第10話 皆と仲良くなろう(坂本百合編)
授業が終わり、俺は頼まれた書物を持って職員室に行こうとした
すると坂本さんが無言で俺の持ってる書物を半分持ってくれる
どうやら一緒に運んでくれるらしい
「あ、ありがとう坂本さん。助かるよ」
俺が話しかけても振り向きもせずスタスタと歩いていく
・・・・なんでこの人こんなに無口なんだろう
俺たち二人は特に話すこととなく(話しても一方的)
先生に書類を渡すと先生は物珍しい顔して俺と坂本さんを見る
「なんだ?もう仲良くなったのか?」
「え?いや、私は仲良くなりたいんですけど坂本さんはそうじゃないみたいで」
俺と先生が話してる間に坂本さんは機嫌を損ねたのか
すぐに職員室を出てしまった
「悪いな。彼女は戦争を経験してからあんな調子なんだ」
「え?戦争を経験って、坂本さんあの地域に居たんですか!?」
「そうだ。数少ない、戦争で生き残った一人だ。戦争で生き残った者は体の部位に火傷を負っているらしいな。彼女にもあるはずだぞ」
体の部位に火傷。俺は背中全体に大きな火傷跡がある
お湯を当てるとまだ痛いけどそれ以外は別に不自由はない
彼女にもあるのか・・・・これはどうにか話をしたい
俺以外の生き残りは初めてなんだ
俺は美和子のおかげで精神を保っているが
塞ぎ込んでいるなら俺が救わないといけない
俺は美和子に助けられた時にそう教えられたから
気持ちが分かるのは戦争を体験した俺しか居ないと・・・・
俺は職員室に出ると莇さんとすれ違った
「あら?そんなに急いでいかがされました?」
「坂本さん見てない?」
「百合さんなら先ほど中庭で見かけましたわ♪」
「ありがとう、荷物持ってくれたからお礼言わなきゃ」
「あまり話しかけないのをオススメしますわ。彼女の話すところは今のところ誰も見ていないそうですから」
「何故そうなんだろう、莇さん知ってる?」
「学園長の話によると弟を目の前で亡くされて以来、毎日その夢を見られてるそうですわ。私も気を遣って話しかけてみましたがあまり好意的には見られなかったです」
莇さんからその話を聞き、さらに共感できる気がした
なにせ俺は、目の前で父が死んだのだから
・・・・あまり思い出したくないが、この際彼女の為に全力を尽くそう
莇さんにお礼を言ってから中庭に行くと
坂本さんが綺麗な姿勢で本を読んでるのが見えた
俺が来ると少し目線を上げてこちらを見るが
すぐに本に目線を落としてしまう
「ねえ坂本さん、話聞いたよ。戦争経験したんだって?」
俺がそう言うと恐ろしい目つきでこちらをにらみつける
おおう・・・・蛇に睨まれたカエルの気持ちがよく分かった
だがここで引いたらいけない!
「皆心配してたよ?」
俺がそう言うと坂本さんは立ち上がり
スタスタと何処かへ行こうとする
俺はどうにか手を掴み食い止めるも振り払われる
「貴方達に・・・・貴方達に何が分かるの!!!同情なんてしないで!」
「・・・・同情じゃない。私も。その場所にいたから」
俺はそう言って背中の火傷を少し見せる
これが証拠だよ、というと坂本さんは頭を抱える
「そう・・・・だったのね・・・・ごめんなさい。私・・・・」
「気にしないで。私も目の前で父を亡くした。けど塞ぎ込んでる訳にはいかない・・・・話聞かせてくれる?」
俺がそう言うと少し悩んだ末コクリと頷いた
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます