第3話 幼稚園→小学校→中学校→高校進学

幼稚園生活もあっという間に終わりが近づいてきた。

卒園式、卒園証書を園長先生が園児一人一人に授与する。矢沢先生が園児一人一人の名前を呼ぶ。園児は大きな声で『ハイッ』と答える。矢沢先生の園児の名前を呼ぶ時は号泣していた。


卒園式が終わり、真一の母親と優香の母親が門前で談笑する。その横で真一と優香も話す。真一と優香の母親は2人が仲良くしていたことをとても良く思っていた。


真一母「でも、区域が違うから小学校は別々になるんやね…。私てっきり小学校も同じやと思ってたの。そしたらウチの家がギリギリ境界線になっていて新東しんひがし小区域で、ウチの家を越えたところからみなみ小区域なんやね…」

優香母「そうなんやねぇ…。優香、真一くんと離れることになるので寂しい思いになって悲しむかなぁ…。真一くんはどう?」

真一母「真一はあまり深く考えないので、少しは考えたら?って思う時があるのよ。だから大丈夫じゃないかな…。優香ちゃん次第やろねぇ」


真一・優香親子はその後近くのファミレスで一緒に食事した。優香は終始寂しそうにしていた。それを見ていた真一は優香の頭を撫でる。


優香母「真一くん、今まで優香に優しくしてくれてありがとう。優香、お姉ちゃんと弟がいるんだけど、家でも暗い感じだったの。優香のお姉ちゃんがいくら声をかけても優香はしょんぼりしてたから、優香のお姉ちゃんも困ってたの。でも真一くんがいたから優香はこんなに明るくなったのよ。おかげで優香のお姉ちゃんも喜んでたわ。『真一くんありがとう』って」


真一はコクりとうなずいただけで、お子さまランチのハンバーグを食べながら優香の頭を撫で続けた。優香は寂しそうにしながらも真一の肩に頭を寄せる。


名残惜しみながらも、真一と優香は手を振ってファミレスを後にする。


小学校に入学すると真一は優香と離ればなれになったせいか、いつもの調子が出ない。イスを取りに行く必要はなくなり、ここには優香もいない。小学校生活に慣れてくると、人並みの小学生になった。図工の授業はめっきりダメで不器用さをここで披露。もちろん優香もいないので八方塞がり状態だった。結局先生に手助けしてもらい、少し叱られながらも作品は何とか完成させたのだった。


一方の優香も、はじめは真一がいない小学校生活は苦痛だったが、友達ができてからは真一の事も忘れることができ、勉強もできるクラスのマドンナ的存在だった。


小学校卒業後、中学校に入学。真一はイジメを受けていたが登校拒否することなく、何とか3年間を全うした。優香も中学校入学後、 一部の女子の中でイジメを受けていた程度だったが、典型的な女子中学生だった。


真一は公立の工業高校を志望していた。普通科では面白みがないという理由だったが、イジメを受けていた事もあり、中学の同級生と同じ学校に行きたくなかった理由もあったのだ。


3月初、真一は電車で45分かかる工業高校へ入試を受けた。その際、幼稚園で優香に次いで仲良しだったケンちゃんも工業高校の入試を受けていた。ケンちゃんは男の子で小学校で転校してきて再会したのだった。


中学校卒業式の翌日、高校入試の合格発表だった。真一とケンちゃんは電車で45分かけて工業高校へ合格発表を見に行った。

すると、真一の名前はあったが、ケンちゃんの名前は無かった。真一は複雑な心境だった。ケンちゃんは工業高校駅から1つ先の滑り止めで合格していた私立の商業高校へ進学するからだ。帰りの電車の中では、真一からはケンちゃんに何も話さなかった。するとケンちゃんは真一に「でも同じ電車に乗るから、気ぃ使わなくていいよ」と伝えた。真一は首を縦に振ることしか出来なかった。


真一とケンちゃんは4月から高校生になる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る