女黒騎士と耽美なるパラノイア
猿市羽居 かめ
第1話 notagain(二度とない)
女黒騎士と耽美なるパラノイア
猿芝居かめ
この物語は1人の 老爺ヒーラーとダイナマイトバディな女黒騎士の壮絶な人生を描いた魂のレクイエムである。
「ん?俺は、たしか学校に・・・あれ?ここは、どこだ廃墟?
なぜ俺はこんな怪しげな建物にいるんだ。」
――――謎すぎるだろ
俺は、自分の置かれた状況を確認する為、周囲を見回そうとした。
「!!―――」
ふと、体の端々に湿り気を感じた。
「ぬわっ」
どうやら、その感触は体の下からくる様だ。
「何だ??床に、」
目を自分の足下にやると
そこには、怪しげな円、読めない記号。
「これ、魔方陣だな・・・」
どうやら、その上に俺は寝かされていて、
陣は体の上にまたがって描かれていた。
さらに、体にビチャビチャと違和感を感じた。
「うわ、キショ」
それが何なのか考えた。
それは恐らく、
鮮血で文字られた魔方陣が原因だろう。
蒸せる鉄の匂いと、
異常な強い赤さが
この状況を証明していた。
「うっ・・・」
俺は震え出し、
ただ、ただ、この空間に禍々しさを感じていた。
恐怖で早くここから立ち去りたいと思った。
立ち上がろうとした、瞬間。
「なッ?」
魔方陣の中にへたり込む。
体が動かない??
「くっそ、立てない。こんなに意識は、はっきりしているのに・・・」
咄嗟に出た言葉。
そして、声だけが建物に反響していた。
自分の声なのか。
いやに、 嗄れ (しゃがれ)た声に聞こえた。
こんな場所だからなのだろうか?
―――微かな痛み。「ん゛」
また、感覚が教える、
今は、どう足掻いても目を動かすだけの力以外は体に残っていないのだ、と。
どうにか心を落ち着かせようとして咄嗟(とっさ)に、声が漏れる。
じわりと静寂の中に響く、
ジジィの様になってしまった俺の声。
「う゛―――鉄臭さと湿気がすごい、怖ぇよ、何なんだよぉ、俺、体変だし。死にたくない....こんな、こんな」
―――――ガシャーーーン
非常に大きな物が落下する金属音が聞こえた。
「あ、あ、あぁ...」
俺は声無き声を上げるだけしかできない。
とても、非力だ。
《ガシャン》《ガシャン》
重厚感がある音が猛スピードで迫ってくる。
理屈では説明がつかない状況。
でも本能で、ヤバイもんだと言う事は分かる。
死を覚悟した瞬間だった。
――異様に甘い香りがした。
真っ黒い影が俺に被さり、
甲高く粘りつく声で俺を正気に戻した。
『ロウシッ!やっと、目覚めたのか!!』
死んでない?
『ハ―――――――――』
安全、なのか?
『私が、この日をどれだけ待ちわびたか・・・』
そこには、呆れた顔をした、背の高い女が立っていた。
女は漆黒の鎧に身に纏い、
腰までサラリと伸びた真っ直ぐな黒髪。
その足元には背丈程の大剣が投げ捨てられていた。
鋭い眼差しは、瞬き一つ無く、初めから俺を真っ直ぐ見ている。怖い。
急に体が浮き上がる。
「!?うわっ」
《バサッ》
俺は女に軽々と持ち上げられていた。
「は、離ッ.......」
両脇を捕まれて、
プラーンと宙吊りになる。
『ロウシ、私は待った。
あの日、 蘇生術(そせいじゅつ)を試み2年だ。この場所で魔神に祈りを捧げ続けロウシは生き返ったのだ。』
女は傲慢な笑みを浮かべた。
『案ずるな。私は変わらずだ。』
「ちが、あ、俺は・・・」
何なんだよ。何言ってるんだよ。違う。俺は、そんな奴じゃない。
...話す隙が無い...
『・・・ロウシよ、まさか死にたかったとは言うまいな、永遠(とわ)に共に生きようと交わした約束は違えさせぬからな。』
女は、ゾッとする様な顔をしながら俺を見た。
「ヒッ――――――――」
《ボタボタボタ―》
その狂気に、気が付けば失禁していて・・・・。
逃げたい。誤解を解きたい。
帰りたい。忘れたい。
俺の思考はグルグル回っていた。
あぁ―――――――――――
とにかく、とにかく、話をしなければっ。
「いや、・・・俺は代田史牢(シロタ シロウ) 14歳だ、まだ、その、約束とやらを出来る年でも無い。だから人違いだ。」
女は俺の顔を5分程見つめた後に意味深な表情をしながら、
とても悲しそうな声でこう言った。
『guten morgen (グーテン‐モルゲン )ロウシ・・・魔神の鬼跡(きせき)をお前に。』
そう、言葉を発し俺に跪(ひざまづ)いた。
次回へ続く。
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