ダンパラ~異世界から帰ってきたらダンジョンがあるパラレルワールドだった~

御影友矢

学園試験編

プロローグ


 昔話から始めようか。


 俺が、異世界に召還されたのは六年前。


 当時は十四歳でまだ自分のことを僕と呼び、成長気前で、小柄でモヤシのような体つきだったた時期。

そこは、剣と魔法、魔物や獣人、エルフにドワーフと、所謂ファンタジーの世界だった。


 召還された場所は、人間が支配する王国。当時の俺は夢見がちでファンタジー好きで、「僕が召還されたらチートで異世界無双し、ハーレムを作るぞ」・・・・・・と、息巻いていた。


 ルックス、知力、体力は十人並で身長も160センチそこそこと平均的、女の子に対し少し引っ込み思案でつき合った経験もない。


 だから騙される。涙ぐんだ王女の言葉に、王に勇者と祭り上げられ期待をかけられ、騎士や貴族の甘い言葉にハニートラップ。


 俺は有頂天となり世界は俺は中心に回っているぐらいに思っていた。死にもの狂いで、最初の一年は剣に槍に弓に武術、あらゆるものを稽古し、文字を覚え、魔法も、必死になって覚えた。


 二年目は成長が著しかった槍と武術に比重を置き、魔法は火、水、土、風の基本魔法の中では風が一番適性が高く、全部使えたが火が一番適正が低かった。金、木、癒、氷、炎の派生魔法の内、癒が一番適性が高く次いで木、炎は二年目の時点では使えなかった。


 使えない属性や適正の低いものはまったく訓練しないわけではなく、だいたい八対二の割合で行っていた。


 理由はいざ相手と対峙したとき、経験しているのとしていないとでは、対処方法や予測に雲泥の差が現れるからだ。


 この頃になると訓練場に設置された簡易宿泊場が俺の寝床で食事と寝る時以外は訓練に当てた。


 三年目からは、さらに実践的な訓練とより高度な魔法修得に移行した。


 ダンジョンや森に行き、モンスターと実際に戦ってみたり、騎士達と模擬戦を行ったりした。最初の方は、おっかなびっくりで、万が一の時のためついてきた、騎士達の補助でどうにかモンスター倒すことができたが、馴れると訓練したことがいき、次々とほふっていった。


 模擬戦がある日の方は、最初から苛烈を極め、朝方から日が暮れるまでひたすらやらされ、刃引きした武器だが、傷をおったり、骨折すると、自分で直したり、魔力がなくなると、近くに控えていた魔法士達が直してくれた。勝つと次の騎士と対戦となり際限がない。倒れたり意識を失っても水をぶっかけられ、薬を飲まされ、時間になるまで終わらなかった。


 魔法の日は、上級魔法の、時、滅、心、 。


 上級魔法は中級魔法など比べものにならないぐらい難易度が高く。失敗すれば対価支払れる。


 そして最上級になると・・・・・・。


 そこから先の一年は記憶が曖昧だ。


 後から聞いた話では操られていたらしい。どうやら薬には幻覚作用の成分が混じっており、眠っているときに、宮廷魔法師たちが心の魔法で精神を徐々に縛っていたらしい。


 それでも、映画を見ているように、脳から映像が浮かび上がってくる。


 ここに書くのもはばかれるぐらいのくそみたいな光景だった。やっと分かったのだ、国のほとんどの人間は俺の事を都合のいい道具にしかみておらず、ものになったらもうけもの、駄目でも捨てればいいぐらいにしか思ってなかったことを。


