第117話 魔人族の復讐(その2)

 食事を済ませ次の階層へと進もうと準備を整えると足音が聴こえた。


 リサは足音を聞き集中力を高め心を読もうとするとジョセフ達の命を狙うものの声が聴こえたみたいで全員に戦闘態勢に入るように提案を出した。


 「みなさん、私達の敵がこちらに接近しています!」


 足音は段々と近づきつつリズムでも取るかのようにゆっくりと足音が聴こえたり急に速くなったりとしていた。


 恐らく敵も慎重に行動しているのは間違いないのだろうがあまりにも音が変則的でありリサは集中して心を読むことを辞めてないことから敵は間違いなくジョセフ達に奇襲をかけるつもりだろう。


 「リサ、敵に心が読めることはバレない方がいいだろうから敵が来る寸前まで気づかないふりをしていた方がいい」


 ジョセフはリサの能力を敵に知られると確実に対策を取られてしまうことを恐れ耳元で小声で提案を出しリサは首を振り頷く。


 リサは小声で敵がどのように動くのかジョセフに教えた。ジョセフはわざと気付かないふりをしながら二本目の煙草を吸うためマリーの『ファイヤー』で煙草に火を着けてもらい口に咥え煙を吸い込みふぅ~っとと息を吐くようにゆっくり吐くとゲホッゲホッとむせる声が聞こえ始めた。


 「どうやら後ろにいるみたいだな……」


 ジョセフは指をバキッボキッと鳴らしながら『スパーク』を発動しようとしたその時佐藤夏樹が前に出る。


 「出てきやがれ!俺は魔人族でも怖くはないぞ!」


 佐藤夏樹は怒鳴り声を上げながら後ろで隠れている敵は反応したのか後ろにある物陰から影が揺らめいていた。


 「バレちゃあ仕方がないな……」


 後ろにある物陰から人間らしき人物が現れ、ジョセフとリサ以外の全員が一瞬安堵しようとしていたが再度攻撃態勢を整えなおす。


 「死んでいった魔人族の仲間達の敵は取らせてもらうぞ!人間よ!」


 魔人族を名乗る男は人間如きと言いたそうな表情で余裕ぶっていた。


 「まっ、魔人族だと!?」


 佐藤夏樹はあまりにも人間と同じ雰囲気をしていたため魔人族と言われても信用できない様子だ。


 「お前が言いたいのは見た目が人間に似ていると言いたいのだろう。俺は人間と魔人族のハーフだからだよ!」


 魔人族と人間のハーフを名乗る男は自分から正体を明かす上に如何にも「自分は頭が悪いんです」と言っているようなもので正直こんな雑魚よりもさっさとベルを討伐したいのにと内心思いながらも取り敢えず話を聞くことにした。


 佐藤夏樹は間抜けな表情で魔人族に向かってこんなことを発した。


 「人間と魔人族が結婚することってあるんだな……」


 ジョセフはその辺りを疑問に思っていたのだがこの世界で異種族同士で結婚して子供ができるのかは疑問に思っており、知りたいとも思っていた。エッチな同人誌や神話で神と人間のハーフだったり魔王と人間のハーフなんてものを題材にした作品があるためこの世界でも実現できるのかを聞いておく必要があった。


 「俺の父は魔人族で母は人間だ。そして母はまだワトソン王国が他国と戦争をしていた頃にある貴族に辱めを受けた後追放され父に救われたのだ!その父をそこの色眼鏡をかけている長髪が洞窟で殺したのだ!」


 魔人族はジョセフの方を指さしながら睥睨し「絶対に許さん!」と言わんばかりに殺意を剥き出しにしていた。


 「父のタスクをあんな無惨な殺し方をした貴様だけはただでは死なせん!父と同じように地獄を味わわせてから殺す!タスクの息子であるこのチュデルが」


 チュデルと名乗る魔人族はあの時洞窟で倒したドラキュラのような格好をした魔人族の息子であることと人間の母を持つハーフであることから殺すことに躊躇いを一瞬感じてしまったがジョセフの敵である以上、ジョセフは手を抜くつもりはなかった。


 「俺の敵である以上例え人間であろうとも……殺す」

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