第4話 高校進学…再会、でも…
4月、桜の花があちこちで満開、入学シーズンに薄いピンク色が花を添える光景だ。
真一は、いよいよ高校生活の始まりだ。入学式の朝、父親に南駅まで車で送ってもらった。駅からは中学校時代からの同級生や幼なじみのケンちゃんと同じ電車に乗る。他の高校に通う者もいて、駅は混雑している。
改札に入ろうとした時、真一の後ろから女の子達の声が聞こえた。
女A「あれ、あの人、どこかで見たことある人や」
女B「誰?」
女A「ほらあそこ、改札口の前にいる眼鏡をかけた男の子」
女B「あの人も同じ制服着てるよ。同じクラスかなぁ…。でもなんで知ってるの?」
女A「あの人、ひょっとしたら幼稚園の時一緒だったかも…」
女B「えーっ❗ じゃあ、幼なじみやんか。小学校と中学校は違うよね。小学校は私もいたから…」
女A「うん、幼稚園以来やと思う」
女B「ええなぁ、幼なじみ。高校生活初日から青春やねぇ…」
女A「ちょっとー、からかわないでよ❗」
女B (笑)
真一は中学校時代から目が悪くなり眼鏡をかけていた。
真一(眼鏡かけてるって、まさかオレ…なわけないわなぁ…。他にもいるし…)
と思いながら、その声がする方をあえて見ることなく改札口に入った。
田舎といえども通学電車は6両編成。真一は中学校の同級生と先頭車両に乗る。
50分程して、電車は真一が今日から通う高校駅に着いた。
高校に着くと、教室で一時待機し体育館で入学式が行われた。入学式のあと、教室に戻りホームルームが始まった。担任の岩田先生の自己紹介から始まり、明日以降の予定を聞く。
翌日から同じクラスの坂本と初めて言葉を交わす。
坂本「坂本です。よろしくお願いします」
真一「堀川です。こちらこそよろしくお願いします」
この後、立て続けにクラスの仲間と自己紹介しながら友達になる。見た目はヤンキーっぽいけど、飯の志向は真一と全く同じの浅田、鉄道マニアの高山、自己中心的な寺岡、メカニックマニアで色んな趣味を持っている藤岡、白々しい発言が多いが真面目な所もある佐野山。個性強い人間ばかりだ。
ある日、現代では考えられないと思うが、真一の時代は全校生徒の緊急連絡網の冊子が配布され、自宅で保管するよう指示かあった。当時は携帯電話が普及する前の時代、そうポケットベルの時代だ。交際しているカップルはポケットベル(ポケベル)を持っていて、文字を公衆電話とかで入力していた。
自宅に帰った真一は緊急連絡網の冊子を母親に渡す。母親は何気なく冊子をペラペラとめくって何となく見ていた。すると母親が真一に言った。
母親「あんた、優香ちゃんもいるやんか❗」
真一「優香ちゃん?」
母親「覚えてへんか? 優香ちゃんやで」
真一「優香ちゃんって誰やったかいなぁ…」
母親「覚えてへんの? ほら幼稚園の時一緒やったやん。一番仲が良かった優香ちゃんやんか」
真一「…そんな子いたっけ? かなり昔の話やから覚えてへんわ」
母親「うーん…ほら、かわいい女の子やったやんか。大人しい女の子で、あんたとおったら明るくなったって、優香ちゃんのお母さんが言ってたでしょ」
真一「そうやったかいなぁ…忘れたわ」
この時、真一は頭の中は真っ白、幼少時代の事は完全に記憶が飛んでいた。
翌日、真一はいつものように南駅から電車に乗る。中学時代から同じ高校に通う増井と一緒に高校に通っていた。この2人が唯一同じ中学校出身者なのだ。あまり仲が良いというわけではなかったが、まぁ軽く挨拶する程度の付き合いだった。この増井の知り合いで、別のクラスにいる白木と真一は初めて言葉を交わす。白木と真一はすぐに意気投合した。真一が増井以外で他のクラスの友達が出来たのは白木が初めてだった。白木も真一を介して浅田達とも仲良くなった。
ある日の下校時、真一は一緒に帰ろうと高校駅の待合室で増井を待っていた。しかし、増井は現れない。しばらくして駅前の横断歩道で信号待ちしている人影を見つけ、真一は待合室を出て駅の入口まで出てくると、男ではなく女の子だった。すると、横断歩道を渡ってきた女の子は真一をじっと見ている。そんな視線を感じた真一も女の子をじっと見た。すると真一は衝撃が走った。
真一(あれ、どこかで見たことある顔の女の子やなぁ…。えーっと、あれ、どこで見たっけ? 中学校ではない、小学校の高学年でもない。低学年の時…? いや見たこと無いなぁ…。でもどこで見たっけ?)
