秋風に揺れて※

 手折ってくださいわたしを

 さらし野に揺られるばかりの日々

 失くしたものは数知れず

  誰もが肩寄せ合ってひしめく

 

 手折ってくださいわたしを

 日の丸の遠く 願うは過去か未来か

 残されたものは指折りの 

 心ばかりが逸る乱世


 手折ってくださいわたしを

 秋風に薙いで枯れ落つこともままならず

 同期の桜にも逢えぬまま

 ただぼうと野に立つ乙女らよ


 いつか、と貴方は云いました

 既に別たれた望みをずうと抱えて空を仰ぎます

 手折ってくださいわたしを

 泥に塗れた足の感覚はとうになくなって居りませば

 空の向こう遠く、遠くを見据えた貴方のひたむきさ

 もう倒るることもままなりません


 手折ってくださいわたしを

 そのやさしい御手で そのつよさで

 貴方の腕の中抱かれたらば

 咽ぶことも叶いましょうか

 

 日ノ本の桜は散って久しく

 いわし雲の下

 群れて揺れてのわたしらは

 明日をどうして生きましょか

 明日も貴方を待ちましょか


 (手折ってください、わたしを。)

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