第46話 シャーロック王子の帰還(その3)

 エミリーに会えなくなったことに関しては今でもすまないとは思っており、ジョセフが異世界に転移させられたのも今考えれば当然の報いであったのかもしれない。


 中学になって一時期エミリーとはもう会えないと絶望していた時期に他の女子に好意を寄せてしまったことでジョセフの精神は崩壊し、ヤンキーやプロの格闘家、学校の教師や女子にまで手をあげる程にまで荒れてしまったのだ。


 もしも神様の手違いで異世界転移させられなかったとしてももうあの世界でジョセフは人生をやり直すことは確実にできなかったのだろう。


 これも全て、ジョセフが選択を間違えてしまったことが原因なのだろう。神様は手違いで異世界に転移させてしまったというが多分あれは嘘であると疑いすら感じた。ジョセフは推測でしか物事を語ることはできないが神様は多分そうでもしないとジョセフが異世界転移させられることを拒否し続けるだろうと思って慌てて言い出したのだろうと思っている。


 今もなお、ジョセフはエミリーとの約束を果たせないことへの罪悪感で胸がとても苦しく、張り裂けそうになりそうだった。ジョセフが異世界で強くなったりマリーの魔法で癒してもらったりしてもこの心にぽっかり空いた傷を完全に癒すことはできないだろう。例え、ジョセフは自信の記憶を消したとしても心の中に深く刻まれてしまったものは恐らくジョセフの魂が完全に消滅でもしない限り。


 ジョセフにはリサを本気で好きになる資格はあるのか?リサは心優しいためそんなことはないと言いそうではあるのだが小学校の頃真剣に愛し合っていたエミリーのことを忘れていたジョセフは自分みたいな人間の屑に女性を愛していいのかは分からずにいたがエミリーは未だにジョセフのことを愛しているとしたらジョセフはリサを愛していいのかどうか、異世界ではジョセフの経歴なんてものは完全にリセットされているようなものなのであることから細かいことは気にするなと読者から突っ込みを入れられそうな気もするがジョセフもそれほど能天気な人間ではないからなのかそんな楽観的に考えらることはできなかった。


 リサの小さな胸が俺の腕に当たり彼女はぐっすりと眠っており、そのせいか俺はなかなか眠ることはできずにいた。


 「ジョセフさま~、私達の赤ちゃん~できちゃったみたい~」


 ジョセフの耳元でそんな寝言を連発されては眠れるものも眠れなくなってしまうのだ。それ程にまでリサに愛されているジョセフは幸せ者なのかもしれない。それにしてもジョセフは自分と子供作ってる夢をみるリサに関してジョセフは本人の目の前でそんな夢を見られても正直なところ困るものだ。


 リサがいるおかげでジョセフは今のところこうやって自我を失わずにいるがリサがいなかったらジョセフは異世界ではどうなっていたのか、おそらく毒が身体中に蔓延してのたれ死んでいたのは間違いないだろう。


 ジョセフは色々考え事をしていると眠気がやっと出てきたため、考えるのもこのぐらいにしておこうと眠りについた。

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