8 ジャイアントスパイダー

 森の暗殺者と恐れられるのが「ジャイアントスパイダー」現代語で「巨大グモ」だ。


 体長1メトルから2メトル。

 色は黒に紫のラインが入っている。

 虫型のモンスターで中央の胸部から左右4本ずつ8本細長い足が生えている。

 体は頭、胸、腹と3つに別れている。

 カニに若干ではあるが似ている。

 目は単眼が複数個が並んでついている。白眼や表情がないので、顔がどこを注目しているか分かりにくい。

 戦闘時には相手の顔つきで判断することが困難なので、先を読みにくい。


 虫なのでその外骨格、殻はかなりの強度を誇る。剣なりなんなり、その殻を貫けないなら、ダメージを与えるのは難しい。

 しかし足や胴体の関節部分を狙うという方法で、なんとかダメージを与えることもできる。

 もし万が一、貧弱な装備で遭遇した時は、上記のように細い部分を狙おう。もっとも、見つけたもしくは見つかった瞬間、全力で逃げたほうが身のためかもしれない。


 オスとメスがいるとされるが、定かではない。

 メスは卵を産み、子グモが生まれる。子グモは親よりは弱いが大量にたかられると、ひとたまりもないので卵の跡があるなら、注意深く逃げるなり戦闘を行うほうがいいだろう。


 一番下のお腹の先端から白い糸を吐く。

 この糸には粘着性のある糸と、粘着性がない糸があることが知られている。

 洞窟や木々の間に糸で巣を作る。


 獲物を捕らえると、この糸を巻き付けて巣に持ち帰る。

 場合によっては、生きたまま獲物を捕らえ、ぐるぐる巻きにして保存する習性がある。

 捕まった場合に、保存されるのであれば、助かる可能性もないとは言えない。自力で脱出を試みるのも手ではある。

 脱出が無理だったとしても、救出部隊が助けてくれるかもしれないので、数日間程度は、諦めずに辛抱強く待つことも生存につながる。

 可能ならポーションや水筒で水分を取って、なるべく動かず、体力を温存しよう。


 森ではよく樹上で息を殺して待ち構えており、冒険者の背後から降りてきて襲い掛かる習性がある。

 森の暗殺者「フォレスト・アサシン」と言われる所以ゆえんだ。


 お尻から出る糸は脅威ではあるが、真っ白くてツルツルした一本糸のため、これを「スパイダーシルク」と言って最高ランクの繊維として、衣服などに用いる。

 耐久性に特に優れていて、魔法使いや治療師の冒険者の布装備に珍重される。

 ただし比較的高級品なので、駆け出しなどでは手が出ない。


 殻、甲については、非常に硬くかなりの物理耐性を誇るため、胸当てなどに使われることもある。

 ただし加工が難しいという難点がある。

 硬いわりには金属よりも軽いため、一部の冒険者に愛好家がいるそうだ。


 カニに似ていると書いたが、その脚の身は、焼くと赤くなり食べると本当にカニのような旨味のある味がするという。

 残念ながら筆者は食べる機会に恵まれず、実物を目にしたことはない。

 かなりの味であるという話を複数の冒険者から聞いたことがあるので本当だろう。


 クモ型モンスターの一種に、アラクネという上半身が人型で下半身がクモである亜人系モンスターがいる。

 アラクネとジャイアントスパイダーの関係は不明である。


 モンスターとして扱われるアラクネ以外で、亜人として人類と共に生きている種はいない。


 モーリスト辺境伯領とハデス侯爵領にまたがるバロストア大森林に多く生息しており、モーリストのクエストリアの町ではスパイダーシルクが名産品になっている。

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