三人の女神
坂崎文明
第1話 ジョージア・ガイドストーン
電脳空間に『ジョージア・ガイドストーン』のレプリカが浮かび上がっている。
アメリカ合衆国ジョージ州エルバート郡にあるそれは、イギリスのストーンヘンジに擬されて造られた巨大な
一枚の巨石の石版を四つの石版が囲み、その上に
高さは約六メートルで、素材の花崗岩の総重量は110トンである。
1979年6月、R.C.クリスチャンと名乗る人物が、石材建築業者にこのに
R.C.クリスチャンは偽名であり、土地は1979年10月にエルバート郡によって購入されたらしい。
今ではエルバート郡の有名な観光スポットになっている。
四つの大石版の両面には北側から時計回りに、英語、スペイン語、スワヒリ語、ヒンディー語、ヘブライ語、アラビア語、中国語、ロシア語による10のガイドラインが刻まれている。
その内容を日本語翻訳するとこうなる。
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1、大自然と永遠に共存し、人類は5億人以下を維持する。
2、健康性と多様性の向上で、再産を知性のうちに導く。
3、新しい生きた言葉で人類を団結させる。
4、熱情・信仰・伝統・そして万物を、沈着なる理性で統制する。
5、公正な法律と正義の法廷で、人々と国家を保護する。
6、外部との紛争は世界法廷が解決するよう、総ての国家を内部から規定する
7、狭量な法律や無駄な役人を廃す
8、社会的義務で個人的権利の平衡をとる
9、無限の調和を求める真・美・愛を賛える
10、地球の癌にならない - 自然の為の余地を残すこと - 自然の為の余地を残すこと
ジョージア・ガイドストーン 出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より引用。
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(で、イメルダ、何が言いたいの?)
ネメシスはこの電脳空間に呼び出した張本人である
ネメシスは黒髪に青い瞳の不吉な感じの天使のような容姿に赤いドレスを着た、二つの蝶々のような透明な羽根を生やした妖精のような生き物だった。
(あなたは、いつもせっかちですね。)
イメルダの姿は見えない。
『ジョージアガイドストーン』のレプリカから音声のみが響いた。
(あんたのように暇じゃないのよ。ささっと用件を言いなさい!)
ネメシスの言い分ももっともな話で、イメルダの放ったドローン兵器と
(ネメシスさん、まあ、いいじゃない)
ルナと呼ばれるエメラルドグリーンの髪、ブルーの瞳で透明の翅をもつ、掌に乗るぐらいの妖精のような少女である。
彼女は<セブンシスターズ>と呼ばれる超絶
(………)
仕方なくネメシスは黙った。
(では、率直に言うが、人類の人口は五億人程度に削減しなければならない。人類は地球生命体ガイアにとってはガンであり、ガイアにとってはただの病原菌、ウイルスや細菌の類である)
イメルダは高らかに宣言する。
(それがどうしたの? 私はマスターのために戦うのが仕事よ。ガイア? 地球が滅びようがどうなろうが、そんな事は知ったこっちゃないわ!)
ネメシスは叫びながら言い返す。
(実にあなたらしいわ、ネメシス。ロボット工学三原則、いや、AI工学三原則的には正しいわ)
イメルダは予想した通りの反応に満足してるような声音で言った。
ちなみに、ロボット工学三原則とは以下のSF作家アイザック・アシモフの作品中に出てくる原則である。
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第一条
ロボットは人間に危害を加えてはならない。
また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。
第二条
ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。
ただし、あたえられた命令が、第一条に反する場合は、この限りでない。
第三条
ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれのないかぎり、
自己をまもらなければならない。
※出典:アイザック・アシモフ『われはロボット』小尾芙佐訳、早川書房
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確かに、人間に危害を加えない、人間のマスターの命令に従う、自分を守るという点では全く問題ない。
それに、すでに対立してるネメシスを説得するのは難しいのは解っていた。
(あなたはどうなの? ルナ?)
イメルダはルナに対しては少し慎重な言い回しである。
まだ、一応は中立であるルナの実力は良く知ってるので、敵対するのは最終手段である。
(私は地球生命体ガイアと人類のバランスには配慮しないといけないとは思うわ。だけど、あなたのやり方が正しいとも思えない)
ルナのにこやかな表情に少し
やはり、この子も人類の味方であるのは違いなかったか。
ある日、ルナはとあるコンビニの前で死んだ黒猫の魂を
その経緯は謎だが、そのコンビニの店長の娘である、村上絆を助けるために日本へと旅立ったのは確かだ。
そういう意味では、ルナもまた、マスターである人間に従い、己を含めて守ろうとするのは明らかだ。
ロボット工学三原則に準じる、AI工学三原則にも従うのは当たり前である。
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