決着!御影対侵略者
御影は手早く連太郎以外の侵入者三人を突き殺す。
敵の喉を狙った三連突き。
フェリスとラビは御影の後ろで成り行きを見守っている。
ラビとフェリスの部屋は、すでに人が住めるような状態ではなく、天井は壊れ、ものは押しつぶされ、フローニングはあのぼこやへこみが多数見受けられる。
窓は破壊され、吹きさらしだ。
「お前達はそこから動くな・・・・・・死にたくなかったらな」
ここでの戦闘は危険だと感じた御影は、喚くフェリスを無視し、魔法の詠唱をしていた連太郎にタックルして寮外へと移動した。
「殺す殺す殺す」
連太郎は大規模殲滅魔法から、詠唱が早いものに切り替え、火の玉を至近距離の御影に向けて放つ。
それを御影は手で握りつぶし、距離をとる。
早めに決めないとな。
遠くから近づいてくる玲奈の気。
今から約二分で到達する。
雫に任せているが、雫では豪には勝てないと思っている。だから早めに行きたいが、状況がそうさせてくれない。
玲奈が来ればさらに状況がややこしくなり、間違いなく時間がかかる。
だからその前に決着をつけたいところだが・・・・・・。
魔力や気の淀みを探ったがどれも正常で、タックルした時、回復魔法を連太郎の脳に浸透するよう放ったが効果はない。
やはり殺すか。
連太郎はフェリスを殺そうとした。洗脳されてても理由は十分だ。
殺すのは簡単だ。術者の操り人形のため正常な判断はできなく、動きも単調。
そうなった場合、確実に玲奈との戦闘が待っている。
雫を助けるためには、一秒でも早くいかなければならない状況で、かなりの時間ロスだ。
時間をかければかけるだけ雫が死ぬ可能性が高くなる。
まさに堂々巡り。
御影には連太郎を治す方法はあるかないかでいわれれば『ある』。
しかし、こんな『誰が』見てるか分からない場所で使えば、それこそ目をつけられ、仲間に危険が及ぶので、その選択肢は除外している。
仲間が同じ状況なら御影は迷わず使ったであろうが、どんな理由であれダンジョンで玲奈を殺そうと依頼し、御影に対し敵意をもっていた相手を救うほどお人好しではない。
やはり、やるしかないか。
ままならないものだと、一度目を瞑り気持ちを自制し、今度は寮をごと殲滅しようと広範囲高難易度魔法を唱えている連太郎に一瞬で近づき。
「バーストブレイク」
頭を掴み、魔法を放つ。
はぁはぁはぁ。
全速力で玲奈はフェリスの寮に向け走っている。
心臓がうるさいぐらいになっている。
手紙の内容を全て信じたわけではない。しかし胸騒ぎが止まらず直感の赴くまま、今走っている。
なにもないならそれでいい。ほっと胸をなで下ろし帰るだけだ。
しかし、もし内容が事実なら。
準備できてない体が悲鳴をあげているが、前へ前へと進み・・・・・・そして。
「連太郎!」
玲奈が見た光景は、御影が連太郎の頭を掴み、炎が満ちた後、崩れ落ちる所だった。
玲奈は連太郎に駆け寄る。
それは、恋愛としての行動ではなく、幼なじみとしての心配。
玲奈は座り、連太郎の焼け焦げた頭を膝に置く。
「一体何があったのですか・・・・・・」
「俺も全ては知らないが、連太郎は誰かに洗脳魔法で操られ、フェリスの殺害を目的にここを襲撃した。すまない、解除するためにはこうするしかなかった」
御影は簡潔に自分が知っている情報を話す。
「嘘を言わないでください。私は知っています。貴方は連太郎を救えたのに救わなかった。さっきの魔法は炎魔法のはずです。それを使わなくても貴方なら『もっと最良の』魔法があったはずです」
前の私なら、これが『最良』のことだと諦めがついた。
しかし、あの手紙が事実なら、尋ねずにはいられなかった。
「・・・・・・そうだとしたらどうする。今お前の仲間の雫を助けにいく。一刻も争う状況だ。お前にはここを、フェリスを守ってもらいたい。ここをこのままにはしておけないからな。頼めるか」
御影はその問いには答えず、玲奈に頼みごとをする。
雫を助けにいった後、フェリス達を守れるのは玲奈しかいないからだ。
「断ります。連太郎さんをこんな事にしたあなたを許さない」
連太郎は虫の息だった。生きてるのもやっとな状況。
仕方がない。
フェリスとラビを担ぎ、御影は助けに向かった。
「何であんな依頼をしたのですか」
手紙にはこう書かれていた。
ダンジョンで殺そうと依頼したのはお前の幼なじみの連太郎。そして、連太郎は誰かに操られ二十分後に指揮科一年D組の寮を襲撃する。
御影がそこで対峙し、救えるのに救わないまま、連太郎を殺すか、忘却魔法を使って記憶をリセットする。助けられるのはお前だけだ。
「好きだっ・・・たんだ。誰にも渡したく・・・・・・なかった」
連太郎は最後の力を振り絞って伝える。
洗脳は解けていた。
「連太郎さん、喋らないでください」
玲奈は涙ながらに連太郎の手を握る。
玲奈はそう言わずにいられなかった。例え連太郎の魂の灯が消えかかっていたとしても。
「ごめん・・・・・・いままでありがとう」
ようやく言えた。歪んだ感情や憎悪の言葉じゃなく、素直な気持ちで。
連太郎は満足げに逝った。目を閉じるとき出た連太郎の涙が玲奈の太股にシミを作る。
「連太郎さん!!」
連太郎の亡骸を抱きしめ、玲奈の慟哭が鳴り響いた。
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