第34話 ワトソン王国略奪計画(その2)
ジョセフは街に帰ってからずっと気になっていた。
冒険者ギルドでも耳にする危険な魔人族や魔物の類が極端に出現していることは10年以上はなかったみたいだ。魔王という存在も100年以上も前の存在で勇者がとうの昔に討伐しているみたいだからだ。
「魔王が復活した」とか「帝国が魔人族と同盟を結んでいるのではないか?」と仮説を立てている人がいたが少なくとも人間が魔人族と同盟を結ぶことは低いとジョセフは断定している。
その理由にこの手の異世界ファンタジーは魔物や魔人族が人間と手を組んで世界征服をしようなんて成功率が低いからだ。
だけど物語というものは現実と違い、常にイレギュラーだらけだ。ジョセフの推測が外れることだって確実にあるだろう。
(老人のフリをした魔人族のゴンザだったかな、あいつの仲間がいたとして勝ち目はあるのか?マリーがいくらチート魔法使いだからといって彼女に任せっきりにするわけにもいかないしかと言って何もせずにただボーっとしているわけにもいかないな)ジョセフは肩を竦めながらマリーにばかり頼っていられないと思った。
「この前のゴブリン討伐の件なんだが実は村人の嘘で、その代わり魔人族の一人を討伐することができたよ」
「そうなんですか。ゴブリン討伐の件は嘘だったんですか。ジョセフさんも無報酬でクエスト依頼は極力引き受けない方がいいと思いますよ?」
「そういうものか?」
「少なくとも私はそう思いますよ。ただゴブリンよりもランクが上である魔人族を討伐した功績は大きいです。魔人族はゴブリンや人間よりも力が強く上位ランクの冒険者でも倒すのが厳しいので…」
受付のお姉さんは少々ジョセフのことを心配しつつも魔人族を討伐できたのは凄いことだと褒め称えてくれたのだ。受付のお姉さんの言うように今後とも無報酬でクエストを引き受けない方がいいのかもしれない。クエストの依頼も必ずしも本当に起こっている案件なのか怪しい依頼もあるらしく冒険者ギルドもかなり困っているみたいだ。今回みたいにゴブリン討伐という名の魔人族討伐依頼は少なくとも詐欺の対象になることだってあるだろう。
受付のお姉さんに報告を済ませ、そのまま組合を出ようとしたその瞬間、リサがかなり慌てた様子でジョセフの方へと駆けつけてきた。
「ジョセフ様、大変です!お父様が、お父様が何者かに毒を盛られたみたいです…」
「それは本当か?」
「先程宿に戻ろうとしたら宿主に手紙を渡されて…」
リサの瞳からは大量の涙がこぼれ落ち、手では拭いきれない程にまで流していたのだ。
「んで王様はまだ生きているの?」
「一応…まだ生きているみたいですけどそう長くはないだろうとのことです」
「それなら王様を助けに行こう」
「でも、お医者様は治せないと…」
「マリーがいるだろ、あいつは全ての属性魔法が使えるんだ」
気休め程度ではあるがリサを落ち着かせるためにもマリーの力を借りる必要があった。
「ジョセフー、報告は終わったか?」
「佐藤夏樹、それにみんなもちょうどいいところに来てくれた。マリー、単刀直入に聞くけど毒を盛られた場合でも治すことはできるか?」
「あたしは全ての魔法を習得済みだから勿論使えるわよ」
「すまないがリサの父親を助けてくれないか?」
マリーはリサの顔を一瞬見て状況を把握した。
「その様子だとかなり深刻そうね。それなら今すぐ行きましょ」
「ちょっと俺は?」
スルーされている佐藤夏樹だが、リサの父親を助けるために全員で宮廷へと向かうのだった。
馬車を借りてテレサとジンジャーは御者台にジョセフ達はすぐさま荷台へと乗り込み全速力で馬を走らせ、風に揺らいでいたのだがそんなことを楽しんでいる暇などなく、早く辿り着かないかとピリピリしていた。
「リサ、おじ様きっと大丈夫だよ…」
「ありがとう、アイリス」
アイリスはリサを慰めており、ジョセフはただそれを見ていることしかできないことに歯がゆさを感じていた。
「しかしタイミングとか考えたらかなりおかしくない?」
「そうだな、ジンジャーの言う通り魔人族を倒したと思ったら今度は陛下が…」
「それに今ここで亡くなったりとかしたら戦争がまた勃発して商売も気軽にできなくなるわ…」
テレサは悔しげな顔をして歯を食いしばり、ジンジャーは戦争が起こるのでは?と危惧していた。ワトソン王国は今の王が就任してから一度も戦争が起こったことがなく、他国との貿易も友好的な関係を築いていたのだ。
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