5 ゴブリン

 悪名高く有名な嫌われ者といえば「ゴブリン」であろう。


 魔物であり、人型である。体毛がなく、皮膚は濃い緑をしている。

 身長は成人しても120セントメトルぐらいだろうか。

 体は痩せているくせに筋肉質で、細マッチョだ。

 身長や体格に油断して戦闘をすると、思いの外の力に押し負けることがあり、注意を要する。


 人の美的感覚からすれば醜い顔をしており、野生では不潔で酷い臭いがしている。

 ワシ鼻で耳は人族よりもエルフに似て尖っている。

 鳥は水浴び、イノシシは泥浴び、ネコは舌でのブラッシング、さらに言えば人は体を拭いたり入浴したりする。

 ゴブリンはそういうことをしない。

 鼻が悪いというわけではなく、気にしていないらしい。まあ、ゴブリンに聞いたわけではないので真偽は不明だ。

 体毛がないので、ノミやシラミが少ないのではという研究報告もある。


 腰にはボロい腰ミノや毛皮を巻いて生殖器を隠す性質がある。

 ある程度の人間よりは語彙ごいの少ない「ゴブリン語」を話しているようだが、解読はされていない。

 よく「ゴブゴブ、クギャ、フゴ、ギャガギャガ、フガ」のように話している。一見鳴き声のようだが、言語らしい。

 手には木や骨の棍棒こんぼうを装備する。また冒険者が残した錆びた剣や槍、盾を使うベテランのゴブリンが目撃されている。

 このように知能はある程度持っている。


 オスが5に対してメスが1くらいの比率で、メスのほうが珍しい。

 そのため、一部では、ゴブリンはオスしかいないと思われている節がある。しかし誤解である。

 雌雄の違いは生殖器くらいなので、あまり目立たない。

 ゴブリンは人間の女性をさらい、孕ませる性質がある。この過程ではメスゴブリンを必要としないため上記のような誤解があるのだろう。

 実際には多くのゴブリンは人里から離れて生活しているので、人間の女性だけでは、あれほどまで繁殖しきれないと考えられている。


 ゴブリンは雌雄混合の集団を形成して、家のようなあばら家を作り「ゴブリン村」を作る。

 ゴブリンには特定のパートナーはいないというのが定説だ。したがって父親母親ではなく群れ全体で、子供たちの面倒を見るとされる。

 こうなると一気に繁殖し、数を倍増させることがある。

 ゴブリンの性欲は旺盛であると言われている。


 単体のゴブリンとの戦闘は、対人戦のまっとうな訓練や対人経験の多い人ならば、簡単だというのが、もっぱらの評価だ。

 ゴブリンは複雑な思考力をもっていないようで、フェイントなどはなく、直情的に真っ直ぐ襲いかかってくる。ある意味とても素直だといえる。

 ただし、ホーンラビットのような魔物しか相手にしたことがない人は、武器を持った敵との戦闘に慣れていないため、ゴブリンは難敵に見えるそうだ。


 普通のゴブリンの他に、ゴブリンソルジャー、ゴブリンアーチャー、ゴブリンヒーラー、ゴブリンマジシャン、ゴブリンリーダーなどがいる。

 一回り大きく危険なのがゴブリンキングだ。

 これらは上位種とみなされ、脅威度はノーマルと比較すると高い。気を付けよう。


 ゴブリン村を壊滅させるような依頼、戦闘では、敵の数が多いため、驚異度ランクも高く設定されている。


 ゴブリンは雑食性で、魔物や動物を狩るほか、木の実、野菜、野草などなんでも食べる。

 辺境の村では、畑をゴブリンが漁ることがある。


 ゴブリンをテイムや召喚して使役している人もいるが、周りの評判は悪くなりがちで、人気はない。

 ゴブリンをテイムするくらいなら、安い奴隷を購入したほうがいいとさえ、言われている。

 しかし好事家はいてオスは「ゴブ男、ゴブ郎、ゴブ助、ゴブ吉、ゴブ衛門」。メスは「ゴブ美、ゴブ子」などと名付けるのが定番と認識されている。

 なおテイムされたゴブリンは人語を話さないが少しなら理解はしているようだ。多少の命令には従う。


 ゴブリンを一般的に、人間は食用にしない文化である。食べるのは気持ち悪いと考えられている。

 そのため美味しいかは分からないが、もし美味しかったら、ここまで忌避されないか、隠れて食べる人が出てくるだろうから、不味いのだろう。


 ゴブリンは皮なども薄く、利用価値はほぼない。

 ゴブリンの武器は中古武器と同様で、冒険者の遺品でもほとんどは二束三文だ。

 木の棍棒は薪と同じような扱いである。


 ゴブリンは人をさらうことから、特定害獣に指定されている。

 耳、特に右耳を持っていくと冒険者ギルドで討伐報酬をもらえるのが、フィーラル王国では一般的だ。

 値段は地域により差がある。冒険者ギルドの常駐依頼で確認してほしい。


 ゴブリンに似た人族はいない。

 しかし、醜い性格をした人をゴブリンと呼ぶ文化はある。

 もちろん本人を前にゴブリンと呼ぶと激怒されてもしかたがない。気をつけよう。


 しかし伝承には、ホブゴブリンというより大きい上位種がいて、明晰な知性があり、善性で人語を解して人と交流するとされる。このホブゴブリンこそが、人族のゴブリン版に当たるかもしれない。

 創作ではホブゴブリンはゴブリンのただの上位種で悪役の場合もある。

 筆者自身はホブゴブリンとは遭遇していない。存在も不明だ。ただし世の中は未知も多いので、完全な否定もしにくい。

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