第57話
※呼び方がゴチャついてます
黒峰=旬=生徒会長
秋穂=副会長
≡≡≡≡≡≡≡≡
「やぁ、歓迎するよ!」
六月十九日金曜日午後四時、現生徒会室にて。
叶恵と春来は、歓待を受けていた。
「すいません、ちょっと意味不明すぎてストレスで顔面かち割りたい気分なんですけど質問よろしいですか?」
「お、おぉう、どうぞ。(物騒過ぎない!?自分で選んどいてなんだけど!)」
ニッコリ笑顔できれている叶恵である。どれくらい怖いかと言えば、横に立つ春来がチラチラとご機嫌伺いしたくなる程度には恐ろしい。当然、黒峰もプルプルと震えている。哀れである。が、自業自得でもある。
忘れた頃に来るキレ症、ダメ。絶対。
「んじゃあ遠慮なく──なんで俺ですか?生徒会なら俺が部活あるの知ってるでしょうしどういう内容かも知ってますよね?」
「あ、あぁ。勿論、知っているよ?でもさ、代わりがいないというかなんというか」
「ダウト」
「酷くないか!?」
哀れを通り越して可哀想な生徒会長、黒峰。心に罅が入りそうな勢いでダメージが入っている。
「代わりいない?なわけないでしょう」
そこに叶恵が追い打ちをかける。尚、この間春来は無言で叶恵をじぃ〜〜っとみつめていたりする。
「代わりいるはずですよ」
「へぇー、た、例えば?」
冷や汗ダラダラ生徒会長、黒峰。自分で選んだくせして間違えたかもしれないなぁと現実逃避を脳内で始める始末である。横に立つ秋穂の視線が痛そうである。凄まじく冷めた目であるが故に。
「倉持さんとか、王小路のお嬢でしょ?あとは庶務「雑務ね」あ、はい。で、雑務は青野とか丁度良いでしょうし、会計なら数学化け物な奴の一人や二人は当てがあります。書記なら和之の字とかお手本みたいに綺麗ですし……ほら、いくらでもいるじゃないですか」
「うん、個人のスペックだけで見るなら、そうだね。確かにいる」
「じゃあ」
「でもね」
ニヤリと笑う生徒会長、黒峰。調子を取り戻したのかもしれないが調子に乗ってはいない。乗ってはいけない。
「生徒会長に一番大事なのは何かって聞いたら……君はなんて答えるのかな?」
眉を顰める叶恵。キレた訳では無いのでご安心を。
横の春来は立ちながらにして船を漕ぎ出していたりする。それでいいのか聖女様……ああ、ああ、うっすらと鼻ちょうちんが(ありませんよ)はい、出てません大丈夫です気の所為でした!
……ゴホンッ
俯き、左人差し指で顎を抑えながら無言を続けていた叶恵が、顔を上げる。そして一言。
「人脈」
「うん、その心は?」
叶恵の言葉に満足そうに頷いた生徒会長、黒峰 旬は、続きを促す。
「教師との連携ができなきゃ行事関係は軒並み死ぬし、ある程度カースト上位の生徒たちと知り合えていたらそれだけでそのグループには目が届く」
「そうそう。なんだ、やっぱりよくわかってるじゃないか」
「………?」
どこか含みを持たせた言い方に首を傾げそうになる叶恵。しかしそれをしてしまうと何となく負けたような気になると、我慢である。
「会長、そろそろ」
「ん?あ、そっか。ねえ二人とも」
「はい」
「ふぇ?あっ、はい!」
秋穂に声をかけられた旬が思い出したように声を上げる。そして叶恵をじぃ〜〜っと見ていた春来聖女様は焦って変な声が出た。恥ずかしさで爆発寸前である。
「………ふふっ(可愛すぎて死ねるんですけどこれ)」
……こっそり副会長が笑っていたことは無視である。残り三人はずっと無言だが寝ているだけでちゃんと居たりする。
「紙袋、持ってる?」
すぐ横だったために聞こえているはずなのだが完全に無視して見せた旬である。
無言で手元にある紙袋をかざしてみせる二人にまたもや満足そうに頷き、
「その中身、腕章とバッチだから。これからよろしくね」
グッとサムズアップしながら、そう言うのだった。
*
「あいつ殺す絶対殺す人の都合無視しやがって次会ったら覚えてやがれ……」
さて、現在生徒会長に対して猛烈な殺意を滾らせている叶恵である。発言が非常に物騒である。
「い、伊吹乃さん?えっと、えっと……落ち着きましょう?」
それをオドオドしながら諌めようとするも言葉が見つからずに当たり障りのないことしか言えない聖女様である。
非常に不憫である。
こんな時でも聖女様はやはり優しい春来なのである。
「ん……んー、でもなぁ。あんなにド直球に言うか?普通はさ、こう……じわじわその気にさせていくと言うか……」
どうしても生徒会長を悪者にしたい叶恵である。こちらは非常に残念な奴である。
「それは、確かに……」
そして同意しようとしてしま……ん?今何て「でも!」あ、良かった。春来までそっちいったらダメでしょうに……………………ゴホンッ。失礼しました。
「生徒会長も悪い人ではないと思うんです!」
「双子の妹を溺愛して彼女にしてるような人だが?」
「え?」
流石は叶恵、この手の情報には下手な情報屋よりも強い。
「ま、それはどうでもいいんだけどさ」
「は、はぁ……」
困惑の春来聖女様。流石の驚愕的事実に脳みそが半分停止しているようである。口がポカンである。
「これさ、どうする?」
掲げたるは紙袋。内心でこの中身をBBQの火にでもくべたい叶恵である。
「私は……入ってもいいかと」
未だ呆然としたような雰囲気の春来であるが、受け答えははっきりしている模様。
そう、実際問題、春来にとってはこの生徒会入りの打診は何のデメリットもないのである。
強いて言えば自宅でダラダラする時間が減る位だがそこは流石の聖女様、家で最初にすることは毎日毎日飽きもせずに抱きついてくる妹、楓をさばくことから始めるのである。 帰るのが遅くなったところでそれは変わることなど、かのドシスコンにあるとは思えない。
しかもその後にしても、夕食を作ったり、楓の面倒を見たり、風呂に入ったり、楓の面倒を見たり、その日の復習をしたり、楓の面倒を見たりと………半分が楓関連……だと……
それはさておき、どちらにせよ、春来に断る理由は対してないとのこと(本人談)。
しかし、叶恵はそう簡単にはいかないのである。
「まあ、どちらにせよ俺は部活あるからな」
しかも現在進行形で進めなくてはならない案件が実質一つだが、一応二つである。高野との約束違反すれすれだが、既に朝の段階で言いくるめは終わっていたりする。
「そう、ですよね……」
そんな叶恵の超どうでもいい事情は置いておくとして、予想できていた叶恵の答えに少々悲しげに俯いてしまった春来が問題であり、
結局その日は何も決まらず、叶恵の仕事も何もできずに帰宅となったのだった。
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