第109話 ベルと迷宮の魔人族

 迷宮は魔物がぞろぞろと群れており、如何にもファンタジーに出てきそうな魔王の玉座って感じのどくろが付いており腰を掛けている男がいた。


 「ほう、それで二階層に配置していたゴブリンが全滅ねぇ……」


 「はっ、は……それもたった四人にです……」


 下僕っぽい魔人族は声を震わせ土下座した頭を押さえつけられているのではと彷彿させるほどに重く、上げられない様子で状況を報告していた。


 「あの名無しの魔人族にゴンザ、ワトソン王国に潜入させたあいつもダメだった……それにこの迷宮も20階層は人間に占領されている。これは俺の失態でもあるがここまでは計画通りだ。これはあくまで俺個人の、ワトソン王国への復讐のための余興のようなものだからな」


 「ベル様、ワトソン王国にどのような過去が……」


 ベルの下僕の魔人族がオドオドとしながら尋ねるも「聞くな!」と睥睨しながら黙らせる。


 「思い出すだけで腹が立つ……」


 「申し訳ございませぬ……」


 ベルはワトソン王国に個人的な恨みがあるようでそれを思い出すだけでも腸が煮えくり返るようでかなりの焦燥ぶりを見せつけていた。


 「もう後戻りはできん、このままワトソン王国に……その次は全世界を火の海にするぞ!」


 ベルの怒号が一気に響き渡り魔人族たちは「「「「ハッ!」」」」と声を発する。


 「ワトソン王国の人間は……王家の血を引くものは必ず俺がこの手で根絶やしにしてやる!」


 時は少し経ち、転移陣を守っている冒険者の後ろにいきなり魔人族が現れ魔人族が言伝を要請していた。


 「我々魔人族はワトソン王国に宣戦布告をすると伝えろ、いいな?」


 武器を構える暇もなく、ただ怯え膝がガクガクと震え地面に膝をつき失禁をし「はい」と二文字で返事を済ませた。


 魔人族の脅威を感じた冒険者は転移陣の警護どころではないと迷宮を抜け冒険者ギルドまで駆け付ける。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る