第57話 草凪誠からの依頼(その1)

 「無報酬でゴブリンを討伐したジョセフにクエストを依頼したいのだが引き受けてくれるかな?」


 「内容にもよるがね」


 誠はジョセフにクエストの依頼をし、ジョセフはう~んと渋ると誠は淡淡とした様子になるのかと思ったが至って冷静であった。


 「ここ最近、ドラゴンがこの辺に生息しているみたいでね。そこでワトソン王国の冒険者に頼んだ方がいいと思って…」


 「誠は神様に色々と底上げしてもらっているとかじゃないのか?」


 「確かに簡単に死なれては…てことで記憶力、魔力、その他諸々強化しては貰っているが魔法に関しては火力が弱くてドラゴンのような強力なモンスターを一撃で仕留めるのは難しくてね…」


 誠は自分自身は神様に底上げしてもらったことを認めつつ火力が弱いため確実に仕留めるために他の冒険者に依頼せざるを得ない状況であることを説明しだした。


 「…それならウチのパーティにマリーという全属性魔法適正を持っている仲間がいるから俺達向きのクエストかもしれないな」


 「ジョセフには本当にすまないと思っているよ。僕の魔法がもっと火力が強ければ他人任せにするようなことは…」


 「気にするな…それよりも報酬はちゃんと出るのか?俺の分はいいとして他のメンバーにタダ働きさせるのは申し訳なくてな…」


 頭を深々と下げた誠はジョセフに謝罪の言葉を述べているがジョセフはそんなに頭を下げなくてもと思いながらもそろそろ他のクエストをこなさなければと思っていた。


 「分かった。報酬に関してはジョセフの望んだ額を支払えるようにするよ。一応僕の方も結構お金はある方だから。それでドラゴン退治の件を引き受けてもらいたい」


 「金持ちなんだな。それに可愛い女の子とパーティ組んだりとオタクの理想そのものだな、君は。勿論俺は引き受けるよ」


 ジョセフは誠にそう言うと誠はそれほどでもと言わんばかりに苦笑いをしながらジョセフに再度ドラゴン退治の依頼を要請する。


 (誠と佐藤夏樹を対面させない方がいい気もしたがいずれ顔を合わせることもありそうだし黙っておくつもりもないがそれはそれで面倒になるだろうな)ジョセフはふとそう思った。


 「本当に助かるよ。もしかしたら断られるんじゃないかと不安にも思っていたけど」


 「同じ日本から来たもの同士、助け合うことも大事だからな」


 そう、ここで誠に恩を売ることでコネクションを広げ今よりもいいクエストを引き受けられるようになればテレサやジンジャー、佐藤夏樹達を養えるようにはなるだろうからだ。それに人との出会いによって人の人生というものは左右される傾向もあり、その辺りもしっかりと考えていかなければいけなかった。


 「ジョセフは日本にいた頃は何していたのか聞いてもいいかな?」


 「俺か?俺は喧嘩の相手を必要以上にぶちのめしたり悪徳教師を学校から追い出したりとお世辞にも英雄になれるような大層な生活はしていないよ」


 「そうなんだね、僕はごく平凡な学生をしていたよ」


 「ごく平凡か…俺もそんな学校生活を送れたならどれ程マシだったかと思う気持ちもあったが今の生活に馴染んできた以上日本に未練はそんなにないかな……」

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