運命のパズル

3103

第1話

もしも本当に神様がいて、

運命というものがあるのなら、

私は神様を罵るだろう。



アイツに出会ったことを『運命』以外の言葉で表せるもんなら表してみろ!

運命の相手って、結ばれるんじゃなかったの?


よく見てよ、神様。

アイツのとなりに私、いないじゃん。結ばれてないじゃん。

ずっと一緒にいるのが運命の相手なんじゃないの?

違うの?

話違くない?

何かの間違いだと言ってよ、神様!



たしかに私たち、別々の人と付き合ってたよ?

でもアイツと先に出会ってたのは私じゃん。

タイミングってのもあるじゃん?

でもお互いに、彼氏彼女と別れてフリーになったときに、一度は良い雰囲気になったんだし。


正直アイツの心の隙間につけ入りたくて必死だったよ?

それにアイツも私の気持ちに答えてくれてたじゃん。

アイツとひとつになれたとき、私の心の隙間は埋まって……ちょうどパズルのピースが合わさるような感じで。

それはそれは運命しか感じなかったよ。

でもお互いに余裕がなくて無我夢中で、すぐに果てたアイツは私に「ごめん」て言って。

私はもっと触れ合いたかったから抱きついたよね。

でもアイツは「ごめん」って。


今ならわかるよ、恥ずかしかったんだろうって。

あのとき私はアイツになんて言えば良かったの?

私は嬉しかったのに。

私とで、私にで、私だから、って。

でも男としてのプライドが傷ついちゃったんだよね?


今さらだけど、あのときちゃんと言えば良かったんだよね?「嬉しい」って。



だからって距離を置いて、あげくに私じゃない女の人と永遠の愛を誓うとか、意味わかんない。


そりゃヤケにもなるよね、私だって。

それなりに好きにはなれたけど、私にとって一番じゃなかったあの人と、アイツにあてつけるような結婚をして。

それでもそれなりに幸せな人生を送ってこれたけど、何をしていても、いつも失くしたパズルのピースを必死に探してるんだよ?

それだけ今でも、ずっとずっとアイツが好きなんだよ?


もう何年も、何十年も、欠けたパズルのピースを探して喪失感でいっぱいの、私の気持ちがわかる?!

その間ずっと神様を恨んできたんだよ?



で、神様を恨むのにも疲れてきた去年の年の瀬に、一枚の喪中ハガキが郵便受けに入ってた。


『⚪︎月×日、妻 ●●が永眠いたしました』


差出人はアイツの名前。




ゴメン、神様。

私、あなたを罵りに行けそうもないわ。

正直あの時、私は「ざまあみろ」って思った。

そしてアイツのところに行くために、旦那なんかいなくなっちゃえば良いのにって思ってしまった。

最低だよね(笑)

まあ、ずっと神様を恨んでる時点でダメなんだろうけどね。

だからそっちに行けそうにもないや。



奥さんが亡くなったからって、この先アイツとどうにかなるなんて思ってないし、そもそも家族や安定した生活を捨てる覚悟もないし。


こんな私にはバチがあたるだろう。眠るようには逝けないだろうし、行き着く先は地獄だろう。


昔習った教科書に載っていた話のように、助けたクモが糸を垂らしてくれたとしても、きっと私も他の人を蹴落とそうとするに決まってる。



だから神様、生きてるうちにあなたを罵るわ(笑)

運命の相手だと思った人と、永遠の愛で結ばれないのなら、めぐり合わせてくれなくても良かったのに。意地が悪いんだね、神様って。


嘘つき。

嘘つき。

嘘つき。


アイツのことが忘れられないのに、あの人と永遠の愛を誓った私の嘘つき。

私みたいな嘘つきに、運命の人を充てがうなんて、意地が悪いよね、神様も。


バーカ。

バーカ。

バーカ。


運命だと思い込んだ私がバカだっただけ。

きっと私は正解だと思い込んで、全然形の違うピースを無理矢理はめ込もうとしただけなんだよね?



今後、最期の日を迎えるまでどうなるかはわからないけど、残りの人生は大切に過ごすから。


もし次があるなら、今度はわかりやすいピースで作ってよね。意地悪しないで。


ね。神様。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

運命のパズル 3103 @3103

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る