初クラブ練習03~種次対カティナ~


「やりすぎだと思います。おかしいですよ、模擬戦でここまでやるなんて」


 御影が魔法で治した後、風花はプゥを介抱しながら抗議していた。


 模擬戦とは、本気でやりながらも、後に残るような怪我を避けたり、致命傷の部分は寸止めで勝敗を決めるものだと風花は思っていた。


 これまで、姉達やクラスの人の模擬戦を見てきたが、ここまで相手を痛めつけたりつけられたりしたのを見たことがなかった。


 だから、自分の基準で非難した。誰も不満を言ってないにも関わらず。


「本気でやらないと、現時点の自分の強さが分からない。限界以上行わないと成長もない。例え模擬戦だとしてもな。ということで、第二戦だ」


「ごめんね風花ちゃん。私も師匠の意見に賛成なんだ。本気でいくよ」


「すまないな風花。例え勝てない相手だとしても全力でやるのだよ」


 二人は、風花に声をかけ、ポジションに立つ。


「第二試合始め」


 初動が早かったのは、やはりカティナだった。


「とりあえず吹っ飛びな」


 大剣に体重を乗せ、凪ぐ。


 重いカティナの薙ぎを種次は紙一重でかわす。


 これにはカティナも驚きを隠せなかった。


 それなりの速度で放ったものだ。


 0クラスの人物が紙一重でかわせるものではないとカティナは思っていた。


 偶然かもしれないと、フェイントや蹴りを織り交ぜたりしたが、なぜか『紙一重』でかわされる。


 しかし、攻撃はヘロヘロでいかにも素人くさい。


 種次の矛盾したそのスタイルに、カティナはイライラを募らせる。


「ええい、うっとうしい」


 イライラしたカティナは速度をあげ、そのぶん、剣筋が雑になる。


「きついですね」


 種次はかわしながら思考する。


 パソコンの演算処理の如く、カティナの攻撃パターンをシュミレートし、手持ちの攻撃手段を鑑みて、結論する。


 勝てない・・・・・・と。


 種次は御影と逆パターン、つまり入学試験は満点だったが実技試験は最低で、とある『コネ』で0クラスに入った。


 何故かは分からないが生まれつき、相手の攻撃がよめる・・・・・・しかし自分の攻撃はからっきし。幼い頃から訓練しているがついぞあがらなかった。だから、これから強くなって成り上がればいいんだと思っていたが、攻撃が最弱すぎて第一陣に誘われず、落ちぶれた。


 しかし、突然現れた御影という存在。


 種次の攻撃予知とシュミレートをもってしても、開始一秒未満で、負ける相手。こんな人物は初めてだった。


 だから、積極的に声をかけ、クラブの一員になることができた。


 だから、この地位を失わないためにも、種次は負けると分かっていても、飛び込む決断をした。


 つまり・・・・・・。


「今なのだよ!」


 確率は限りなく低い大博打。


 種時は、大振りになったかティナの大剣を初めて懐に入ることで回避し、ポケットからダンジョンの戦利品、購買でも買える安物の火の魔石を数個握り、カティナの腹を殴る。


「リリース」


 暴発するように、種次の拳から火が爆飛び、肘までが消し炭とかす。そして種次は確信する・・・・・・。


「ままならないものなのだよ」


 自身の負けを。種次は激痛に耐えきれず意識を飛ばす。


「あんたは凄いよ、私が保証する」


 カティナの称賛の声が聞こえた気がした。


 玉砕覚悟の種次の一撃はカティナに届いていた。とっさにはった、魔力と気の複合障壁を破り、着ていた一部が破れ、腹部に軽度の火傷を負った。


 カティナは勝ったが、試合に勝って勝負に負けた気分だ。


 相手にもう少し攻撃力があれば負けていた試合だ。いや違うとカティナは自分の思考を正す。


 いうなれば覚悟の差だ。


 カティナは種次を侮っていた。Sクラスの自分が負けるはずがないと。


 弱い攻撃をみて、カティナは勝ちを確信し侮っていた。


 だから相手の捨て身の一撃で傷を負った。


 いつから自分は慢心できるほど強くなったんだ・・・・・・種次の方が余程戦士らしかった。


 種次の敬意と自分の戒めを含めた表情で、気絶した種次の方を向き、一礼した。


「第二試合、勝者カティナ」

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