と、心の中で考え込んでしまった。2人の沈黙は続いている。
真一は小学校の4年生の時に今の南町に引っ越した。以前住んでいた北町の駅前再開発で借家だった家が立ち退きになったため、引っ越したのだった。真一は少なくとも今の南町の中学校、小学校時代に知り合ったのではなく、北町時代、どこかで会っていると推測したのだ。
女の子はツインテールでお人形さんのようなかわいい顔をしている。かわいい顔を見て真一は見たことある顔だとは認識していた。しかしどこで見たか覚えていなかった。
長い沈黙の後、女の子はホームへ行った。真一はそのまま電車に乗ることなく、増井を待つことも忘れ、ずっと女の子の事を考えていた。女の子が乗った後の電車に乗り帰宅してもずっと女の子とどこで会ったのか思い返している。
翌日、高校駅に電車が到着し真一は白木と一緒に登校していた。朝になっても真一は昨日会った女の子の事を考えていた。未だにわからなかった。白木は考え込んでいる真一を不思議な顔して見ている。そして尋ねた。
白木「堀川、お前今日様子がおかしいけど何かあったんか?」
真一「あぁ、ちょっと考え事…」
白木「何考えてんねん?」
真一「昔の記憶を辿ってるんや」
白木「昔の記憶? 何やねん急に…」
真一「実はなぁ、昨日の帰りの電車に乗る時、増井を待ってたんやけど、横断歩道渡ってきた人影見て増井やと思って待合室から出たら女の子やってなぁ…。そしたらその女の子、オレをずっと見てんねん。オレも視線感じて女の子見たら、どっかで見たことある女の子やったんや。けど名前出てこない。しばらく沈黙が続いて『どうしよう…』ってなったんや。必死で過去の記憶を思い返すんやけど、南町時代ではなく北町にいたときにどこかで会っていると思うんや。けど思い出せんのや」
白木「へー、そうなんや。で、その女の子の特徴は? 北町やったらオレ知ってるかな?」
真一「あんた知ってるんかなぁ…」
白木「一応教えて。どんな女の子やねん?」
真一「かわいいお人形さんみたいな顔で、ツインテールの髪型やった」
白木「ここの高校やんなぁ?」
真一「そうや」
白木「同じ高校でツインテール……、あっ、それ加島のことちゃうか?」
真一「加島?」
白木「加島やんか。加島優香」
真一「?」
白木「お前、名前聞いてピンと来ないか?」
真一「うーん、わからんなぁ」
白木「なんでやねん❗ お前加島をどこで見たんや?」
真一「それがわからんのや。中学校ではない、小学校の高学年でもない。だとしたら北町時代の小学校低学年以前の話になる。もしくは別のところで会ってたか…」
白木「加島はオレも小学校一緒やったから。けど、なんでお前が加島知ってんねん」
真一「それがわからんのや。名前言われても心当たりがない」
白木「堀川、ちょっと一回考えるのをやめて頭冷やせ。冷静になったら、また考えたらいいやん」
高校にも到着したので、真一は白木の助言通りに少し考えることをやめた。
冷静になったところで授業中も少しだけ考えていた。ふと、先日母親が緊急連絡網を見たときの事を思い出した。
(回想)
母親「あんた、優香ちゃんもいるやんか❗」
真一(あっ、それや❗)
真一はやっと思い出した。そう、幼稚園の時、となりの席だった優香だった。
放課後、真一は白木に話した。
真一「白木、わかったで」
白木「わかったか」
真一「あぁ。優香ちゃんやったわ」
白木「なんでお前、加島のこと知ってたんや?」
真一「幼稚園が一緒やって、となりの席の女の子やった」
白木「えー❗ オレより昔に知り合ってたんかいな❗ それって幼なじみやんか。どうやって思い出した?」
真一「授業中ふと考えてて、この間母親に緊急連絡網を渡した時、母親が『優香ちゃんもいるやんか』って言うてたのを思い出したんや」
白木「お前、よく思い出したなぁ」
真一「母親に言われた時は最初全然思い出せんかったんやけど、高校駅前で優香ちゃんの顔見て『どこかで見たことある』ってなった時に2人も知り合いがいてると思ってたんやけど、同一人物やった」
白木「お前なぁ…(笑) けど凄いなぁ、幼稚園以来の再会やろ?」
真一「そういうことになるんやなぁ…」
白木は真一のことを物凄く興味深くなっていた。
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