クラス替え試験~守対魔法科生徒~
魔法科同士の対戦は長距離からの魔法の撃ち合いが主流だ。
相手も距離を取ろうとした。
「求めに応じて、プニ太郎、プニ子、シーちゃん」
三体を召還し、守は相手に詰め寄る。
「これで終わり、ファイヤーボール」
十メートル付近で相手の魔法が完成し、守をおそう。初級の魔法だが、前の守なら当たれば重傷になり、そこで試合が終わっていた。それを相手は知っていたのか、速度重視の魔法を選択した。
「プニ太郎、吸収して」
小さなスライムが、アメーバーの様に伸びて、ファイヤーボールを吸収した。
「なぁ!?」
対戦相手は絶句する。
スライムと言えば、モンスターレベル1の弱小中の弱小、魔法が当たれば蒸発する。
だから守を守るために壁になったときのことを考えて、広範囲魔法を放とうと考えていた矢先の出来事。
スライムが魔法を吸収するなど、少なくても対戦相手は聞いたこともなかった。
守が成長した様にモンスター達も成長し進化していた。
一番初めにプニ太郎が進化した。その時の事を守は鮮明に覚えている。
それは、ダンジョン内で起きた。
プニ太郎が苦しそうにプルプルしだす。
「御影さん、プニ太郎が苦しそうです。ど、どうしよう、どうすればいいんですか?」
初めての経験で守は慌てていた。
「落ち着け守。これは進化する時だ。心配するな、温かく見守ってやれ」
やがて、プニ太郎から光が溢れ出し、プニ太郎の色が緑色の半透明から、黒色に変わる。
「プニ太郎」
守は感動のあまり、涙をポロポロ流しそう口にする。
テイムしたモンスターが殻を破った瞬間。レベルにして一から五に変わった。
人によっては微々たるものだというかもしれないが、確かに最弱だといわれたスライムから脱した瞬間だった。
「プル」
「御影さん。プニ太郎が喋ったよ」
「進化先は無数に存在する。守が望んだ願いを汲み取ってくれたのかもな。何回か進化すれば本当に話すことができるかもしれないぜ」
進化のメカニズムは不明だ。異世界でも解明しておらず、この世界ではいうにおよばすだ。
しかし一説には、進化先はモンスターが決めると言われていて、モンスターとの絆によって進化は違うと言われている。
守は、いつもモンスター達に話しかけていた。
だからモンスター達もそれに答えたいと思ったのかもしれない。
プニ太郎を抱きしめた守は、心底嬉しそうな表情をしていた。
進化したのはプニ太郎だけじゃなかった。
「プニ子粘着液、シーちゃん特効」
プニ子が粘着液を吐き出し、まさかそんなことができると思っていなかった対戦相手は、咄嗟に対応できず足に当たりその場から動けなくなる。
そこに、シーちゃんの頭突きが腹に決まり。
「ぐほっ」
対戦相手は九の次に折れ曲がる。
勝ったか分からない守はモンスター達を一旦下がらせ、注意深く見る。
「死ね、ファイヤーランス」
最後の悪足掻きで、意識を失う前、準備していた魔法を放つ。
昔の守なら、当たったら死んでもおかしくない魔法。
守は確かに攻撃魔法はからっきしでどんなけ訓練してもおそおそとして進まない。
そこで御影は視点を切り替える。その結果守は目覚ましく上達した。
「我を守れ、ウォーターボール・ブロック」
そう、守の才能は防御に特化していた。
守の周りを水の巨大球が覆う。
ステージ二同士の魔法だが、ファイヤーランスは六級に該当する火攻撃魔法で、ウォーターボール・ブロックは五級に該当する水防御魔法だ。術者の熟練度にあまり差がない場合、より強い魔法が勝つ。よってファイヤーランスは巨大球にあたり蒸発する。
「勝者Eクラス深内守」
審判のコールに、会場が騒然とする。
魔法は熟練度と経験がものをいう。
指揮科の次に上流階級が多く在籍しており、幼少の頃から家庭教師を雇い、魔法の訓練をしているものばかりだ。
どの学科よりも最下位クラスからの昇格試験突破の壁は厚く、最初の月以外、途中の月での試験突破は実に五年ぶりの快挙だった。
守は喜びを爆発させ、小さくガッツポーズしモンスター達を労った。
「御影さん」
会場前で待ち合わせをしていた守は、御影を見つけ声をかける。
「試験突破おめでとう守」
御影は優しげな表情で労い、守は嬉しそうな表情になる。
「ありがとう。僕一人じゃなにもできなかったよ。御影さんやプニ太郎達がいてくれたから、ここまで来れたんだ」
いったん間をおき、緊張した面持ちで守は見上げる。
「そっその、僕の方から言うね。御影さんのクラブに僕を入れてください」
「ああ、歓迎するぞ守」
こうして、また一人御影のクラブに加入することが決まった。
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