第129話 ジョセフを愛する者たち(その1)
ジョセフが死んでからというものリサはずっと自室にこもり誰とも顔を合わせることはなかった。
「うぅぅぅ~っ、ジョセフ様……ジョセフ様ぁ~……」
リサは俗にいうヤンデレ状態になっておりジョセフの名を連呼しながら涙を流していたのだ。今のリサを宥めようとジンジャーとアイリスは試みるもリサには二人の声は届かなかった。
「ジンジャー、ジョセフはどんな感じに死んだの?」
アイリスは無垢な少女の瞳でジンジャーに尋ねる。
「そうか、アイリス達にはジョセフがどのようにして死んだか伝えてなかったね……ジョセフは魔王ベルの放った魔法により跡形もなく消滅したわ、リサの目の前で……」
ジンジャーは涙を堪えながらアイリスに死因を語る。するとアイリスは「リサの気持ちを考えれば確かに分からなくもないけど……」と息を詰まらせながら言う。
「私だって、愛するジョセフが死んだことはリサと同じ、それ以上に悲しいわ……でも、いつまでも悲しんでいたってしょうがないじゃない……死んだジョセフが生き返るわけじゃないんだし……」
「ジョセフが生き返ればいいのに……」
ジンジャーとアイリスはジョセフが生き返ってくれればと願っていたがどんなに魔法があるとはいえ復活させる魔法は死んだ人間をゾンビだったりのアンデッドにするしか方法がない以上不可能である。
「誠って人がこの前ジョセフにクエスト依頼しに来てたけどその人に頼んでみたらどうかな?」
アイリスはジンジャーに誠を介してジョセフをどうにかできないか提案をする。
「私もそれを思っていたけどリサにそれ言ったらリサ凄く発狂しちゃって……誠のせいでジョセフは死んだとか言い出す始末だし……」
「リサもかなり精神病んでいてこっちもどうにかなりそうだよ~」
「まあ時間が解決してくれるのを祈るだけだよね……」
ジンジャーとアイリスが廊下をとぼとぼと歩き方を竦め溜め息を吐いていた。
「二人とも何をしているんだ?落ち込んでいる暇があるなら修行しなきゃ!」
テレサは肩を竦めているジンジャーとアイリスに後ろから声をかける。
「そんなこと簡単に言うけどテレサはジョセフが死んだこと悲しくないの?」
ジンジャーは訝しげな表情でテレサに尋ねる。
「騎士である私は仲間が死んだことをいちいち気にしていても仕方ないと割り切っている……そうならないためにも強くなるしかないだろ?」
テレサはジンジャー達に悲しんでいる暇はないと説く。
「それっ、本気で言ってるの?」
ジンジャーは眉間に皺を寄せテレサを睥睨する。
「だったら何だっていう?」
テレサの一言にプッツンきたジンジャーは急接近しテレサの胸ぐらをつかむ。
「あんたは目の前で仲間を殺されていないからジョセフが死のうとも何とも思っていないみたいだけどリサはもっと辛いのよ!一緒にいた私だって思い出すだけでも胸が張り裂けそうになるっていうのにそれを何とも思わないテレサは人間の屑よ!」
ジンジャーはテレサに仲間の死を何とも思っていないテレサにリサと自分が思っている本音をぶちまける。
「私が何とも思っていないわけないだろ……私だってジョセフが死んだことは悲しい……愛する人を失ったのは別にリサとジンジャー、アイリスだけじゃないんだから……ジョセフのことは私も好きだったし……」
テレサはデレデレとしながら切れ長の目で頬を赤らめジョセフへの思いを吐露する。
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