第29話 2回目の無報酬クエスト(その3)

 村へと到着し、ゆっくりと幌のない荷台から降りたジョセフ達を待ち構えていたのは村人達であり、何やら様子がおかしかった。


 第一印象がまずそこだったのだが何故村人達の様子がこんなにも険しいのかはジョセフ達もなんとなく分かっているつもりであったがここまであからさまにされると少し不安でいっぱいだった。


 「おい、アンガス!何故よそ者を連れてきた!?」


 「父さん、この人達はゴブリンを討伐してくれる冒険者の方々だよ。もうこれでゴブリンの被害に喘ぐ必要も…」


 「何をバカなことを言っている!この村には冒険者を雇うような資金が残っているとでも思っているのか?バカ息子が!」


 てっぺんが禿げていた白髪の老人は金銭面を心配していたのかジョセフ達をすぐにでも追い払おうと農業用のフォークを持ち上げ襲い掛かりそうな勢いで向かってきた。


 「お前達冒険者ってのはどうせ金の為だけに動いて払えなかったらこの村をほおっておくつもりなんだろう?何とか言ったらどうだ若造が!」


 老人がジョセフに睥睨しながら難癖をつけてきた。


 「爺さん、何か勘違いしているみたいだから説明するけど俺達は無報酬でゴブリンを討伐しに来たんだ。だからそれを下ろしてもらえないか?」


 「チッ、若造が!生意気なことをぬかしやがって…」


 そう言いながら舌打ちをし、農具用のフォークを降ろし後ろを振り向き老人はそのまま舌打ちをしながら自分の家へと戻っていったのだ。


 「すみません、うちの父は数年前とある冒険者に依頼をしたんですけど、組合からこの村では払いきれない金額をを請求されたことが原因で偏屈になっているんですよ…」


 「そうだったんですか…」


 依頼主の男性が深々と頭を下げ、それを見たリサは慌てて頭を上げるように促す。


 「ゴブリンが生息している洞窟だがどこにあるか分かるかな?」


 「ちょっとジョセフ様!」


 「いえっ、大丈夫です。恐らくこの村の北にある洞窟にゴブリンは拠点にしているかと…」


 「ありがとう、それではゴブリンが活動する前に今からその拠点を叩いてくるよ」


 「ジョセフ様、待ってください!」


 ジョセフはすぐさま北の洞窟へと向かい、置いていかれないようにリサ達は必死について行った。


 「ジョセフ様、さっきはどうしてあんなことをされたんですか?」


 「あそこで長居してても時間の無駄だと思ったからさ」


 「だからって、ぶっきらぼうにしなくても…」


 少し心配そうにしていたリサはジョセフの依頼主への態度が不愉快に感じたからなのかさっきの態度について指摘しようとしていた。多分これはリサに限らずテレサ達も思っていたことなのだろう。


 それからというも、沈黙とした空気が洞窟に到着してしまい、ジョセフは一旦足を止めみんなに呼び掛けた。


 「この洞窟にはゴブリンが潜んでいる。だからそこで提案だがマリーの魔法で一気に殲滅しようと考えている」


 「えっ?あたしが殲滅しちゃっていいの?」


 「ああっ、情報によればゴブリンに誘拐されている人間は一人もいないみたいだからな。だが油断は禁物だ。もし誰かが捉えられたらその人を救出することだ」


 そう言いながら暗い洞窟の中に潜るのだが、その前に松明に火をつけデコボコとした地面を慎重に歩いた。


 洞窟の中はほぼ1本道でかなりの距離を歩いたのだが一向にゴブリンの気配を感じないな。もうそろそろゴブリンに遭遇してもいい頃だとは思うのだが。


 そう思いながら歩いていると2つに道が分かれていた。


 「道が分かれているね」


 ジンジャーは声を出した。


 「そう来たか、道理で今まで気配を感じなかったわけだ…」


 ジョセフは顎に手を当てながら少し考え込んでいた。ここは二手に分かれて探索するかそれとも全員で一つずつ探していくか。


 「ここは全員で行った方がいい」


 「テレサはそう思うのか?」


 「二手に分かれてどちらかが危険な目に遭うことだってことだってあるだろう。そうなったときに支援ができるようにしておいた方がいいと私は思う」


 「他のみんなはどうだ?」


 「「「「テレサの意見に賛成」」」」


 「決まりだな。よし、行こう!」


 ジョセフ達はまず右の道を渡ることにした。右の方は段々と下っているのか、急に傾斜が酷くなって足元を踏み外せばすぐにでも転げ落ちそうだ。


 こんなゴツゴツとした地面でこければ間違いなく大怪我してしまいそうだった。ここは慎重にゆっくりと渡らねば命が幾つあっても足りないと思う程に危険であった。

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