初クラブ練習04~御影対カティナ&美夜~


「異常です。狂ってますよ。何で模擬戦なのにここまでしなきゃだめなんですか。種次さんの右手肘までぼろぼろになって、もう学校辞めないといけないかもしれないですよ。そんな権利御影さんにはあるんですか」


 風花は種次を膝枕で寝かし、珍しく激しい怒りの衝動とともにキッ!とした表情で御影を睨んだ。


 風花は、ここに来てから思っており、先ほどの試合から強く思っていた。


 これは練習や修行の類ではない。やっているのは狂人が行っている形容しがたい何かだ。


 三下が逃げ出したのは正解だと思った。


 普通の感覚を持っている人なら逃げ出すだろうと。


 風花も本音を言えば今すぐにでも辞めたかったが、プゥや目垣の事を思うと辞められなかった。


 しかし心の底で風花は感じていた。


 きっとこれが私の壁なんだろうと。


「さっきも言ったが限界を超えないと人は成長しない。人と同じことをやってたら、人並みかそれ以下になる・・・・・・天才以外わな。プゥも種次も出せる力も出し精一杯やった。それを認めず否定からはいるのは侮辱以外の何者でもない。自分の物差しではかるなとは言わないが、これから先もっとひどい修行になる。身が持たないぞ。それと風花に訓練の追加だ、俺が教えた魔法で種次を治してやれ」


 今の種次は軽度の火傷状態まで御影が治しており、外目は酷いが、内部は九割が治っている状態だ。


 それを知らない風花は信じられないといった表情で御影をみた後、舞先生の方を見て、助ける意志はないと感じ、懸命に癒魔法を使おうとした。


 それをしりめに、御影は


「第三試合は、俺対カティナと美夜だ。殺す気で全力でかかってこい」


「分かった。初めての対戦楽しみ」


「師匠、こないだは完敗したけど、今度は簡単には負けないよ」


「私が抜けてるぞ御影」


「勘弁してください。そうしたら審判がいなくなります」


 舞先生の好戦的な笑みを受け流し、御影はゆったりとした構えで始まりを待つ。


「第三試合始め」


「最初から全力でいく。邪魔だけはしないで」


「それはこっちのセリフだよ」


 そうして二人は微笑みあう。


 二人は最初から勝てるととは思っていない。しかしいまだせる全力を出そうと思っていた。例えこの模擬戦で体が壊れたとしても。


「テーア×6」


「万古の叫び~!」


 美夜は限界値より多い身体強化重ね掛け魔法を、カティナは闘気前提のルーレンス流攻撃一の型、後方に気を爆発させ、その反動で弾丸の様に直進する。


 初見ではかわすことが難しい速さのカティナの突きを、余裕を持ってかわす。


 しかし、これはふりだ。カティナもかわされると分かっていた。


「剣舞十八連」


 瞬きする速度で、美夜は乱舞しながら十八回斬檄を放つ。先ほどの六連より成度は落ちるが、速さは比ではない。


 しかし、御影は目で見極め、全てを受け流す。


「いい作戦だ。だが十八連じゃ足りない。やるならこれぐらいしないとな」


 十八回目を受け流した後、背中に回り込み、美夜の技と同じような速度で三十六回拳を叩き込む。


 紙のように吹っ飛び、何回かバウンドした後、壁に激突して美夜は意識を失う。


 残ったカティナは獣のような視線で獰猛に笑う。


 それでこそ師匠だと。


「終の投激」


 カティナ残った全てのものを右腕に集め、大剣御影に向かって投げる。反動で肩が外れ腕が引きちぎれんばかりの激痛がはしるが、奥歯を噛みしめぐっと我慢し、駆けた。


 カティナの魂の乗った空気をも裂けるような投激を、御影はサイドステップで範囲外まで移動する。


 本当は紙一重でかわすか受け流す予定だったが、予想よりも威力があったため、安全マージンをとってそんな選択をした。


「がぁぁぁ」


 そんなわずかな隙を見逃さず、カティナは御影の首を食らいつこうとした。


 御影は体勢不利な状況だったが、余裕がある。


「驚いたぜ。しかし次は相手の気を見ることだな」


 食らいつこうとしたカティナの八重歯は御影の気によって通らず、御影の手刀を首にくらい、突っ伏し意識を失った。


「第三試合御影の勝利」

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