初クラブ練習01
~第八十六演習場~
そこは普通の教室ぐらいのスペースを空間拡張したところ。
演習場は全部で百ほどあり一~二十はクラス単位の授業で使われ二十一~三十はSランククラブ専用三十一~五十はAランク以上専用、五十一~六十は大規模演習場、六十一~七十五は中規模演習場、七十六~百は小規模演習場となっており、ちなみに御影達が実技試験を行った所はAランク以上の演習場である。
小規模といっても円周二百メートルほどあり、最低限の防壁と何もない強固魔法がコーティング去れた床が存在し、いってみればそれだけだった。
演習場の中でも細かな規約があり、特急と一級はAランク以上専用で二級と三級はCランク以上じゃないとなかなか取れないが、新規クラブ特権として九月までここを借りれることとなった。
簡単な用具室はあるが、管制室もなく色々な設備もない。
まぁ、今はこれで十分か・・・・・・足りないものは自分から出せばいい。
そこには、舞先生を含め、準備体操を終えた、ジャージ姿のクラブの面々の姿があった。
「今日から訓練を始める。まず舞先生と風花を除いた皆には走ってもらう。プゥと三下と目垣はそのまま、カティナと美夜にはこれをつけてもらう」
渡したのは、亜空間庫から取り出した上下のサーポーター各4つ。
美夜は淡々と、カティナはきらきらした表情でつけた。
「重力縛設定三倍」
御影が唱えると、途端美夜とカティナの両手両足が磁石の様にくっついた。
「師匠これどうなってるんですか」
「癪だが同感、動けない」
「それは俺が使っているものと同じものだ、強化魔法や闘気を常に使えば動く事ができるぞ。それでは俺がいいというまで走ってもらう。それでは始め」
五人は走り始め、残された三人は中央付近に座った。
「ほう、最初としてはなかなかいいぞ。で私にはなんの修行をしてくれるんだ」
「その前に、魔法の種類について説明してほしいのですが」
「それなら先生として、風花に答えてもらおうか」
「えっ、私ですか。えとですね魔法はステージ1~5までのカテゴリーに分かれていて、ステージがあがるごとに難易度が増します。
ステージ1:生活、無
ステージ2:火、水、土、風
ステージ3:金、木、炎、氷、雷
ステージ4:錬金、空間、時、重力
ステージ5:聖、光、闇
の十八魔法と特殊魔法と強化魔法の計二十に分類されています。さらに魔法の中でも強さで、十級~特級にわかれています。例えば、火魔法の一級と炎魔法の十級では火魔法の方が強く、光魔法の十級とでは、大抵の場合光魔法の方が強いです」
御影は真剣に耳を傾けながらあっちとの相違点と疑問がいくつか浮上した。
「二つ質問があります。舞先生が使っている回復させる魔法は聖魔法ですか」
「ああ、その通りだぞ。最も歴代で最大の聖魔法でも三級だぞ」
なるほど・・・・・・回復専用の魔法はないんだな。
「もう一つは複合魔法はないんですか」
あっちの世界ではシングル、ドゥオ、トリプル、カルテットと魔法を混ぜ合わせる技術がある。当然混ぜ合わせる数によって難易度は上がる。
二人の反応は劇的だった。
風花は話についていけなくぽかんとしており、舞先生は興味深げに『後で私に教えろ』と眼が物語っている。
いらぬ情報を与えて失敗したなと思いつつもあっちの世界の魔法理論を御影は説明する。
「さっき言ってもらった中で、俺が知ってて言われなかった魔法は、癒魔法と言う回復に特化した魔法だ。同じかもしれないが、俺が知る魔法は、イメージが大切だ。そもそも魔法というのは魔力さえあれば努力次第で全部の魔法を修得することができる」
「その言葉は嫌いです。適正がないものは使えないのが常識です。全部の魔法を使える人など見た事がありません」
「そうだな、私も同感だぞ。俄には信じ難いな」
こちらの世界の常識では、最初に適正を調べ、適正内で魔法を覚える。適正外の魔法を覚えようとするなど無駄な行為でしかない。
だから、御影が言ったことは首を傾げざるおえなく、琴線に触れたのか風花は何時になく不機嫌で、舞先生は続きをいえと急かす。
「それは、無意識にストップをかけているんだ。絶対にこの魔法は使えないと。さっき言ったが魔法はイメージだ。そういう気持ちが、そういう概念が少しでも入ると、使えるものも使えなくなってしまう。最も得意な魔法より威力が落ちるのは当たり前だけどな。さらに言えば、詠唱はイメージを固定するための物で必ずしも必要ではない。最も、イメージ力がない場合や、経験が少ない者はその限りではないがな。強さは俺の所とは基準が違うが、とりあえず今日二人には癒魔法を教えようと思う。手っ取り早い方法か、じっくりやる方法かどちらがいい」
「手っ取り早い方法で頼むぞ」
「私は、癒杉先生が終わってから決めます」
と、二人とも返答がきて、先に舞先生から始めることとなった。
空間倉庫からナイフを取り出し、再度確認する。
「右手の手の平を開いて前に出してください。今からナイフで突き刺して、癒魔法で治します。痛いと思いますが、よろしいですか」
御影は、真剣な表情で舞先生に確認するが。
「構わんぞ」
気も魔法もなにも使ってない状態の手をだした。
舞先生に、緊張や動揺はない。
あるのは、好奇心と信頼だ。
それ以上なにも言わず、風花が息をのむ中、御影はナイフで舞先生の手の平を突き刺した。
「きゃっ」
血が吹き出て、ナイフをつたって床に零れ落ち、思わず風花の悲鳴があがるが、当人同士は、なにも声を発さず、御影はナイフを引き抜く。
「集中して魔法の流れを感じてください。かの者を癒せ『ヒーリング』」
癒魔法:十級:ヒーリング。
〇一部分を治す魔法で、見る見るうちにナイフでてきた傷穴が塞がっていく。
なるほどなと、舞先生は刺された右手をグーパーと繰り返す。
「感謝するぞ御影。何となくこつは掴めた」
そういって舞先生は、感触がなくなる前に指を切っては治しての反復練習を始めた。
「で、風花はどうするんだ」
怯えている風花に御影は声をかける。
風花は目の前の光景にすっかり怖じ気ずいていた。
私は普通の人間。躊躇なくさす御影もそれを受け入れる癒杉先生もおかしい・・・・・・と。
しかし、風花はこうも思う。強い人は向こう側にいける人だと。
人には壁という名の内面で設定した成長限界がいくつもある。
強くなる人間はそれを突破し、弱い人間は越えられない。
躊躇した風花と即答した舞先生。その時点で既に答えは決まっていた。
「・・・・・・じっくりやる方法で」
そう答えた風花は御影の顔を見れなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます