フェリスの危機
くそなの、死ねなの死ねなの。
時間は少し遡る。
会議室から出たフェリスは事務科の前に待機させていた剛我とジュリを伴って、肩を怒らせ廊下を歩いていた。
フェリスは苛立っていた。
予定では、御影サイドに攻撃させ、クラブ収益の八割をかっさらう予定だった。
もう少しで、それが叶うはずだった。
あのくそ眼鏡、死ねなの。
目前で、種次がフェリスの思惑を喋ってくれたので、御影側は助かった形だが、フェリスにとってみれば、よけいな事をと、もれなく粛正リストの仲間入りを果たした。
誰かにあたりたかったが、今は親しい護衛しかいないため、関係を悪化させてまで毒をはくのはあれだと思い自重している。
フラストレーションがたまる一方で、どこかはけ口を探していた。
こんな時に限って、・・・・・・は捕まらないの。ほんと役立たずなの。
フェリスは小石でもあったら蹴りたい気分だ。
まぁいいの、絶対五割はせしめて見せるの。
眉間に皺がよった不機嫌な表情で、悪巧みを考えながら階段に向かい。
「フェリス様」
昔から隣に歩かれると嫌がっていたため三歩離れて前後を歩いていた剛我とジュリの焦った声が聞こえ、
気付いたときには、どこか分からない上の階層、頭上から誰かが放った高速のナイフが、フェリスの目前まで迫っていた。
フェリスは目をつぶり、顔を守るようにして咄嗟の回避行動をし、手足が痙攣したようにぶるぶると震え、顔も恐怖心でこあばる。
その状態が数秒続き、体に何も異常がないと見るとおそるおそる目を開いた。
フェリスの体には刺さっておらず、何かが弾いたかのように、足下にナイフが刺さっていた。
「ジュリ! フェリス様の守りを頼む、俺は後を追う」
「任せときな」
ジュリは、フェリスを庇うようにして立ち、剛我は階段を駆け上がった。
しかし、どれだけ階をあがってもそれらしい気配や影は見当たらず、眉間の皺を深くして、上を睨み、フェリスの元に戻った。
「どうだった」
ジュリの問いかけに剛我が首を横に振る。
剛我はフェリスに傷がないか確認する。
フェリスは未だ体が少し震えていたが、何処にも怪我は見当たらず、剛我とジュリはひとまずほっと一息をついた。
「フェリス様、私たちがついていながら、面目次第もありません」
「フェリス様、役立たずですんません」
「そんなことないの、それよりも誰がやったの」
少し震えた声でフェリスが問う。今まで陰口や貶めるための罠はあったが直接命を狙ってきたのは今回が初めてだった。
「すいません、それも分からずじまいでした」
剛我は大きな体を縮こまらせ、恐縮していた。
「私の方からも謝るよ。見つけ次第ぶん殴ってやるよ」
頼もしい二人の言葉をフェリスは半信半疑に聞きながら、歩調を緩め、警戒する。
どうしてナイフがそれたのか、考えないままに。
「どうした御影。なにか面白いことでもあったのか。悪い顔をしていたぞ」
舞先生は御影の表情の変化をめざとく見つけ、ニヤリと笑う。
「いえ、小悪魔のお灸と予防に張った策が成功したんですよ」
「ほう、それはそれは」
悪巧みをしている二人に、他の人物はあまりにもハードルが高い課題に絶句してため、気付かなかった。
「あくまで一週間後の目標だ、とりあえずソロで今は最高何レベルまで行っている? 一番得意な系統のダンジョンだけでいい」
「わ、五(私はノンダンジョン五レベルです)」
「僕は、知ダンジョンレベル八なのだよ」
「私は、ノンダンジョンレベル十」
「私は闘ダンジョンレベル十六だよ」
勝ち誇ったかのようにカティナが美夜を見て、又火花が散った。
「いささか無謀じゃないのか、レベル五毎の壁という言葉があり、五レベル毎にモンスターのレベルや難易度が違う。僕たちが一週間でクリアできるとは到底思えないのだよ」
二人を無視して、種次は冷静な表情で合理的に自分の考えをいう。
種次の言うとおり十レベルのダンジョンは最初の壁とされ、次いで十五、二十と壁が高くなる。
ちなみに、新規クラブのダンジョン上限はクラスの階級によって違い、一年のSクラスの人物がいるクラブは三十レベルになる。二年生や三年生のSクラスが在籍していても年数制限に引っ掛かり入れない。S級クラブでも一学期はどこも上限は同じで、現段階で、ソロでレベル30のダンジョンを突破した一年は藤島玲奈一人である。
今の一年生は、六人パーティーならSクラスで平均十八レベル、Cで平均十四レベル、最下位の0クラスになるとパーティーすらくんでないものがほとんどで三レベルほどだ。
ソロとなると五レベルほど下がるのが相場で、種次がそういったのも無理はない。
それほど、無謀な課題に見える。
しかし。
「ここの空間はとある魔法装置でここでの三時間が現実世界の一時間となる、ということで、今から各自、ソロ最高レベルの一つ上をいこうか」
御影は迫力のある笑顔でそういいのけた。
~とある場所~
フェリスの暗殺に失敗したある人物は、周りに気配がないことを確認し無人の教室に入り込み、とある場所に連絡していた。
「すいません失敗しました」
「・・・・・・」
相手の声は冷淡で、その人物は冷汗を掻いていた。
「はい、必ず今月中には必ず成功させます」
「・・・・・・」
話し合いを終え、その者は、大きな溜め息を吐く。
「ままならないものだな」
誰に向かって言っているか分からないが、遠い目をし何処かに向かって思いは馳せた。
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