな名前を書くといい……
私が君に、ハッピーエンドをあげよう。
「……バカにしないでよ!!!
私たちが過ごした時間は、そんなに軽いものじゃない!
大切な人たちを奪った事、絶対に許さないから……!!!」
いいのかい?
私なら、どんな奇跡だって起こせるよ。
「いつまでも書いてるつもりでいたら大間違いだからね!
これからは、あんたの本なんて読んでやらない……
逆に私が書かせてやる!!!」
君のあるがままを私に書かせると?
神を下僕にするつもりなのかい……
「私はもう、あんたが望む通りには動かない!
選択肢ですって??
そんなもんパラメーター上げて自分で出すわ!
フラグは自分で立てるもの!
選ぶ道は、その時に決める!!!」
それはきっと、大変な道だよ?
私の力がなければ、
ツカサにすらまた会えるか分からない。
「大丈夫! だってツカサは、司書だから。
私が本を大好きな限り、絶対にまた会えるの!!」
……そうか。
私も本が大好きだよ。
君が目指すハッピーエンドを、
読んでみたくなる程に……
「私は好きな人を不幸になんてしない!
絶対に全員、幸せにしてみせる!!!」
無残に破り捨てられ、
最後に残った神の本の1ページ。
ユメコは言葉を走らせた。
お世辞にも綺麗とは言えない日本語で、
そこにはこう書かれている。
”みんな必死に頑張って、いろんな世界で生きている”
と……
目が覚めると、ユメコは見知らぬ場所にいた。
空が緑色をしている。なんだここは。
間違いない、異世界だ……
「目が覚めたか、ユメコ」
聞き覚えのある声に振り向くと、そこにはエビルの姿があった。
近くにいたから、世界が別れても同じ場所に辿り着いたのだろうか。
「まったく、貴方は無茶苦茶だな……
神に向かってタンカを切るなんて、ヒミコなら絶対にしなかった」
「だって、私はヒミコじゃないから」
「そうだったな。おかげで死に損なったよ。
それで、これからどうするつもりだ?
おそらく、今まで神の本で統治されていた国々が自治国となっている。
異世界同士の侵略戦争が始まるだろう……」
「そんなの知らない。
私はツカサを探す」
「まさか、本当に自分の事しか考えてなかったのか?」
自分の為に散々な法律を作り上げたエビルにすら、ユメコは呆れられた。
「私は、失くしたものを全部取り返しにいくの……」
ユメコにはもはや、一切の迷いがないようだった。
ここまで設定を大風呂敷に広げてあげたのだから、
もう少し冒険に心を奪われて欲しい。
戦記だって悪くはないだろう……
けれどユメコはいつだって、
自分の大好きなものにだけ一直線だ。
それ以外の事には見向きもしない。
だってユメコは、オタクだからだ。
「私は今度こそ絶対に諦めない……
何一つ、取りこぼしてなんかやるもんか」
そう言って強く握りしめたユメコの拳に、何かが当たった。
それは、一冊の本である。
「何? この本。
男もすな…… みんとす??」
パラパラとページをめくると、
ユメコはそれを愛おしそうに眺め、そして笑った。
「……な〜んだ、いつでも会えるじゃない」
ユメコはその本を学生カバンに詰め込むと、
まだ神すらも知らない未来を見据えて歩き出す。
彼女の果てしない物語が、始まりの鐘を鳴らした……
もう一度、最初から。
何度でも。
ハッピーエンドを掴むまで。
さぁ、物語を始めようかー……
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