種次対風花02と新入部員とフェリスの依頼


 動いたのは風花だった。


 気を親指に一気に一点集中させ、剣柄部分に乗せ弾く。


 風花の練習中の技で縦の一『剣突』。


 火薬でもついてるかのように、爆発的に勢いよく種次に向かう。


 当然、種次も予測していた。


 気が変わると同時に動き出す。


「三手で詰みなのだよ」


 風花の剣突をかわし、次の攻撃鞘の振り降ろしも紙一重で、領域内に入ったが、一手種次の方が早く風花の回し蹴りは届く前に崩れ落ちた。
















「紹介する。風花のサポート役でマネージャーで入部することになったボルだ」


「んだ、農業科一年S組のボブって言うんだな。みなよろしくだっぺな」


 クラブメンバーの拍手でボルは暖かく迎え入れられた。


「マネージャーの詳しい事は風花から教えてもらってくれ。先ほど少ししか見てないが、風花は仕掛けるタイミングが速すぎる。後二メートルほど距離を詰めれば種次も避けれるか分からなかった」


「はい、分かってはいるんですけど、あの時は、未完成の技への不安と、緊張から焦ってしまいました」


「種次は、もう少し自分から仕掛けることだ。自分から仕掛けることを逆算し予測すれば幅が広がる」


「分かってはいるのだよ。しかし、自分からいくと、計算に歪みができる。全くままならないものだよ」


「総括はそのぐらいにして、風花と種次はそこを気にとめた上で俺と模擬戦だ、他は順次やるから俺が出した課題をやるように、よし、続きをやるぞ」


 御影の合図で散らばった。


 二時間ぐらいしたあたりだろうか、人が近づく気配がして、嘆息する。


 またか・・・・・・と。


 それは知っている気配で、バリバリの敵対反応だった。


 扉から現れたのは三人、


 唯我独尊、憎たらしい笑みで、こちらをみるフェリス、申し訳なさそうな剛我と面白くなさそうにジュリはそっぽを向く・・・。


 剛我がずっと御影のことを賞賛しているから拗ねているのだ。


 ジュリもフェリスを救ってくれて、剛我を助けてくれた御影に感謝の気持ちがある。


 しかし意地っ張りな性格から素直になれない。


 剛我は本当は感謝の気持ちを今伝えたかったが、フェリスの『お願い』を知っているため、この場では相応しくないと思い、罪悪感でいっぱいだった。


 本来剛我は義理堅い性格だ。困っている人間がいればほっとけなく、受けた恩はなにかしらの形で返す。


 少なくても恩を仇で返すような真似はしない。


 しかし御影に対し二度もそういう形になった。


 それ以上にフェリスの実家に多大な恩があるため、フェリスの意向に逆らえず、言えるのは進言だけ。


 ストレスで少し毛が多く抜けている。


 そんなことも知らずにフェリスは、渦巻く空気も無視して、我が者顔で御影の近くまで歩く。


「今日は何だ」


 御影は溜息を吐きたいきもちを抑え、とっとと用件を言う様に促す。


 前回来た時は、玲奈と雫を助けた事による感謝金をぶんどる目的で来て、契約者権限とか何とか、なんやかんやいって、ほとんど取っていった。


 どこぞのあれに近い。


 その前に会ったのはフェリス達と行く週に一回あるダンジョン探索で、クラスがあがってHクラスの時より千円アップしただけだ。


 ちなみに0クラスからHクラスにあがったときは五百円アップだった。


 まるで小学生並のアップの仕方だ。


 また禄な事を考えてきたのだろう。


 フェリスの表情は悪魔のような笑みだ。


 その顔が、周りを煽っており、御影は爆発しそうな周りのフォローの事を考えると気が重くなった。


「今日はいい話を持ってきたの」


 こういう切り口は大抵いいことはない。もったいぶっているところを見ると、フェリスに対しては相当『いい』話だったのだろう。


 一体なにをさせられるのやら。


「仕方ないから教えてあげるの。・・・・・・」


 フェリスから発せられた言葉に御影は驚く。


 それは、珍しく御影にもメリットがある事だったからだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る