一話

 美冬は地元から出たことがなく、結婚した相手も同じ街に住む男であった。

 そして男の希望で同じ街から近い山に家を建て、そこに住んでいた。

 不慣れで孤立した山の生活。美冬は男に見染められて結婚した。一方的な男の恋だった。美冬の意思を無視して。

 男はこの山の所有者であり、この街の大金持ち。貧乏ではなかったが、自分たちにもおこぼれをと欲した美冬の親たちの後押しもあり、結婚話はトントンと進んでいった。


 山は毎年冬になると長い期間雪が降る。それまでの期間は蓄えを備える日々、肉体労働、精神的苦痛、好きでない男に毎晩ご奉仕の日々。二人には子供はできなかった。たまに山から降りて親戚たちの宴に呼ばれるのだが、そのたびに子が出来ぬことを野次られる。それが苦痛で苦痛で仕方がなかった。

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