クラブ勧誘~魔法科編01~

 Hクラスの授業は三百人ほどはいる大講堂で行われ、Hクラスの人数は新規生五十人にくわえ、Hクラスだけでも留年生は百人ほどいる。


 留年生はクラスが上がるごとに減っていき、Fクラスの留年生は現時点で五十人ほどになっている。理由は、戦闘科の場合、留年生の成績の大半はダンジョン攻略で占めており、よりレベルの高いダンジョンに挑み、負傷して冒険者の道を断たれるものはいいほうだが、最悪死に至り、クラスが上がるにつれ熾烈を極める。


 何故なら留年生は留年生同士クラス替え試験があり、新規生の時より狭き門となるからだ。そして、留年生は三年経つと退学か留年を選ぶ事ができ、その後は一年毎に更新できる。


 Hクラスにいるような留年生はほとんど諦めているような生徒ばかりで、だから人数は多いのだが、ここにくることはほとんどない。よって、講堂はがらがらだ。


 座る場所は自由で、新規生もそれぞれ座る場所によって意欲が分かり、最前列に目垣が座っており、三列目ほどにプゥと風花がいて、最後列で三下はいびきをかきながら寝ていた。


 この場所に御影の姿はなかった。


 何故なら・・・・・・。





「何で私が、くしくし」


「まぁ、そういうな、これで貸し借りはなしだ。それに、お前ももう少し聞きたいことあったんだろう。それに授業風景を見ることも取材の一つだと思うが」


「それはそうですですですけど。なんだかやりこめられているきがしないどもどもないような。第一、新聞部として、奇跡の一日の取材は何回でも代々大歓迎ですけども、アポなし特効って訴えられてもおかしくないレベルですます。只でさえ、最近暁の風当たりが強いのにのに」


 御影は、今日子にお願いをして、案内役として勧誘巡りに同行してもらうことにした。

ぐちぐちいう今日子だが、打算もあり、案内はするらしく、最初の目的地、魔法科一年Sクラスがこの時間授業している、第三魔法演習場についた。


 新聞部の人間は、全クラスの時間割を完全に網羅しているらしく、有力者の情報はプライベートなものから得意な攻撃、各ダンジョンのクリアレベル等々大抵集まっている。まるで歩く、学園〇ィキだと御影は感心していた。


 しかし、せっかく得た情報を載せようとしてもほとんど、上位派閥の待ったがかかり、この間の藤島玲奈謝罪事件も、五大派閥のクラブからまったがかかったと、今日子がマシンガントークで不満を漏らしていた。


 魔法演習場は五つあり、学園内に二つ、外に三つあり、第三演習場は学園から二十分ほど歩いたところにある演習場エリアの一角に存在する。


 サッカー場ほどの広さがあり、下は土で遮蔽物はない。周囲は魔法障壁で囲まれており、中央付近に魔法科の生徒と思わしきローブを着た、二十名ほどの人間が整列していた。


「とえとえですね、現在の魔法科の在籍人数は正規生が四百二十六人留年生が五百人強、クラス割けは六クラスあり、Sクラスは二十名Aクラスは四十名、B~Dは五十名、残りの正規生はEクラスになります。SクラスとAクラスは三年生まであり、Bクラスは二年まであります、一年時にBクラスまで上がれないものは留年生となるみたいすですで。知ってるかもかもですが、二年生からは年に二回、下克上戦というものがあり、二年生三年生の最低クラスから半数が、留年生の上位二十名との入れ替え戦があります。もっともとも、三年生の入れ替え戦は、三月時点で二年生にいたものに限りますすす」


 今日子はいつも懐に忍ばせてある丸秘ノートをパラパラめくり、得意げにうんちくを披露する。


 それを御影は右から左に聞き流しながら、二人は見学スペースに移動する。


 クラブの勧誘や、各方面の視察が訪れることがあるため、演習場には五十人ほど入れる見学スペースが用意されており、御影達の他にも十人ほどの人達がいた。一斉に御影達の方に振り向き、一様に驚いた表情を浮かべたが、御影はわれ関せずでじっと前方を見つめており、今日子はノート片手に集中していた。


 御影達がきて数分ほどで、先生がきた。



「おはようございます」


「「「「おはようございます」」」」


 決して大きくはないが低く響きわたるような声で先生は朝の挨拶を生徒と交わし本題に入る。


「今日もいろいろな方が見学スペースにいますが、皆さん気にしすぎないように。いつも言ってますが、魔法の基礎は制御にあります。制御を疎かにすれば大事故に繋がりますから、気をつけてください。最初は的当てをやってもらいます。三分間半径四メートルに的が出現しますので、どの魔法でもかまいませんので、的を破壊してください。それでは最初は・・・・・・」



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