第112話 君ら何してんの(作者全力のツッコミ)
ちょっと、タイトルでツッコミを入れざるを得なかったんです……
≡≡≡≡≡
「……んぅ?……はっ」
寝ぼけ眼の春来、復活。
窓から覗くのは夕日どころか夜闇である。
しかし旧生徒会室は明るい。
「ふぁ………あれ?」
しかしそこでふと何かが目に入る。
大きめな机に突っ伏す黒い何か。
叶恵である。
「すぅー……ふぅー……すぅー……フフフフフフ」
「!?」
急に気味の悪い笑い声を出したために春来がビクッとする。止めれ。寝てるからどうにもならんけども。
ついでにモゾモゾ動くのも止まってやってくれないと……春来がホラー映画苦手な人が肝試しで驚かされた時みたいになってるから。
「んむ………るせぇ」
……寝ててもバレるの?どうにもならんじゃん。勘弁してくれん?
……ゴホンッ、失礼致しました。
そのまま立ち上がろうものなら砂嵐とともに現れる井戸から召喚されるあの人みたいになるのは確定。しかし当人は目覚めず。そして
……誰か何とかしてー。
ガタッ!
途端、叶恵の体がビクッと震える。
春来もビクッとする。
どうでもいいが、叶恵はこの時、夢で足を踏み外した。よくあるやつである。よって現在、目覚め掛けの叶恵は冷や汗ダラダラである。どこから足踏み外したのかは全くもって不明である。
「あ、あぅ……えっと……えぇ?」
どうすれば良いのか全く分からない春来。
声を出すも完全にコミュ障のそれである。
ついでに脳裏には夏のキャンプもとい野宿の夜が出てきてたりする。なぜ室内なのにそっちが出てきたのかは甚だ不明であるが。
「えっと……か、叶恵、さん?」
しかし何とか声をかけた春来である。既に目は涙目。何故だ。
「ん……むむむむむ…………ぁ………あと五分」
「あっ!?」
ようやく目を覚ました叶恵。そっと顔をあげればドアップで春来の顔。見慣れてるはずなのにも関わらず、不覚にも胸が跳ねる。ついでにガタッとした時に机の端にぶつけた爪先をもう一度ぶつけて悶絶寸前。若干同情心が湧く。
そして目を逸らして寝坊した高校生のようなことを口走る。いや、確かに高校生男子ではあるけれども。
「叶恵さん?起きてください。怖いです。お願いしますから起きてください」
そう言いながら叶恵の後ろに回ると体を揺すり出す春来。
諦めた
この間二分。夫婦か。
「「……………」」
そして流れる沈黙!
初々しいカップルじゃないんだから早く家に帰れ!七時回ってるぞ!?
……ゴホンッ!えー、大変不適切な発言がありましたことをお詫びします。
「……春来」
「はい」
「寝てた?」
「ぐっすりと。怖かったです」
「え、何……あー。なるほど、
自身の髪をつまみあげる叶恵。これが机の上にどっさり乗っていれば某ホラー映画の大御所の方のようになるだろうと納得。
「……帰るか」
「…………ちょっとだけ掴まってても良いですか?」
「え゛」
時計を見た叶恵のやっべぇ高野に殺されると言わんばかりの提案に、春来が驚くべき提案を重ねる。恐らく怖いからで他意はない……のか?わからん。
「その……怖いので」
(確かに怖いのもあるんですがそれ以上にもう少し近くにいたいというかなんというかうーーーー!)
……珍しく心中乱れてらっしゃる。
実は、春来、星華祭が終わった直後に恋愛相談部に入部。意地でも叶恵と一緒に帰っていた。どういう心境の変化か、以前よりも物理的な距離が近いようにも見えるのである。
弊害としては……
「紅葉、一緒に帰らない?」
「すいません、夢乃さん。部活がありますし、その……」
「そう……深くは聞かないわ」
「ありがとうございます」
「あの貞子を退治すればいいのよね?」
「違います!?」
「……ちっ」
「…………聞こえてるぞヘタレお嬢様」
「はぁ?何か言ったかしら中性童顔」
「はっ!高慢空回り女よりはマシだなぁ!」
「何よ!」
「やるか?ん?売られた喧嘩は買うぞ!」
「お前ら黙れっ!騒がしくてこっちがゆっくり出来ねぇ!」
「あら〜、気にしたら負けですよ青野さん〜」
「いや、そうは言ってもな……」
「ん〜」
「あの、倉持さん?どうしたのかしら……っ」
「………あ」
「わかったようなら良いけどね。ボクと宏敏の時間を邪魔しないでくれるかな?」
「「申し訳ございませんでした」」
……こんな感じである。
ちなみに
とまぁそれは置いておいて、要するに王小路が煩いのである。叶恵にヘタレと言われているのはなんだかんだと未だに和之を諦めきれてないくせに雫にアドバイス送ったりするからである。叶恵やら春来やらで繋がりができたそうだが、雫が偶に王小路に「お姉様」と言うらしく、叶恵は爆笑して殴られたとのこと。
どうでもいいような話である。
さて、回想はストップして現実を見よう。
場所は定番駅前大通り。
春来が叶恵と、腕を組んで歩いている。
傍から見れば美少女と美少女の百合、もしくはじゃれ合いのようにしか見えず、そして時刻は午後七時半を回っている。つまりは、
「おっ、君ら可愛いね〜。ちょっとお兄さんと一緒に遊んでかない?」
などと言う輩も湧かない時分である。そーいうのは夜も深けてから、と言うやつである。いたとしても叶恵に見えない位置を殴られるなり蹴られるなりで終わるだろう。南無。
「………えへへ」
そんな特別でもなんでもない場所と時間で、冷えてきた空気に鼻の頭と頬を赤らめた春来が少し笑う。
「……ん?どうかしたか?」
叶恵も似たような状態で、ほぼ真横にある春来の顔を覗き見る。寝起きは驚いても、普段ならこれくらいは大丈夫なのである。
「少し嬉しくて」
「???」
駅前大通り。十二月の中旬とも来れば、多少のライトアップがある。植えられた木に巻かれたLED群が暗さを払う中、
「……ふふっ」
「………ちょ、恥ずっ」
「ちょっとだけ、です」
固まった氷のような
帰宅後。
「うわぁぁぁぁん。楓ぇ、お姉ちゃん、頑張ったよぉ!」
「え!?何!?何があったの!?」
(はぁ、はぁ、お姉ちゃんが、お姉ちゃんが私に抱きついてる!ふへへへへ……今日は添い寝確定だぁ!)
≡≡≡≡≡
本当、何してんの君ら!?
毎回毎回メインの人達置いてってさぁ、本当、はぁ……まぁいいや(思考放棄)。
最後に春来が何をしたかはご想像におまかせします。変なことはしていないので大丈夫です!
亀さん亀さん!出番取られてますよ!
ってめちゃくちゃ言いたいです。
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