(四)‐2(終)

 私はそう言った後、血まみれになって横たわっている女の腕を掴んでベッドから引きずり下ろしてどかした。身長が低く体重も五〇キロ少しくらいしかない体だったが、すでに肉の塊となった体は重かった。あなたが連れ込む女だから、きっとカワイイ子だったでしょうね。今は以前の容貌が全く想像もできないほどになってしまっていたけど。

 女の体を床にようやく放ってから、私は床に血まみれで倒れている彼を抱き起こした。そしてベッドへ乗せようとした。でも重くて持ち上がらなかった。目を見開いて天井を見つめたままの彼の顔に、私は顔を近づけた。

「プロポーズまでしておいて、他の女と寝るなんて……。お仕置きよ」

 私は彼の腹に刺さったままになっている包丁を左右にぐりぐりと回した。

「絶対に許さないのだから……。二度としないでよネ」

 そう言って私は、彼の頬に手を添えて彼にキスをした。


(了)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

あなたの部屋で 【い-14】文学フリマ京都_筑紫榛名 @HarunaTsukushi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画