第二章幕間02~三つの勢力の動向~
~生徒会室~
奥に生徒会長のワンランク大きな机と椅子があり、両サイドの縦列に、三つづ机と椅子が並んでいた。
クラス替え試験最終日の夜、生徒会長は会議で不在、ここには一人しかおらず、他の者には理由をつけて出払ってもらっている。
副会長、目垣一は、とある人物を待っていた。
容姿は種次と瓜二つで、違っているのは眼鏡のフレームの色と種次より少し神経質な空気を纏っていた。
二回ノックの後、少しして三回ノックがある。待っている者の合図だ
「入れ」
一は、重く鋭い声で、入室を促す。会長の席に座り、両肘を机の上にたて、手を組み、その上顎を乗せていた。さしづめここに君臨する王のように、この席が俺の席だと言わんばかりに。
入ってきたのは・・・・・・紙の束を持っている種次だった。
「どうだ、俺達のプラン通りに首尾は運んだか」
「九十五%予想どおりです兄さん。藤島玲奈の人気を落とし、二階堂雫と・・・・・・なるよう誘導し、御影と癒杉教諭を動かし、上位派閥の一つの戦力を削ぎました」
種次はたかなっていた。気分は盤上の支配者のようだ。
作戦会議の提案には裏があった。
それは一と種次が考えた策で、裏向きは、派閥の勢力争いだった。藤島玲奈が所属する派閥は『五大派閥』、種次と一が所属する派閥は『上位派閥』。五大派閥は、文字通り五つからなる派閥で、その下、七つからなる派閥の事を上位派閥という。五大派閥の入れ替えはここ十年で一度しかなく、上位派閥は虎視眈々と五大派閥入りをねらっていた。
しかし、五大派閥はなかなか揺るがない。
学園長、生徒会長、藤島玲奈が所属する『学園長派』
S級クラブトップの現役とOGで有名な冒険者と顧問で構成される『クラブ派』
親が国の上位者で構成されている『貴族派』
この国で有名な宗教『ダンジョン心教』の信者と司祭以上で構成される『教会派』
そして、舞先生の派閥『・・・・・・派』
大抵の事は握りつぶされ、闇に葬られる。一般客や生徒が大勢いるまえでない限りは。
これで、学園長派の糾弾はまのがれないだろう。
これで、尊敬する兄さんに誉めてもらえる。
報告を終え、期待して一の方を見るが、依然として厳しい表情のままだ。
「だからお前は、相手を甘く見過ぎ、どうしようもなく詰めが甘いのだ。癒杉舞を甘く見るなと言っただろ。こちらの思惑などとっくの昔に気付いているさ。その上で見逃されたのだ。なんたる屈辱かお前には分かるまい。おそらく御影も気付いているだろう。まぁいい、結果的にはこちらの思惑通りに事が運んだ。それだけでよしとしようでわないか。それより例の資料は用意したのか」
「はい兄さん」
予想が外れ、少ししゅんとした表情の種次は一に『御影』に関する今まで理解し得た『情報』が書かれたレポートを渡す。
真剣な表情で一がレポートを見て、三十分ほどで読み終わり、一は眼鏡のブリッジを指で上げ高笑いする。
「くっくっはかかかぁ、感謝する弟よ。おかげで私の予測が言っている、ここ一年で、五大派閥の内、二つの派閥が入れ替わり、それを含め三人のトップが入れ替わると。ここからは『御影』を中心にすべてが動き始める。俺は、生徒会長となり、今いる上位派閥のトップとなる。一年後五大派閥と入れ替わるのは俺達だ。お前はひき続き御影のクラブで参謀として裏で操れ。今日のようにばれてもいいが、可能な限り仲間であるよう立ち回れ。こっちが絶対に敵だと認識されないようにしろ。私の理解が言っている、敵だと認識されればまっているのは破滅だと。できるな」
「はい兄さん。全ては兄さんの夢のために。次の指示は」
「そうだな。次のターゲットは・・・・・・」
種次が退出した後。一はおもむろに呟く。
「いるのだろう。貴様に頼みたいことがある」
一方その頃、三下もとある人物に会うため、A級クラブ『夜露死苦』のクラブハウスに来ていた。
構成人数百二十人中、戦闘科が六十五名。内Sクラス十名、Aクラス二十の武道派クラブとして、学園からも一目おかれ、特に部長が代替わりしてからの躍進が著しく、次のクラブの対抗戦ではS級になるだろうと噂されている。
クラブの練習場はC級以上と新規クラブ特権で借りれるが、クラブハウスはA級以上じゃないと借りれない。
クラブハウスは魔鉄筋を使用し、耐久性と頑丈さはピカイチで、魔法にも耐性がある。
ここのクラブハウスは異様な様相だった。
壁にはスラング語が書かれたペイント、窓ガラスは割れており、鉄パイプが散乱していた。
どこぞの世紀末の様な外装だが、三下にはむしろ懐かしかった。