 でも、助けてくれたのもこの国に住まう人だった。文字通り、命を懸けて救ってくれた。

魔法の反動でしわしわになった顔もあちこち腐敗した体も、壊れてしまった心も元通りに戻った。


「どうして・・・・・・」


 孤児で、無理矢理自分にあてがわれた彼女。


 彼女は魔法の才能はなかったはず・・・・・・ある魔法を除いては。


「・・・・・・勇者様。争いのない・・・誰もが笑顔になれる・・・・・・そんなな国を見たかった・・・・・・」


 最期の彼女の言葉。


 それから二年は激動だった。


 死んだように見せかけ。迷惑をかけた他国に赴き、時間をかけて説得し、変装して国に侵入し、貧民街の約束も取り付けた。


 そして決行当日。


 最後の抵抗かのように、隣接する国々が国境線から進軍していく・・・・・・遠方の国々とともに。

俺を召還した国は、異世界から召喚することによって、次々と他国を蹂躙してきた国で、俺を召還した事で、また国が無くなり、残りの国の数は六つ。


 国土の大きさは、他の国をあわせてもその三分の一にも満たなかった。


 思うところはある。そのことを考えると苦しく胸が張り裂けそうになるときもある。


 しかし今はやるべき事がある。


 二日後、王都周辺に潜伏していた精鋭五〇人。誰もが死を覚悟している。かく言う俺も、この時は成功すれば死んでもいいとさえ思っていた。


 合図は内側からの爆発。


 轟音とともに城壁の一部が壊れ、そこから侵入する。


 後ろは見ない。


 前だけをひたすら見て、王城へと最速で向かう。


 警備隊や常駐騎士は他の者が相手し、城門につく頃には、三十人に減っていた。


 だが、ここまでくれば勝利は目前だ。


 侵入してからわずか五分。


 しかし、俺の姿を確認したからか定かではないが、城門は開いており、各地に行っていて手薄になっているはずが、数えるのもばからしくなるぐらいの兵が一斉になだれ込んできた



 残った精鋭達は俺を円状に囲み、魔法が発動するまで、決死になって守ってくれている。


 俺は集中力を乱さず目を閉じありったけの魔力を込め叫ぶ。


「滅びの風」









「本当に行くのですか?」


 賭けは俺達の勝利に終わった。


 広範囲殲滅魔法滅びの風。


 元々他の国だった場所だ。王子の何人かは各地の戦争に赴いて居なかったが、国王、側室、王女など、ほとんどのは王城に居たため、一瞬にして亡き者となった。

現在、転げ落ちるように王国は領土を失い、国土を十分の一まで減らして、王都も別の場所に遷都となった。残りの王族は二人だけとなり滅びの日も近い。


 内心複雑だが、俺がどうこうすることではない。この世界の事は、この世界の住人がするのが一番だ。俺の出る幕はない。


「おう、戦争もあらかた終わり、戦後処理も大部片づいた。もう俺の出番は終わった。この前話しただろ、長く留まればまた争いの種になる。帰れるなら帰った方がいいんだ」


 今はいいかもしれない、勝利にわき、連日連夜賑わっている。


 その中で勇者の賞賛の声が多い。


 しかし、数年経つと変わってくるだろう。


 賞賛から畏怖に変わり、他の国々も排除するか取り込もうとするかの二択だろう。


 争いの火種になるのはまっぴらごめんだ。


 幸いにして、王都侵攻後、召喚に携わった人物が生きていたため、尋問した結果、使用した魔法陣は送還も可能らしく、魔力を流せば帰れる事が分かった。


 最も、流す魔力は膨大な量が必要で、トップクラスの宮廷魔法士五十人分。それは、俺の魔力でも賄えるが、大事をとって、協力者達が、その担当になってくれた。


 帰ることに対し不安がないわけではない。価値観はだいぶ変わったし、戻った時今の体か、はたまた前のモヤシだった頃の体か、年月がどのぐらい流れているのか、考えるときりがない。


 それでも帰るのだ。この世界のために、ひいては自分の為に。この世界では有名になりすぎた。


 どこへ行っても、人に囲まれ注目を浴びる。


 もう天狗になることはないが、少し息苦しく、又裏切られるんじゃないかと怖かった。歓声が罵倒

に笑顔が憎しみに。


 それに俺は自由になりたかった。帰れば、俺の事を知っているのは千人にも満たない。


 帰ったら旅に出よう。俺のことを誰も知らない土地へ。


 魔法陣の上に立ち、協力者達をみる。皆一様に泣いていた。笑顔を作ろうとして失敗し泣き笑いのもの、膝から崩れて号泣するもの、近くのものと抱き合い泣いているもの。


 しかし最初の言葉以外誰も引き留めない。


 分かっているのだ。彼が苦しんでいた事も帰りたがっていた事も。


 本音を言えば帰って欲しくない。しかしそれはエゴだ。


 彼が言ったとおり自分の世界は自分で守るもの。その事に気づいているから。


「泣いて送られるのはつらいぜ。種は巻いた。それを見届けられないのは心残りだが、産まれてくる子供を皆頼んだぞ。争いに巻き込むようなら、飛んで帰ってくるからな」


 俺は軽くおどけ、周囲の空気が軽くなる。


「じゃーな皆。俺は羨むような良い世界をつくれよ。争いのない平和な世界を」


 拳を高くあげ、精一杯の笑顔を送る。



 ・・・・・・リーシャ、おまえとの約束叶えたぞ。



 魔法陣が光り輝き景色が変わり・・・・・・・。


 最初に見た光景は猫耳だった。


 俺は思う。




 あれっ、地球に猫耳なんていたっけ。

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