慧君は間違えない
あいもめ
寝起き
私、
私の部屋の窓には時間になると勝手に開くカーテンがあるからだ。
なんでも、起きたい時間に日光が当たると気持ちよく目が覚めやすいとかで、それを知った頃から毎日こんな起き方だ。
しかし、今日は日光が当たらなかった。
「ん……」
それでも私はいつもどおりの時間に目が覚める。
日光の意味がない気がするが、これは長年の習慣の賜物だ。
人間状況が少し変わったくらいで起きる時間がそうずれることはない。
「おはよう、美咲」
「ん……慧?」
意識が霞がかった状態だったが、それでも幼馴染が分からない程ではない。
「……って、何してるの!?」
しかし、状況を理解するにはやや時間を要した。
私の幼馴染である
そのまるで襲われる寸前の体勢に理解が追いついた私は激しく動揺した。
「女にこうされると男は喜ぶらしい」
「私は女だよ!?」
慧は私にこんな事をした理由を話している。
しかし、意味がまるで分からない。
「で、人にされて嬉しいことは相手も嬉しいはずだから、逆でも嬉しいはず」
だが、説明はまだ終わりではなかったようで、聞き終わってようやく理由を理解した。
「えーっと、されて嬉しいことは人によって異なるからこういうことはしちゃダメだよ」
私は慧に思ったことを伝えた。そうしないとまたされるからだ。
「美咲は嬉しくない?」
「それは……」
本音を言えば嬉しかった気がしないでもないが、それを口にするのは
「じゃあ今度は美咲がやって」
「え?」
私が黙っていると、慧は私をベッドから追い出し、入れ替わりで横になった。
「じゃあお休み」
「ちょっとまってよ、何普通に寝始めてるの。起きて」
「さっきのは寝起きに効果絶大らしいからとりあえず寝る。明日になったらさっきみたいに起こして」
言うだけ言って慧は本当に寝始めた。
私を起こしに来た幼馴染を私が起こそうとしている。何この状況。
「起きてってば」
「……」
まだ眠っていないはずだが、慧は応答しない。
おそらく慧の起こし方をしないと起きないつもりなのだ。
しかし、これはチャンスかも知れない。
慧がこの恥ずかしさを知ればもうこのようなことはしてこないだろう。
「仕方ないなあ」
私は渋々慧の上に四つん這いになった。
「ほら、起きてよ」
「……ふむ」
慧は目を開けたが、私を見たままでなにかを考えているようだ。
(あれ、恥ずがしがらない?)
慧の動じなさに私のほうが動揺してくる。
「美咲、慧君が来たのにまだ起きないの?」
ここで私のお母さんが登場。
いつまで立っても起きてこない私を心配してくれたのだろうが、今は最悪のタイミングだ。
お母さんにはこう見えるだろう、私が慧を襲う寸前だと。
「ごめんなさい、お邪魔だったわね」
お母さんは何も言わずに退室した。盛大に誤解して。
「お母さん違うの、お母さーん!」
私の悲痛な叫びはお母さんには届かなかった。
ただでさえ恥ずかしいのに、親に見られた。
私の恥ずかしさはピークを超えた。
「どうしたの美咲、泣いてるけど」
誰のせいだ。
なぜ分からない。
「慧のバカー!」
私の恥ずかしさは怒りとなり、慧の頬を叩いた。
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