扉を開けると、額から口にかけ三日月の大きな傷跡があり、顔は厳つく狂犬顔。八重歯は肉を切り裂けるほど鋭く、服装はタンクトップに短パンとラフな格好で、至る所に傷跡があり、体は筋骨隆々な大男。
「兄貴ぃ~久しぶりっす」
「おう、直接会うのは久しぶりだな。所であれ持ってきただろうな」
「へっへっへっ当然っす、その辺はぬかりないっす」
三下は種次の目を盗み、・・・・・・で御影の資料と、クラブの練習内容とクラス替え試験の動画をコピーしていた。
これがあるから、三下は前に所属していた族の中で最終的にナンバースリーまで上りつめ、族長にも重宝され、左腕として活躍していた。
「相変わらずお前はずる賢いというか、名前通り三下が似合うって奴だな」
「へっへっへっ自分でもこの名前気に入ってるっすよぉ~」
全く誉めていなかったが、三下は得意げに笑う。
一通りよんだ後、大男はやけに真剣な表情で、三下に向き合う。
「おい、御影とかいう奴こっちに引き込めないか」
「いやぁ~いくら兄貴の頼みでも、無理なもんは無理っす。それに、御影には協力者に顧問の癒杉舞先生がいるっすから」
三下は得意の口八丁で、ここ一ヶ月兄貴のクラブに勧誘できないか模索していたが、結果的に無理だと判断した。
というか、三下の勘が告げていた。自分の手に負える人物ではないと。
「っち、五大貴族の紐付きか。俺が直接出向くしかねーか」
大男はそう判断する。
大男は、クラブ対抗戦に向け戦力が欲しかった。それで目を付けたのは御影だった。奇跡の一日の一人にして眉唾の情報だが癒杉舞に勝った男。是が非でもほしかったが、既に唾を付けられた後だった。
情報だけでは、分からないことが多く、会うのが手っ取り早かった。
「来る日が決まったら連絡して欲しいっす。全力でなにかしら理由つけて、クラブの練習場で引き留めるっすから。それよりも、約束守ってくださいっすよぉ~」
「分かってる。御影と会った後、お前をこのクラブに入れてやる。昔と一緒に暴れようぜ」
「へっへっへっさっすが族長っす」
「馬鹿野郎、元だろ元。今は兄貴と呼べ」
「すいません兄貴」
人っ子一人いない廃倉庫。
夜も更け、いたとしても近くにいないと分からない。そんな暗闇の中、周りを慎重に伺い、プゥは倉庫の中に入った。
ここがいつも指示されている受け渡し場所だった。
きっかけは四月の中旬頃。当時プゥは焦っていた。とある人物を追って入学したが、雲を掴む様に手掛かりはなく、クラス制限でこの学園から出れもしない。ある人物から誘われておりそれを真剣に考え初めていた頃、唯一持ってきた・・・・・・・の形見の愛用のリュックに手紙が入っており、それを見た時、目を見開いた。
「お前の声の事も、村を全滅させた人物についても知っている。今日指定した場所に来い」
そこにかかれた場所は今日きた場所、廃倉庫だった。
迷う事なく、真っ暗の中、一人佇んでいる黒いローブの覆われ、ピエロの仮面を付けた男に向かう。
これで呼び出されたり、ここに来るのは三回目だった。
一回目は、・・・・・・の誘いを断り0クラスに留まること。
二回目は御影が0クラスにきて三日目。指示は・・・・・・。
今日が受け渡し日だった。
「こ、み(これが例の御影の資料だよ)」
プゥが受けた指示は御影の側にいて情報を探ることだった。
プゥは・・・・・・により、何処の機密情報でも・・・・・・にあれば見ることができる。みんなの目を盗んで歩き回り、種次のレポートを参考にして、今知り得た限りのことを書いた。
ピエロ男の息を呑む声が聞こえた。
これはプゥも驚いた事だが、ここに来る前の情報が一切無いのだ。生徒のデータベースにも、御影の持ち物にも、経歴情報が無い・・・・・・出身国すら分からない。
これははっきりいって異常だ。
持ち物には、必ず自身が前にいた場所の形跡があり、データベースには、自国や他国に問い合わせた経歴が乗るはずだ。全部が不明なのはあそこしかない。
分かっていたのか何も言わずローブの懐に仕舞い口を近づけぼそぼそ喋り、闇に溶け込むように消える。
「あ、七(後七回だよ皆)」
最初ピエロ男と会った時、絶対に破られないよう魔法契約を結んだ。契約を破棄した場合、待ち受けるのは・・・・・・だ。
そこに書かれていたのは内容は九回指示に従えば、ある人物の居場所を教える事だった。
正直、御影達との日々は楽しいし、こんな事するのは凄く苦しい。しかし後悔はなかった。だってプゥの信念はいつだって・・・・・・だから。
「ご(ごめんね)」
この涙は誰のために流れたかは、プゥ以外知る由もなかった。
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