第24話 救世主伝説の始まり(その2)
無報酬でゴブリン討伐の依頼を引き受けることになったのだがこのまま雑魚狩り専門で生計を立ててもいいもだろうか?しかし、誰かがゴブリンを討伐しなければ小さな村は滅んでしまう。
異世界に来てからジョセフはゴブリン以外の強敵とも戦ってみたいと思う闘争心が湧いてきている。
ゴブリン討伐に関しては報酬も少なく、ベテラン冒険者にとっては全くと言っていい程にやりがいというものが皆無に等しいため、駆け出しの冒険者が自身をつけるために依頼を受けることが多く、時と場合によっては死傷者が出るなんてことも稀ではない。そろそろジョセフとしても村の一つくらい救って、名を広めていきたいとも思っていたことわけで、これはチャンスかもしれなかった。
流石に報酬は貰えた方がいいのだろうが払えるほどの経済力がないのであれば無理に取る気はジョセフ達にはなかった。
異世界に来てからまともに活躍をしていないジョセフはそう簡単に死ぬことはないと確信をしていた。
マリーがいるのだからいざとなれば魔法で殲滅したらいいのだから。
だが、それはあくまで最終手段であって基本はチームで戦うのをジョセフは原則としている。
その理由としては、個々のスキルアップの為である。
以前に比べたらかなり戦力面も改善された方なのだがまだまだ強敵を相手に生き残れるかと言われたらそんなことはない。
この世界はアニメのようなご都合主義が罷り通る世界と違って順序よく事が上手く回るわけないからだ。
現にジョセフは何度も死にかけたことがあり、考えるだけでも世の中は残酷なものだと痛感できるものだ。
今はこうやって村からやって来た男性と一緒に村まで徒歩で向かっているのだがそう遠くはないため1日もかからずにと到着出来るとのことだ。
草原に覆われている道をもうどのくらい歩いているのだろうか?ずっと歩いているのだが疲労感が溜まる気配が全くない。
ジョセフと佐藤夏樹は自転車とか電車みたいな便利な乗り物が普及している世界の人間としてはやはり徒歩というものはきつく感じることもあるのだが、この世界に来てからクエストとかで歩いたり走ったりを繰り返し行っているからなのか慣れていたのだ。
ジョセフと佐藤夏樹の異世界生活もまだ短いものだがなんとなくそんな風に感じることが多々ある。
「おっさん、村はあとどのくらいで着くか分かるか?」
「もうそろそろ村が見えてくるころです」
佐藤夏樹は男性に尋ねるとそんな返事が返ってきた。
ジョセフは地図を見直すと確かにもうそろそろで村が見えてもいい距離のようだ。
辺りは草原しかなかったのだが地図に書いてある通り、村の名前が書かれている看板と柵が見えてきた。
「着きましたよ、ここが私達が生活している村です。」
看板には"マッシュ村へようこそ"と書かれていた。
村の周辺を見る限りはゴブリンと思わしき小さな足跡、畑の作物を食い荒らされている痕跡等が微々たるものではあったが確認できる。
「みんな、冒険者の方々がこのマッシュ村の作物を荒らしているゴブリンを討伐してくれるそうだぞ」
男性が畑や牧場で作業している村人達に声をかける。
「この村を救いに来た救世主が現れましたか」
ううっ、と村の男性が涙ぐみ、作業をしていた人々も皆一斉に手を止めながら待ちわびた様子で歓声を上げていた。
「冒険者の皆さん、自己紹介が忘れていました。私はこの村で村長をやっているスミスと申します」
ジョセフ達をマッシュ村まで誘導してくれた男性が今更ながら自己紹介を始めた。
「それで村長、ゴブリン達は大体どのくらいの時間帯に来るとか目安は分かるかな?」
「はい、ゴブリン達は日が暮れた辺りから畑を荒らしているようですのでその時間帯に待ち伏せてみてはどうでしょうか?」
「そうだな、それでは少しゴブリン達を討伐するための仕掛けを作ってもいいかな?」
「勿論構いませんよ」
村長の承諾も得ることができ、早速ジョセフ達は畑付近に仕掛けを準備した。
仕掛けの内容は単純な落とし穴だ。
落とし穴には先端の尖った棒を用意することにし、落とし穴にはまったゴブリン達をマリーの魔法で殲滅するという作戦だ。
落とし穴にはまらなかった残りのゴブリン達は当然ジョセフ達が仕留める。
村に侵入させないためにもこの作戦を失敗するわけにはいかなかった。
ジョセフが最近分かったことは佐藤夏樹は弓の腕もかなりあるとのことで佐藤夏樹には村に侵入しようとしたゴブリンを仕留めてもらうために物見やぐらでの狙撃を任せることにした。
無属性魔法に適性があるとは言え、使用できる魔法がジョセフみたいにあるわけではないためここは遠距離での戦闘が適任だと思った。
ゴブリンと言えばジョセフは少数を相手にしかしたことがなかったのだが村を襲うってことは相当な数で来ると考えていた方が妥当だと思っていいだろう。
洞窟とかでの戦闘ならまだ何とかなるのだろうが村の外は広い草原で覆われているため油断は禁物だ。
ジョセフはテレサ達にタダ働きをさせてしまっていることに申し訳なく思っているのだが、今回は接近戦はジョセフが全てやることにした。
そのくらいの落とし前を取らなければ男として失格だと思ったからだ。
テレサとジンジャー、マリーはサッカーで言うところのミッドフィルダーでジョセフが敵陣に突っ込むフォワード、佐藤夏樹、リサ、アイリスはディフェンスて感じだ。
サッカー自体ジョセフはそんなに詳しいわけではないがポジションを考えれば間違ってはいない方だ。
作戦会議の際にジョセフが前線に突っ込むことを話したらかなり怒られたがマリーはその方がいいとテレサを説得してくれたのだ。
「ジョセフ、またお前は無茶なことを考えて!」
「タダ働きを無理にさせているようなもんだぞ、そのくらい当然だ」
「だからってジョセフが一人で敵陣に一人で立ち向かうのは…」
「それならテレサも一緒に行けばいいんじゃね?」
「それいいね、佐藤夏樹案外いいこと言うじゃん!」
「ジンジャー、あんまり佐藤夏樹をおだてるなよ、これは俺がみんなに無理言って引き受けたクエストだ、落とし前つけるためにも一人で行くよ」
タダ働きでジョセフ以外の人間が負傷する必要はないのだ。
無償で働かせて従業員に怪我一つ負わせたと他の冒険者に知られたらそれこそ株が落ちてジョセフは周囲から人間失格の烙印を押されてしまうからだ。
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