御影と守~あれから~
~魔法科昇格試験会場~
御影は、自分の昇格試験が終わった後、早々に魔法科昇格試験の観客席に来た。
御影は風花の事を心配していない。勝てるだけの訓練はしてきた。
それに、信頼している。本当に風花は三週間、よく頑張ったと。泣き言一つ言わず、想定の三倍ほどの地獄にも耐えた。
正直御影も驚いた。でも風花はやってのけたのだ。
それは、見に来た人物も同じことだ。
勝てよ守。
僕は大丈夫かな。本当に勝てるかな。
守は不安でいっぱいだった。
そんな守の心の支えになっているのは、仲間のモンスター達と、御影との日々だった。
御影が守を勧誘したとき、守の返答は
「ごっごめん、本当に嬉しいけど、闘うのは苦手なんだ。友達のモンスターが傷つけられるのは悲しい」
そういって守は、もの悲しそうな笑みで断った。
本来守は戦いには向いてない性格だ。内気で優しくて、誰かを傷つけるのを極端に嫌う。
長閑な田舎でテイムしたモンスターと戯れて、畑仕事に勤しみ、一日を終える。
モンスターをテイムするという目的を達した守は転学も考えていた。
そんな矢先の御影の言葉。
最後の踏ん切りがついたように守は、農業科に転学しようと決心するが。
それを見透かしたように御影が口を開く。
「守、最後に決めるのは自分だ。だけど最後に俺の話を聞いてくれ。これはとあるテイマーから聞いた話だ。その人は、守と同じ様に戦いが好きな人じゃなかった。だけどな、その人はその世界で五本の指にはいるほど強かった。その人が言うには、『テイムしたモンスターには自我が芽生える。俺の夢はテイムモンスターの牧場を作りたい。そこでみんなで笑って過ごしたい。色んなモンスターをテイムするために、テイムしたモンスターを守るために、いつの間にか強くなった。
テイムしたモンスターには無限の進化の可能性がある。テイムモンスターが進化する瞬間をみるのが一番嬉しい。自分の限界という破る。その瞬間を見るために俺は生まれてきたと思えるぐらいに』と。俺から言えることは、諦めるのはまだ早い。クラブに入らなくてもいいから、とりあえず俺と修行しないか。守にもそれを体感してもらいたい」
守は、スライムのプニ太郎、プニ子、ワイルドウサギのシーちゃんを見る。
こんな僕でもついてきてくれた仲間。
ダンジョンモンスターをテイムすると、そのモンスターはこことは違う次元の存在になり、死という概念がなくなる。普段は別の世界にいて、契約者が召還することによって出現し、一定のダメージをくらうと自動的に送還させる。
「プニ太郎、プニ子、シーちゃん。強くなりたい?」
プニ太郎とプニ子はふるふると震え、シーちゃんは『きゅー』と鳴く。
そっか・・・・・・と守は思う。
「あっあの、良かったら・・・・・・」
もう一度頑張ってみようと。
それから、御影はクラブ活動が終わった後守の特訓を行った。
ダンジョンに行ったり、テイマーの知識を教えたり、守を鍛えたり。
最初は目も当てられないほど守はなにもできなかった。走らせても三十分でダウンし、武器をもたせての訓練もまともに扱えない。
それでも、徐々に、亀のように徐々に前へと成長する。御影が思っていたとおり、守は努力家だった。天才は一度教えたら修得できる。しかし凡人は何回何十回やらないと形にならない。守は反復練習を一生懸命形になるまでやる。例え深夜になっても、自分が納得するまでやめない。そういう意味でこうと決めたら守は頑固だった。
目標は昇格試験突破。そして守は言った。
「厚かましいかもしれないけど。僕の方から断ったけど、もし昇格試験突破したら、僕を御影さんのクラブに入れてください」
御影の答えは決まっていた。
守の番になり、試験場に立つ。
「守、頑張れ!」
緊張でがちがちになっていた守に、御影は大声で声援を送る。
守は声のした方を向く。御影が拳を握りガンバレのジェスチャーをしている。
来てくれたんだ。ありがとう御影さん頑張るよ。
守はそれに応える。
心強い味方が来てくれた。
自然と固まっていた体が、緊張が収まった。
相手はこれといって特徴のないごく普通の女。
勝利を確信しているのか、さっさと終わってくれとめんどくさそうな表情で立っている。
審判の合図で試合が開始された。
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